1948話 一人の連携、二人の連携
「ではあらためて、拙者は【風来の勇者】……【シゼンゼプラ】!
所属は望遠鏡次元なり!」
「僕は【封竜の勇者】……【ランゼルート】。
聖剣次元のMVPプレイヤーさ」
攻防を繰り広げておきながら、メチャクチャ今さらお互いに名乗りを上げたようだ。
お互いの力を試しあったからこそ【勇者】同士何か通じあったのだろう。
そんなシンパシーを感じてもらうのは結構だが、きちんと戦ってくれよな!
「それは当然さ。
僕の前に立ち塞がるのなら誰であっても倒すだけだよ。
スキル発動!【窮鼠熱火】!」
【ランゼルート】がここで放ってきたのはネズミ花火を放つスキル……【窮鼠熱火】だった。
回転しながら火花を飛び散らす鬱陶しいスキルなんだが、【ランゼルート】が放つと鬱陶しいだけじゃなくて全域が危険地帯と化すのだ!
【ЧЧЧЧЧ!!!!】
火属性が弱点の俺と【チェーンバ】はメチャクチャ警戒している。
何とかしてくれ【牛乳パフェ】か【シゼンゼプラ】!
「ケケッ、完全に他力本願でビックリするんだぞ!
【包丁戦士】なら自分で逃げられそうな気がするんだぞ……」
俺だけだったらな?
だが、それをしてしまうだけだとせっかくの戦力の【チェーンバ】がこのままダメージを受け続けてしまう。
群体レイドボスだから【窮鼠熱火】みたいな広範囲に攻撃し続けるスキルだと雑に被弾してしまうからな……
俺はまだ被弾してないが、【チェーンバ】は今この瞬間にも群体の数を減らしていっているし。
「拙者であのスキルを仕止めるには誰かに一度動きを止めてもらわねば難しい。
代わりに消化は任せてもらって問題ない」
「ウゲゲッ、それは仕方ないんだぞ……
ネズミ花火そのものを消すことは出来ないが、止めるだけならおれに案があるんだぞ!
スキル発動!【床割海眼】!」
【牛乳パフェ】は魔眼スキルの【床割海眼】を発動させて遠隔で地面を割り、落とし穴を作り出していった。
タイミングよく現れたその落とし穴に【窮鼠熱火】のネズミ花火はそのまま落下していきしばらく上がってこれなさそうな様子だ。
だが、少しずつ上がってきているので放置するとさっきまでの状況に逆戻りしてしまいそうだな……
しつこいスキルだなぁ!
「ここは拙者にお任せあれ!
スキル発動!【潮風小波】!」
【シゼンゼプラ】が放ったのは完全に初見のスキル……【潮風小波】だった。
それにより風が放たれたが、これまでの風と違うのは……しょっぱい感じだな!
スキルの名前にもあるように潮風を吹かせているようだ。
つまり、深海スキルだな!
水属性と風属性の力を兼ね備えた風がネズミ花火を鎮火させていき、落とし穴から這い登ろうとしていた勢いをみるみる弱めてそのまま消し去っていったようだ。
……望遠鏡次元の頭脳プレイを見せられたな。
【シゼンゼプラ】が無駄なく力を発揮できるように【牛乳パフェ】がお膳立てしていたので、俺や【チェーンバ】への被害は最小限に抑えられたと言えるだろうな。
「勇者とMVPプレイヤーの連携か、見事なものだね。
僕はその両方を兼ねているから聖剣次元では出来ない芸当だよ」
そりゃ【ランゼルート】は連携せずとも一人でやってのけるんだからそうなるだろうよ。
だが、一人でやれるからといっても二人でやる時のメリットを全て補完できるわけじゃない。
二人の視点、二人分の手数が別々にあるからこそ出来る芸当もあるのだ!
【ランゼルート】はそれに着目して見事なものと称したのだろう。
【ランゼルート】は善いものについてはきちんと賞賛するやつだからな。
たとえ自分の方が優れていたとしても褒めるだろう。
……俺のように悪に傾倒していたり、深淵種族に寄りまくっていなければな!
「それにしても効果覿面だと思った【窮鼠熱火】がここまであっさり止められるなんて計算違いだったよ。
最低限のリソースで最大限のダメージを与える手段だと思っていたからね……」
「ウゲゲッ、この期に及んでリソースをけちりながら戦っているんだぞ……
数はこっち方が上回っていてレイドボスや勇者までいるのに敗北感が半端ないんだぞ!?」
辛うじて戦線が成立するようにはなってきていますね……
ただ、どこまで続けられるかが心配ですが……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




