1937話 神風の導き
というわけで【牛乳パフェ】の作戦に従ってこの【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】で一番目立つ場所にある城へと向かうことになった。
あそこに向かうにつれて建物が少なくなっていくので【ランゼルート】に見つかりやすくなるという懸念点はあるが……【牛乳パフェ】が提案したのだ、きっと対策はあるだろう。
「ウゲゲッ、そんなに無責任な期待を寄せられても困るんだぞ……
おれの作戦に便乗したのはとことん手札を使わせるためだったとしか思えないんだぞ……」
まぁ、その予想はわりと合ってたりするな。
向こうが出来ると言ったのだからそれ相応のものを見せてもらわないと俺も一緒にリスクを冒すだけになってしまうからだ。
ハハハ、Win-Winの関係でいようじゃないか!
「ケケッ、まるで悪魔の高笑いみたいなんだぞ……
でも【包丁戦士】の言うように【ランゼルート】に見つからず城に潜入するための方法はあるんだぞ!」
やっぱりか。
「ククッ、でも実際に使う場面になるまでは秘密なんだぞ!」
えっ、なんでだよ。
どうせ後から分かるなら今教えてくれたって変わらないじゃないか!
俺は口を尖らせながら【牛乳パフェ】へと異議申し立てすると、してやったりといわんがばかりのどや顔で……
「ケケッ、お前への意趣返しなんだぞ!
ハメられてばかりだからちょっとした嫌がらせなんだぞ!
それ以外に特に意図はないんだぞ!」
出たよ陰湿な嫌がらせ……
流石深淵種族の力を扱うだけあるひねくれたやつだ。
「ケケッ、それは自虐なんだぞ!?
【包丁戦士】の方がおれよりも深淵種族の力を使っているはずなんだぞ……」
「見るに堪えない茶番だな。
好き嫌いはさほどない拙者でもどうかと思う」
完全に悪のりだけで会話してたからな。
【牛乳パフェ】とはお互いに思考の系統が似ていることもあって、こういった皮肉を交えた会話でも越えてはいけないラインを越えないようにジャブを入れあうのだ。
だからこそ、この思考系統が違うやつ……つまりこの場だと【シゼンゼプラ】から見ると見るに堪えない茶番に映るんだろうな。
……まぁ、ほどほどにしておこう。
「ケケッ、それはそれとしてお前が従属させた深淵種族のレイドボス【濛々たる合巣蜂】は何をしてくれるんだ?
【アイシア】との戦いでも一切何もしてくれなかったんだぞ……」
【牛乳パフェ】がふと思い出したように俺に聞いてきた。
だがおあいにく様だな。
俺にも【濛々たる合巣蜂】が何をしてくれるのかよく分からん!
せめてここに【つくだ兄ぃ】がいてくれたなら蜂の生態や普通の蜂と【濛々たる合巣蜂】との身体の違いから何をしてくれるのか予想をしてくれそうなものだが……
「あやつは死んだのか。
拙者の旅の途中で何度か興味深い話を聞かせてもらったことがあるから覚えていたのだが……此度はもう会えないのは残念だ」
そうか、【シゼンゼプラ】にはまだ【つくだ兄ぃ】が死に戻りしたことを伝えてなかったんだったな。
お前に会う前に聖剣次元の森人の【上位権限】レイドボスの【アイシア】と戦っていたんだ。
その結果は……蛇腹剣次元、包丁次元、望遠鏡次元、聖剣次元全ての森人が共倒れとなったわけだな。
意図したわけじゃないし、戦いの中で偶然そうなったとはいえ奇妙な偏りだよな笑
「それは風の導きだな。
そういう時は一介のプレイヤーでは逆らえない神風が大地に吹き荒れるのだ」
【黒杖魔導師】みたいな言い回しをしやがって……
まぁ、世界がそうなるように乱数を動かしている……みたいなことを言っているんだろう。
世界の意思とか言われるやつだな。
俺はそういうのを信じているわけではないんだが、あり得るかもしれないという可能性を完全に否定するわけでもない。
中立の考え方をしているぞ!
「風の導きがそのようにあるのならば、拙者たちの次の戦いはより過酷なものになるであろう。
それこそ荒れ狂う台風に自ら足を踏み入れるようなものだ。
だからこそ、拙者も同行する価値があると思った」
あえて突っ込んでいく方針なのか……(困惑)
風来坊とは言うが、風を無視してる気もするよな……
そこもまた風流というものだ。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】