1928話 最大と緑王
「ガハハ!!!
ワシの相棒はこんなところでヤらせんぞ!!!
スキル発動!【鉄壁樹林】!!!」
「……スキル発動、【最大樹林】」
俺を取り囲むようにドーム状態で鉄で作られた樹木と、樹齢1000年以上はありそうな大木が複数現れて蔓玉を完全に相殺して消し去っていった。
ここに新たに現れたのは俺の唯一無二の相棒である【槌鍛冶士】と、蛇腹剣次元の森人かつ【上位権限】レイドボスである【マックス】だった。
まさかここで森人二人が集まってくるとはな……
なんなら【上位権限】レイドボスじゃないとはいえ望遠鏡次元の森人プレイヤー【つくだ兄ぃ】もいるから三人か。
これで一気に形勢逆転だな!
これまで格下だった俺や【牛乳パフェ】、【つくだ兄ぃ】しかいなかったわけだが、【槌鍛冶士】と【マックス】は【アイシア】と同格のはず。
数の上でも上回って、質の上でも並んだのだから圧倒的に俺たちが優位になったのは言うまでもないだろうよ。
「ここまで数を集められてしまうと流石に私も辛いですね。
一旦退却……といきたいところですが」
「ガハハ!!!
させぬぞ!!!
スキル発動!【鉄血路樹】!」
【アイシア】が後方へと移動しはじめようとしたところへ【槌鍛冶士】が対応し、【アイシア】の背後へ横並びで一直線になるようにして鉄で作られた樹木が立ち並んでいった。
退路を物理的に断ったというわけだ。
流石俺の相棒、いい仕事をするじゃないか!
「ガハハ!!!
ワシが戦闘で活躍できる貴重な機会だからな!!!
だが、この【鉄血路樹】を維持している間は最低限のスキルでしか援護が出来ないぞ!!!
そこの【マックス】と連携して【アイシア】を追い詰めてくれ!!!」
「……」
了解だ。
【マックス】は相変わらず無口なやつみたいだが、釣竿次元の無言剣士と違ってスキルを使うときには喋るようなので本人の気質みたいなものだろう。
そんなやつと連携するのは大変そうだが、【槌鍛冶士】の手前やれないとは言えないよなぁ!
「……スキル発動、【最多木手】」
【マックス】は俺のことを考慮せず新たなスキルを発動させていった。
まるで千手観音のように身体から木で作られた手を複数生やして【アイシア】へと殴りかかっていったのだ!
おいおい、急にインファイト戦術かよ!?
森人って遠距離から攻撃するのがセオリーだと思ってたんだが勘違いだったか……
「攻撃に繊細さがないですよ!
スキル発動!【緑化宝杖】!」
それに対抗するためか【アイシア】もスキルを発動させて手に持っている杖と似たようなものを空いているもう片方の手元に生み出して握ると、そのまま【マックス】の複数の木手と打ち合いをはじめたぞ!
ここに来てまさかのお互いに近接戦闘用のスキルを切ってきたわけだ。
拳VS杖という中々渋いマッチアップだが、手数で攻める【マックス】に対して【アイシア】は杖による一撃ごとに木手を封印するという変わった戦い方をしているようだ。
「これだけ封印していけば私の勝利は揺るがないでしょうが……
……そう甘い話はないですよね」
【アイシア】が予見したように【マックス】は封印された木手を身体から切り離すと、その断面から新たな木手を生やして封印に対抗してきている。
力押しのように見えてお互いに随分と器用なことをするんだなぁ。
これが森人流の近接戦闘というわけか、実に参考になるぞ!
「ガハハ!!!
ワシはこの二人とはまた異なる近接戦闘をするがな!!!
機会があれば見せてやろう!!!」
俺が別の森人たちの戦いに魅入られているのに嫉妬したのか、【槌鍛冶士】がそんなことを横から言ってきた。
あいつらだけが近接戦闘のためのスキルを持っているわけじゃないのだとアピールしたかったのだろう。
「まさか森人同士で近接戦闘をすることになるとは思いませんでしたが、あなたは何が目的なのですか?
大人しく中距離戦闘をするのではダメだったのでしょうか……?」
「……」
「対話の意思はないようですね。
森人は閉鎖的な種族とされていますが、あなたは特にその性質が顕著なようです。
私は対戦相手なので話す必要もないという気持ちは分からなくもないですが、もう少し歩み寄る姿勢を見せてもらいたいものですよ」
「……」
【アイシア】は頑なに対話拒否している【マックス】に対して若干キレていた。
俺への嫌悪感とはまた違ったベクトルのもので、同族嫌悪からくる否定だろうな。
【アイシア】も対話の中でその気持ちは分からなくもないと言っているしな!
……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




