193話 ボマードちゃんへ後輩紹介
「先輩っ!?
こんなところ入ってきちゃって大丈夫ッスか!?
ほら、こんなところに関係者以外立ち入り禁止って書いてあるッスよ!」
というわけで、特設ステージ前から控え室へ移動した俺たち。
俺はボマードちゃんを検証班に連れてきた関係者ってこともあって、控え室だろうがなんだろうが顔パスで入ることができる。
その権限を使って後輩野球部員も連れ込んだ。
若干権利濫用感はあるが、まあ、通してくれたんならセーフでしょ!(小並感)
「先輩っ!?
さっきも思ったッスけど、アイドルとも知り合いっていうのは本当なんッスよね?
意外な接点過ぎて頭が追いつかないッスよ」
こらこら、いちいち驚くな。
あくまでバーチャルアイドルだけどな?
いや、もしかしたらリアルでそれ系統のことをやっている可能性も無いことは無いが、少なくともボマードちゃんという存在はバーチャルアイドルって括りだからそんなに畏まる必要もないだろう。
というか、アイドルになるきっかけを作ったの俺だし……
「いや~、あの時はお世話になりましたね!
【包丁戦士】さんが助けてくれなかったら、あのまま完全に動けない人みたいな感じになってましたよ……
銅像一歩手前になるまでデバフ進行してましたし……」
完全に要介護認定されてたからな……
【名称公開】をスキル認定してデバフ軽減出来なかったら、本当に銅像になってただろう。
……それならそれで、俺の包丁の餌食にし放題だったから悪くはないんだけどなぁ……
ほら、何度死に戻りしてきても無抵抗にヤられてくれるプレイヤーなんて普通は居ないだろう?
「せ、先輩……
猟奇的ッスね……?」
「あなたは【包丁戦士】さんの後輩さんですか?
それなら、このレベルの発言で驚いていたら元気が持たないですよ……?
いや~、【包丁戦士】さんは唐突に衝動を抑えられなくなるときありますし」
そんな発作みたいな……
いや、いつもプレイヤーキラーとしての気持ちはあるからな?
プレイヤーキラーならその辺にいるモブプレイヤーをどうやって惨殺するか考えるのは当然だろう。
「うわっ、なんだかプレイヤーキラー版【釣竿剣士】さんみたいなこといいはじめましたねっ!?
いや~、流石は【包丁戦士】さん、相変わらずよくわからないです……」
別にボマードちゃんに理解されようとは思ってないからそれはどうでもいいな。
というか、本題に入らせて欲しい。
「本題ですか?
いや~、隣にいる後輩さんを見たらなんとなくどんな話か予想は出来ますけど……」
それなら話は早いな。
こいつは、後輩野球部員。
俺たちの新しいクランメンバーだ。
「いや~、やっぱりそういうことなんですね」
「よろしくお願いしまッス!
まさかアイドルと同じクランに入れるなんて感激ッス!」
「いや~、素直でいい後輩さんじゃないですか~!
【包丁戦士】さんの後輩にしておくには惜しいですね、私の後輩なりませんか!!
こう見えて、最近戦えるようになってきましたよ!」
あー、実際に戦ってるのはボマードちゃんの身体を使っているジェーだがな……
いかにも後輩っぽいやつが来たからか、明らかに調子に乗っているタンクトップロリだが、素のスペックだとこの後輩野球部員を含めた全ての初心者よりもお前は低いからな……?
先輩面をしていても後で痛い目を見ることになるというのは、明らかなことだ。
「それで、【包丁戦士】さんはなんでこの後輩さんを私たちのクランに誘ったんですか?
いや~、【包丁戦士】さんが理由なく初心者プレイヤーを勧誘するのは考えにくいですからね……イベントのためと言っても今まで関わる人を厳選していたような、偏屈な人ですから」
偏屈とはなんだ、偏屈とは!
そのお花畑みたいな頭をこの包丁で覗いてやろうか?
俺は腰に提げていた包丁を取り出し、タンクトップロリに迫る。
……こいつを誘った理由だが、見つけたのは偶然だが面白い才能を持ってたからな。
今後の活動に役立つかもしれないって思って引っ張って来たってわけだ。
「……なんだか引っ張られて来ちゃったッス!
正直どんな状況なのかあまり分かってないッスよ!」
そんな自慢げに言うな。
というか、状況自体は何度か会話のなかで説明してるからちゃんと聞き耳立てておいてくれよ……
「相変わらず他人の扱いが雑ですけど、逆にいつも通りで安心しますね……
いや~、それでどんな才能を持っているんですかこの後輩さんは?」
窃盗だな!
使い勝手抜群だ!
「えぇ……殺人の先輩に窃盗の後輩ですか……
いや~、犯罪臭がぷんぷんする関係ですね?
というより、私のクランメンバーがそんなプレイヤーばっかりだと、私たち犯罪クランになっちゃうじゃないですか!?」
……それの何か問題でも?
「あっ、つい癖でマイク盗っちゃったッス!
返すッス!」
やるじゃないか、その調子で頑張ってくれ。
「……いや~、いや~、いや~!!!!!!!
なんなんですかこの状況!!!!!」
控え室にはボマードちゃんの歌声よりもどこか力強い美声が響き渡ったという……
掴みはばっちりだな!
えぇ……どうしてそう思いましたか?
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