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1939/2269

1939話 半透明と観察眼

 「では今度は拙者だけでなくお主たちも含めて透明化させておこう。

 ability発動!【暴風将軍】!

 スキル発動!【波状風流】!」



 【シゼンゼプラ】がそう宣言すると、俺の身体が暴風に包まれていった。

 そして自分の身体を見渡してみると半透明になっていて、身体の輪郭だけが見えるようになっていた。

 ……これって透明化出来てるのか?

 中途半端な状態に見えるが……



 俺が【シゼンゼプラ】にそう問いかけると一瞬キョトンとした顔をしていたが、次の瞬間には納得がいったようで俺の問いかけに答えてくれた。



 「お主は透明化を体験したことがないのだな?

 それならば得心がいくというもの……

 拙者の姿がお主から見えないように、お主の姿も拙者から見えないから安心するといい」



 あー、この状態はシステムアシストのようなものか。

 自分の身体がどうなっているのか自分だけは把握しやすいように中途半端な状態で見えるようになっているわけだ。

 自分の手とか見えなかったら手元が狂いやすくなるかもしれないし妥当な配慮だが……ボトムダウンオンラインでそんな配慮があっていいのか!?

 別に理不尽仕様だったとしてもいつも通りって言って諦めてたと思うぞ……



 「ケケッ、お前の言うように前までは自分の姿も見えなかったんだぞ!

 でも、アップデートでそこだけ改善されたんだぞ!

 きっと謎の圧力がかかったんだぞ……」



 これは気になるな。

 覚えていたら直接【山伏権現】に聞いてみるか……

 とはいえ今出来ることでもないので今出来ることに専念しよう。

 透明化出来たから城まで一直線で進んでも問題ないよな?



 「……おそらくな。

 何か罠が仕掛けられていれば話は変わってくる」



 【シゼンゼプラ】は罠を警戒しているようだった。

 【ランゼルート】の本拠地、或いは想い出の地ということもあり向こうがあらかじめ裏工作を施していてもおかしくはないと考えたのだろう。

 だが、安心してほしい。

 おそらくだがここには罠は仕掛けられていない。

 


 「ククッ、なんでそんなことが分かるんだぞ……?

 罠の気配も感じ取れるのか?」



 いや、俺の気配察知はあくまでも生き物くらいしか感じ取れないぞ?

 そうじゃなくて観察眼で判断したんだ。

 罠がありそうなところって何となく分かるだろ?



 「ククッ、それは程度によるんだぞ……?

 他のゲームでもよく見るような露骨な罠とか定番の罠は分かっても何があるか分からない状態である無しを判断するのって無理なんだぞ!」



 まぁ、お前には無理かもしれないが俺には出来るって話だ。

 特に根拠を具体的に話せと言われると信用させられるように話せる自信はないから、信用出来ないなら自分で警戒しながら進んでくれ。

 


 「ケケッ、お前の観察眼がどれくらいのものなのか正直分からないが信用はしてやるんだぞ!

 お前自身の生死が関わってる状況で致命的な嘘をつくとは思えないんだぞ!」



 おや、思ったよりもすんなり受け入れてくれたな?

 こういう状況はトレジャーハンターとして活動している時もあったが、大体俺の発言は怪しまれるんだがな……

 ゲーム内だから命の価値が下がってるのと、【牛乳パフェ】の頭の回転が早いから損得勘定を素早く自己完結させられた……ってところか?



 「では安全のためにも拙者が先頭で進んでいくとしよう。

 もし拙者の身に何かあれば即座に撤退するといい。

 拙者で問題があるようならば、お主らではどうしようもないであろう?」



 そりゃそうだ。

 【勇者】の身体スペックで解決できないような咄嗟のトラブルなんて同等の【上位権限】レイドボスじゃないと無理だろうからな。












 ……と警戒しながら城に近づいていったのだが、普通に城内に潜入することが出来た。

 罠はないと俺は分かっていたが、【ランゼルート】に見つかる可能性はあったからどちらにしてもビクビクしていたわけだ。

 それも杞憂に終わり城内に入って無い胸を撫で下ろしていると、城内は質実剛健な装飾が至るところに施されているのが目に入った。


 せっかくの城なんだからもうちょっと茶目っ気や個性を出してもいいだろうに、真面目すぎる内装だな……

 嫌いではない……というより建築物の在り方としては好きな部類だけどな!






 遺跡や歴史的建築物の話になると劣化天子は少し早口になりますね……

 それほど好きなのでしょうか?


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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