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1932話 鉄の菖蒲

 【アイシア】の片腕を切り落とし、チュートリアル武器扱いであろう鍵杖を一時的に【アイシア】の手元から隔離したので一気に【アイシア】側のリソースや戦闘力を削げたな!



 「……確かにそうでしょう。

 ですがそれはそちら側も同じはず。

 いえ、むしろ【上位権限】レイドボスという味方を丸々一人新たに失ったと考えればそちらの方が戦力の低下を招いていますよね?」

 「ウゲゲッ、ああ言えばこう言う応酬なんだぞ……

 でも、確かに一番直接戦闘に貢献していた【マックス】がいなくなったのは辛いんだぞ……

 また最前線要員を【包丁戦士】に任せることになるから不安定になるんだぞ……」



 そりゃ、【上位権限】レイドボスである【マックス】に比べたら頼りないかもしれないが、これでも俺はMVPプレイヤーだ!

 それなりに役割は務めてやるさ。


 それに、【アイシア】もかなり疲弊しているようだ。

 肩で息をしている様子だし、【つくだ兄ぃ】や俺をしとめようとして使ってきていた【緑翠刃翡】というスキルは想像以上に力を消耗することになるものだったのだろう。

 今の【アイシア】相手ならわりといい感じに戦える気がするぞ!



 「ガハハ!!!

 その気概は流石ワシの相棒だ!!!

 向こう側の攻撃力も弱まったからワシももう少し戦闘に参加出来るぞ!!!」



 それは心強いな。

 とはいえ、【槌鍛冶士】が【上位権限】レイドボスとして何が出来るのかについてはこれまであえて触れるのを避けていたのもあってあんまり知らないんだよなぁ。

 それでも【槌鍛冶士】のことだからきっと最適なタイミングでサポートしてくれると信じている。

 唯一無二の相棒だからな!

 多くを語らずとも通じ合えるってわけだ。



 「へぇ……あなたはがさつなプレイヤーだと思っていましたが、そういう一面もあるのですね。

 これは素直に驚きと感心の気持ちが湧いてきます」



 それは……俺を褒めてるのか?

 よく分からんが素直に賞賛として受け取っておくことにしよう。

 


 「ケケッ、おれだけ置いてけぼりなんだぞ……

 でもこの隙に……スキル発動!【封龍雷眼】なんだぞ!」



 今度は【牛乳パフェ】から仕掛けていったようで、【アイシア】に稲妻のようなエフェクトがかかると麻痺状態になったのか身体の動きが鈍くなった……というよりは一旦止まったな。

 


 「竜人系の魔眼ですか。

 時間の経過で解除できるとは思いますが……」



 その前に俺が一撃食らわせてやる!

 スキル発動!【紅枝深淵】っっっ!!!





 「わ、私の核が……っ!?」



 俺がこのタイミングで放ったのは詠唱破棄の【紅枝深淵】だ。

 本当はフル詠唱して威力を高めたかったのだが、今回は隙を突くことに特化して即座に放ったわけだ。

 その甲斐もあって【アイシア】の核を無事貫くことが出来たようだな。

 【紅枝深淵】は【堕枝深淵】よりも攻撃性に長けているからこれを選んだんだが、しれっと俺の身体を奪おうとしてくるので油断ならないスキルだ。

 今回は詠唱破棄だからそこまでの影響力はないけど。



 「こ、このまま死に戻りするわけには……

 【ランゼルート】に顔向けできません!

 最後にもう一人道連れにします!

 スキル発動!【緑王暴生】!

 ガァァァァァァッッッ!!!!」



 【アイシア】は【緑王暴生】というスキルを発動させると、全身から緑や金色の蔓鎖を無尽蔵に放ちはじめて遠方にいる【牛乳パフェ】を含めて全員を一斉に葬り去ろうとしてきた。

 これは十中八九、リソース度外視の自滅技みたいなものだろうな!?


 規模も威力もこれまでとは桁違い過ぎるぞ!



 「ウゲゲッ、流石にこれは死ねるんだぞ……

 ヤバいヤバいっ!!!」



 【牛乳パフェ】の焦る声も響き渡ってきていることから、相当向こうもテンパっているのが伝わってくる。

 こりゃ、下手するとこっち側も全滅するぞ!?



 「ガハハ!!!

 これは不味いな!!!

 相棒のために一肌脱ぐとしよう!!!

 スキル発動!【鉄血精咲】!!!」



 【槌鍛冶士】は【アイシア】の目の前まで走り両手を広げると、そこから満開の鉄で作られた菖蒲を盾のようにして展開していった。

 ……ここで菖蒲かっ!?

 いや、いいんだけど照れくさいよな。



 「っっ、ガハハ!!!

 これは耐えきれないな!!!

 悪いがワシは【アイシア】と心中するしかないらしい!!!

 あとは、たのん、だ、ぞ……っ!!!」



 【アイシア】の攻撃を抑えきった【槌鍛冶士】は途中で防ぎきれなかった蔓の鎖で貫かれたまま、全身から光の粒子を垂れ流して死に戻りしていった……

 いい仕事をしてくれたな。

 お前の仇は【ランゼルート】を倒すことで晴らさせてもらうから包丁次元で楽しみに待っていてくれよ!



 「ケ、ケケッ……

 た、助かったんだぞ……

 もうダメだと思ったんだぞ!」



 【牛乳パフェ】も何とか生き残っていたようだ。

 【アイシア】もリソース切れでいつの間にか消滅しているようだし、MVPプレイヤー二人だけが最終的に生き残ったわけだな!


 ……向こう側が【アイシア】一人だったのに、こっち側が俺、【牛乳パフェ】、【つくだ兄ぃ】、【槌鍛冶士】、【マックス】というタコ殴り状態で挑んでこのザマなのは正直半分負けみたいな成果だろう。






 【アイシア】め、やってくれたな……っ!?

 くそう!


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】



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