1938話 透メーカー
しばらく歩いてきてようやく城が近づいてきた。
少し前に話したようにここから先は城以外の建物がどんどん減っていくので【ランゼルート】から見つけられてしまう可能性が跳ね上がる。
だが、【牛乳パフェ】には秘策があるようなのでそれを見せてもらおうか。
「ケケッ、ついに見せる時が来たんだぞ!
……とは言ってもおれじゃなくて【シゼンゼプラ】の力なんだぞ」
おいおい、あれだけ勿体ぶってお前自身の力じゃないのかよ!
てっきりお前の新たな力の御披露目シーンが見れると思ってたのに残念だよ。
……まぁ、何が出来るのか全く不明だった【シゼンゼプラ】の力をこのタイミングで少しでも見ることが出来るならそれはそれでアリだけど。
「ケケッ、自然な流れで貶されてて泣けるんだぞ……
でもミスリードに引っ掛かったのはお前自身のせいなんだぞ!
別に俺自身がやるなんて言ってないからだぞ!」
あれ、そうだったっけ……?
まぁ細かいことはいいか。
とにかくその手段というものを見せてくれよ。
「よかろう!
拙者の技術、ごらんあれ!
スキル発動!【波状風流】!」
【シゼンゼプラ】が使ったのは包丁次元としてもごく一般的に使われている配布スキルの【波状風流】だ。
本来ならば風のスプリンクラーを設置してそこから強風を生み出し、空を飛んだり、風の刃を飛ばしたりするものだ。
【シゼンゼプラ】が【波状風流】を使ったときにはてっきり空を飛んでいくのだと思ったのだが、次の瞬間にはそんな俺の予想が覆されてしまった!
なんと俺の目の前から【シゼンゼプラ】の姿が見えなくなってしまったのだ!
一瞬で消えただと!?
高速移動スキルなのか?
……いや、だが確かに俺の目の前に【シゼンゼプラ】の気配は残ったままだ。
自分で驚いておいてなんだが、高速移動したという線はないだろう。
「ウゲゲッ、気持ち悪いくらい精度の高い気配察知能力なんだぞ……
それでスキルやabilityじゃなくて、【現界超技術】でもないのが驚きなんだぞ!」
「ふむ、拙者の気配が読まれているのか。
せっかく姿を隠して見たのだが、それでは驚きが半減だ」
やはりその場に止まったままだったのか!
声が聞こえるのと同時に【シゼンゼプラ】の姿も再び見えるようになった。
いったいどんなトリックだったんだ?
【波状風流】に姿を消す効果なんて……いや、待てよ?
そういえばジョブ【レンジャー】が【波状風流】を使ったときに透明化出来る効果を発揮していたな!?
あれはジョブ限定効果だったのだが、【シゼンゼプラ】はワールドアナウンスから判断しても【レンジャー】になってないし……
「ケケッ、包丁次元でも【レンジャー】のジョブは解放されてたのか。
そこまでたどり着かれてるならここでネタバラシしても痛手じゃなさそうなんだぞ!」
「左様だな。
拙者の就いているジョブ【サムライ】は【レンジャー】と【ソードマン】の複合上位派生ジョブだ。
どちらの性質も引き継いでいるからこそ透明化の効果も使える」
なるほどな。
……ん?
【ソードマン】は知らないジョブだな?
「ケケッ、【ソードマン】は解放されてないのか。
おれたちのところだと【ソードマン】と【レンジャー】は同時に解放されたジョブだから違和感があるんだぞ!」
それはおそらくだが初期配置されていた聖獣の種類の違いだろうな……
蛇腹剣次元とも似たようなことがあったし。
それはそれとして、【シゼンゼプラ】が透明化出来ても俺や【牛乳パフェ】が透明化出来なかったら意味がない。
一人が見つかってしまえば芋づる式で結局全員見つかってしまうからな!
「そこは抜かりなく。
拙者のability【暴風将軍】は風属性や【流動】の力を最大限に発揮するためのリソースを補填して、最大限のポテンシャルを発揮できるようになる。
だからこそ、【波状風流】の場合は拙者だけでなく周囲の味方と同時に透明化出来るという優れものだ」
うわっ、それはめちゃくちゃ便利だな……
風来の勇者というだけあって風の扱いには一家言あるらしい。
それじゃさっそく頼らせてもらうか!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




