1930話 【緑翠刃翡】
「ガハハ!!!
あの一撃も防がれてしまうとはな!!!
【マックス】の狙いは良かったと思ったが【アイシア】の方が上手だったな!!!」
【アイシア】の逃亡をさせないために【鉄血路樹】で路樹の壁を張り続ける【槌鍛冶士】が二人の攻防をみてそう評価していた。
俺も同じ様に思っていたが、森人かつ【上位権限】レイドボスという同格の存在である【槌鍛冶士】も同じ様に思っていたので的外れじゃないってことだ。
「……」
「私にかかればこの程度は造作もないです。
【ランゼルート】と一緒に戦場にいれば、戦いに不向きな種族、性格であっても自然と戦闘の勘は磨かれてきますよ」
そりゃ壮絶なお手本がずっと近くにいるんだからなぁ……
とはいえ、その凄技ばかり見ているだけでは全く参考にならないので、それを自分の物に出来ている【アイシア】の器用さやマメな性格が活きているのだろうよ。
同じことをモブプレイヤーがやろうとしても何の成果もあげられないはずだし。
「ケケッ、だからこそこれだけ囲まれていても戦いが成り立っているんだぞ!
……【ランゼルート】ならこれだけのメンバーで囲んでも既におれたちが負けてるだろうけど」
それを言うな、それを……
実際に【ランゼルート】と今いるメンバーで戦っても明確に勝てる見込みがさらさらないのは俺だって分かってるんだ。
「ケケッ、それならさっさと【アイシア】を倒して次に進みたいんだぞ!
スキル発動!【石化鉱眼】だぞ!」
【牛乳パフェ】が繰り出したのはまた聞き覚えのない魔眼スキルだった。
「くっ、手足が先から硬直していきます……っ!?
文字通り石化させるための魔眼スキルですか。
初見の魔眼スキルですが、回避困難なものでこの効果を付与してくるのは本当に厄介ですよ」
「……スキル発動、【最多木手】」
【アイシア】の動きが鈍ってきたな!
【牛乳パフェ】のスキルが効いてきたようで、すかさず【マックス】が木手で再びラッシュをかけはじめた。
それにしても【牛乳パフェ】は魔眼スキルをどれだけ持ってるんだよ……
「ククッ、ability【転生開眼】の恩恵を存分に受けているんだぞ!」
「そのせいで私たち望遠鏡次元は魔眼スキルで戦うことを半強制されていますけどね。
縛りプレイのようなものです。
次元戦争で勝率が悪いのもその影響があるんじゃないかと思っています」
まぁ、望遠鏡次元だけが相手と分かっていれば眼からスキルが出るところに警戒すれば対策のしようはあるからな。
攻撃のバリエーションが少ないということはそれだけ勝ち筋を狭くしてしまうことに繋がってしまう。
【牛乳パフェ】はその点だけを見るとMVPプレイヤーとして致命的な欠点があると言えるかもしれない。
ちなみに俺の致命的な欠点はカリスマ力とか、悪評の大きさだろうからそれと比べてどちらが致命的なのかは読者の判断に任せるぞ!
今回のように複数次元が入り乱れていると話は変わってくるけどな!
「ウゲゲッ、魔眼スキルカッコいいと思うのはおれだけ……っ!?
悲しいんだぞ……」
いや、格好良さは俺も認めてやるけどさ。
それはそれとして傾向が似て……いや、【牛乳パフェ】は分かっててこう言ってるんだろうからツッコミを入れるのは野暮か。
「私との戦闘中に世間話とは余裕ですね。
それほど余裕なのならば、リソースを一気に削ってそろそろ一人確実に倒させてもらいますよ。
スキル発動!【緑翠刃翡】!」
【アイシア】がそうスキルの発動を宣言した途端、最後方にいた【つくだ兄ぃ】の首が地面に落ちていた。
「ウゲゲッ、【つくだ兄ぃ】がいきなりやられたんだぞ!?
これだけ離れてるのに!?」
【牛乳パフェ】の声が遠方から鳴り響いてきているが、どうやら【つくだ兄ぃ】がさっきの一瞬で死に戻りしてしまったらしい。
【貧困】の大罪の力を駆使して【牛乳パフェ】を守っていた擬似タンクのような役割を果たしていたのだが、それがやられてしまったとなると一気に【牛乳パフェ】の身が危うくなってきたな……
「本当は【牛乳パフェ】をしとめようと思っていたのですが、【貧困】の大罪の力で攻撃を引き寄せられてしまったようですね……
ですが、一部誤算があったとはいえこれでそちら側の戦力が一人減ったわけです。
今の【ランゼルート】の前に立たせたくない大罪持ちプレイヤーを今しとめられたと考えたら結果的には良かったとも言えます。
さて、このまま残りのプレイヤーたちも倒させてもらいますよ!」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】