1927話 封印を侵す力
とりあえずこっちからもぶつけてみるか!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺が放ったのはお馴染みの極太レーザー……ではなく球体タイプの【魚尾砲撃】だ!
毒球だな!
これを何発も連続で飛ばしていき、蔓玉に衝突させて相殺しようとした。
さっきまでの【堕枝深淵】や【塞百足壁】だと躱されていたがこれは……
……見事ヒット!
何だか知らないが躱されることは無かったな!
「これは【侵略】の力……っ!?
感知範囲を侵してきたことで回避行動をさせなかったということですね。
私のスキルを侵すなど許せません……
深淵種族らしい小賢しい手ですよ!」
俺の知らない理論で何とかなったらしい。
とはいえ【アイシア】の発言で何となく分かったことがある。
それはあの蔓玉はそれぞれに感知範囲があって、そこに引っ掛かったら自動で回避されてしまうということだ。
【魚尾砲撃】だとその自動回避の範囲を【侵略】の力で無理やり進めるようだぞ!
……ありがたいことにな!
「過去の大戦でその力に弱いことは把握していましたが、まさかこの場で看破されるなど思ってもみなかったです。
あなたの闇に曇った目……その目はどれほどの深みを見ているのでしょうか……?」
【アイシア】にわざわざ言わないが別に看破したわけじゃなくて偶然だったんだぞ!?
俺の手持ちスキルの中でもこの場で使えそうなスキルを何個か試している最中にヒットしたってだけだ。
まぁ、それで向こう側が勝手に警戒してくれるのなら警戒させておけばいい。
相手の精神力や行動力を削ぐことにも繋がるし。
「ですが、私のスキルの攻略法を見つけたとしてもまだ蔓玉は止まっていません!
依然私が有利なことには変わりないですよ」
……そうなんだよな。
あれをぶち当てても蔓玉は消滅していなかった。
消滅したのはあくまでも俺が放った方の【魚尾砲撃】の毒球だ。
純粋に出力で負けているので相性で優位に立ったとしても、その負けている出力分を覆すには至っていないというわけだな。
まぁ、それでも効くって分かったなら使わざるを得ないけどな!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
さらに重ねてスキル発動!【魚尾砲撃】!
俺が次に繰り出したのは【魚尾砲撃】の重ねの兵法……毒球と極太レーザーの同時使用だ!
【アイシア】が漏らしたように【侵略】の力そのものが有効なので、毒球だけでなく極太レーザーもその回避行動の抑制に有効ってことだ。
「同じスキルの同時使用……重ねの兵法というものですか。
あなたが使うのは何度か見てますが随分と珍しいものを引っ張り出してきましたね……
しかも今回はご丁寧に性能が異なる仕様のものを同じスキルとして組み合わせています。
……やはり【ランゼルート】の障害になりそうなのはまだ見ぬ【勇者】よりもあなたですね。
単純な力比べで【ランゼルート】が負けるとは思えませんが、あなたのような手段を選ばない者の奇妙な手にかかってしまうことはあり得ますし、実際に過去に包丁次元相手に敗れているのもそれが理由でしょう」
へー、随分と俺を買い被ってくれているんだな。
俺なんてMVPプレイヤーの中でもスペックだけで見たら中堅クラスのプレイヤーだぞ?
そこまで警戒しすぎているとさっき言ってた【勇者】や、お前と同じような【森人】に普通に押し切られるかもしれないぞ?
なんたって今回は【勇者】も【ランゼルート】以外に三人参加しているんだからな!
いや、まぁ、俺が知ってるのは【キズマイナ】と【牛乳パフェ】から又聞きしただけの望遠鏡次元の勇者くらいで、蛇腹剣次元の【勇者】は存在してないんだがそれを伝えてやる必要はないだろう。
ようはハッタリだな!
「それでもです。
【ランゼルート】ならば【勇者】三人であろうとも勝利をおさめてくれると信じています。
ですがあなたはイレギュラーです!
だからこそ、ここで蔓玉にやられてください!」
【アイシア】のその言葉で蔓玉たちが急加速してきて俺に襲いかかろうとしてきた!
……くっ、【魚尾砲撃】たちだけでは抑えきれないぞ!?
これ、絶体絶命じゃん!
そう思い死を覚悟していた瞬間、それは訪れた。
「ガハハ!!!
ワシの相棒はこんなところでヤらせんぞ!!!
スキル発動!【鉄壁樹林】!!!」
「……スキル発動、【最大樹林】」
俺を取り囲むようにドーム状態で鉄で作られた樹木と、樹齢1000年以上ありそうな大木が複数現れて蔓玉を完全に相殺して消し去っていった。
た、助かった……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




