1934話 風来の勇者
【牛乳パフェ】のファインプレーによって【ランゼルート】と出会う可能性が高い場所が分かったので真逆の方向へと向かっているわけだが……
「ケケッ、真逆に向かって【勇者】たちと合流出来るかは分からないんだぞ……」
そこなんだよな。
正直なところ、【キズマイナ】か望遠鏡次元の【勇者】と合流出来るなら【ランゼルート】のいる方向へと向かってもいいのだ。
それをしない理由はどこで味方に合流出来るか分からないから、出会うまでの時間稼ぎをしたいからなのだ。
「ケケッ、うちの【勇者】は自由気ままに動くからどこででも会う可能性があるし、逆に会いそうなところでも会えないっていう可能性もあるんだぞ!」
それは普通に扱いにくそうな【勇者】だよな。
うちの【勇者】は分かりやすいんだが、この場所で好みそうなところはあんまり見当がつかないので結局そっちと似たようなことになってしまっている。
「拙者のことを呼んだか!」
【Raid Battle!】
【風来の勇者】
【シゼンゼプラ】
【メイン】ー【底辺種族】【上位権限】【勇者】【プレイヤー(β)】
【サブ】ー【底辺種族】【サムライ】【暴風将軍】
【底辺種族を導き】
【次元を勝利に導く】
【荒風に身を任せ】
【己と世界を吹き廻す】
【流浪の宿業を刻まれた勇ましき者は】
【逆風があろうとも】
【己を暴風として立ち向かう】
【流れ征くモノの末路を理解しながらも】
【その歩みを止めないのだ!】
【レイドバトルを開始します】
噂をすればなんとやら。
【勇者】たちの話をしながらしばらく探索していると、頭には三度笠を被り、袈裟のような和服を着て、マントを羽織ったやつが俺たちの前に飛び降りてきた!
急に建物の屋上から飛び降りてきたから驚いたぞ……
「ケケッ、相変わらず神出鬼没なやつなんだぞ!」
「拙者は一つの場所に囚われない性分なのだ。
風の吹くまま、気の向くまま……そうして生きてきた」
【牛乳パフェ】が事前に言っていたようにかなり自由なやつみたいだな。
お前が望遠鏡次元の【勇者】なのか?
「その通り!
拙者は底辺種族の【上位権限】レイドボスであり、この世界に生きる【βプレイヤー】であり、【勇者】の……【シゼンゼプラ】という。
お主は見たところ……包丁次元のMVPプレイヤーであるな?」
あぁそうだ!
俺は包丁次元のMVPプレイヤーの【包丁戦士】だ。
偽名……というか2つ名だけどな!
俺たち包丁次元のプレイヤーは基本的に正式なプレイヤーネームを名乗れない状態になっているからこれで勘弁してくれよ。
「委細承知した!
だいたいのことはそこの【牛乳パフェ】から聞いているから問題はない!」
それならよかった。
話が早くて助かるぞ。
それにしても【シゼンゼプラ】か。
これで【勇者】の名前が【ランゼルート】、【キズマイナ】、【シゼンゼプラ】と三人分揃ったわけだが……揃ったところで何か起きるとかそんなことはなかった。
ただ、覚えておいて損はないから一応覚えておくとしようか。
「というわけで挨拶も終えたようなので、拙者はまた旅に出るとしよう」
俺が自己紹介を終えると【シゼンゼプラ】は踵を返してそのまま立ち去ろうとしていた。
おいおいおいおいおい!!!
待て待て待て待て待て!!!
俺は平静を忘れて慌てて止めにかかった。
折角頼みの綱である【勇者】に出会ったというのにここで手放してしまっては意味がない!
何としても引き留めないとなっ!
「ウゲゲッ、おれからも頼むんだぞ!
ここから聖剣次元の【勇者】の【ランゼルート】と戦うつもりなんだぞ!
お前も他の次元の【勇者】と戦ってみたいと言っていたしついてきて欲しいんだぞ!」
俺と同時に【牛乳パフェ】も止めにかかっていた。
二人とも必死すぎるように見えるかもしれないが、実際死ぬほど必死なので仕方がない。
「ふむ、聖剣次元の【勇者】と戦う舞台が整いつつあるのだな?
それならばしばし足を休めるというのも風の思し召しというものか……」
ほっ……
どうやら考え直してくれているらしい。
【牛乳パフェ】が引き留めるために必要なワードをあらかじめ考えていたようで、そこに食いついてきているのが救いだな。
俺だけだったら止められなかっただろう。
というか、本当に自由すぎる【勇者】だな!?
次元戦争というコンセプトをガン無視して完全にこの【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】を歩き回ることばかり頭にあったのだろう。
「ケケッ、【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】だけじゃないんだぞ……
普段の望遠鏡次元の中でも特に何かをするわけじゃなくてブラブラと旅をしているんだぞ……」
それが風来坊というものよ。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




