1940話 同じ答え
「ケケッ、ここの城は大きさは大きいが中は地味なんだぞ……
あとほとんど何もないんだぞ……」
【牛乳パフェ】が城の内装に苦言を呈しているようだが、そこは俺と意見が分かれているみたいだな。
とはいえ的を得ている発言もあった。
それは物がほとんど置かれていないという点だ。
いくら質実剛健な内装だとはいえ、ここまで生活感のない城はもはや廃墟だぞ……
いや、廃墟というには綺麗なんだが。
「ウゲゲッ、ここまで何もないとせっかく苦労して来た意味がないんだぞ……
てっきり重要なものが何かしらあると思ってたんだぞ……」
【牛乳パフェ】は冷や汗を滴しながら、焦りを隠せない様子だった。
これ見よがしに目立つランドマークだったこの城に何もないなんて誰が思っただろうか……
俺だって期待していたんだからな!
「拙者としても無念なり……
貴重な戦闘のためのリソースを割いて入ってきたのが無駄で終わってしまったのだから」
ここにいる三人それぞれ落胆しているが、まだ入口周辺である。
僅かな希望を見据えて城内の探索を開始するのであった……
時間がないということで【シゼンゼプラ】は単独行動させて、俺と【牛乳パフェ】は二人一組で探索をしているわけだが……
「ケケッ、【ランゼルート】の経歴が分かる本とか像とか絵画とかあると思ってたのにそれすら無いのは泣けるんだぞ……」
前の次元戦争で【師匠】の屋敷に入ったときにはこれでもかってくらい【師匠】にまつわる書類が手に入ったわけだが今回は【ランゼルート】に関するものが何も見つかっていない。
城となれば歴史書のひとつやふたつあってもおかしくないはずなんだがなぁ……
「ケケッ、おれもそれを探してたんだぞ……
もしかすると【ランゼルート】はこの城にそれほど縁がない……?」
その可能性もあるが、その場合は城というより城下町に縁があるだろう。
だからこそ考えられるのは俺たちが来ることを見越してあらかじめ【ランゼルート】に関わる痕跡を消したという線だ。
「ウゲゲッ、こんなに大きな城の中を隈無くだぞ!?
そんなの無理なんだぞ!
【ランゼルート】がスキルで木っ端微塵にしたのなら信じられるが、城が無事だからそれは無さそうなんだぞ」
……普通に考えたならな。
だが、今回はあいつが聖剣次元の参加者にいた。
「ケケッ、【アイシア】のことか?」
その通りだ。
あいつは封印出来るからな。
【ガルザヴォーク】すら封印出来ていたんだから、無機物たちをまとめて封印して隠すことなんて造作もないだろう。
「ククッ、それなら城ごと封印すれば良かったのにわざわざ中身だけ封印したのはなんでなんだぞ?」
【牛乳パフェ】は再び俺を試すように問いかけてきた。
【牛乳パフェ】のその表情……おそらく自分の中で既に答えが出ているパターンだろう。
俺が出した候補なのに何で向こう側の方が理解が深いんだよ……
とか考えていたが問いかけられているので答えてやろう。
多分だが内装にはギミックがなくて、城そのものには今回の次元戦争で重要になるギミックが仕込まれているからだろう。
運営による手がかかっているものは無機物でも封印しきれなかったと考えると自然だろうな。
「ウゲゲッ、おれと同じ答えにたどり着いてたんだぞ!?
他の答えが出てくるのを期待してたのにあてが外れたんだぞ……」
お前のと同じだったら同じだったで困るのかよ……
いや、確かに別の可能性を模索しているときに同じものが出てきたらちょっとガックリする気持ちは分かるけどな。
「ケケッ、でもそれならそれでこの路線で思考を絞れるんだぞ!
合っているかどうかは別としてお前との会話はこれを前提に話せるから気は楽になったんだぞ」
そういう見方も出来るよな。
ってことはこの城に隠されたギミックでも探す方向にシフトするか。
【ランゼルート】の弱点とか見つかればベストだったんだが、まぁ、状況を好転させられるギミックでその分アドバンテージを取れるならそれに越したことはないからな!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




