1925話 貧者の見識
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
「ケケッ、今度はこっちから攻めるんだぞ!
スキル発動!【呪眼狐離】なんだぞ!」
一問答終わったところでまず仕掛けていったのは【牛乳パフェ】からだった。
呪力の籠った魔眼が炸裂し【アイシア】へと襲いかかる。
「射線の視認できない遠距離魔眼攻撃は回避しようがないですね……
この点だけは【ランゼルート】にはない強みかもしれません。
ほぼ確実に当てられてしまうのは厄介極まりないですよ」
流石の【アイシア】でも回避することは叶わなかったようだな。
いきなり自分の身体に魔眼の影響が現れるんだから回避もクソもないけどな!
「ですが代わりにこういうことは出来ますよ。
スキル発動!【緑王快閉】!」
【アイシア】はこのタイミングで新たなスキルを使ってきた……が、俺たちに向かって何か飛んできているわけでもなく魔眼スキルのように直接何かされたわけでもないようで、こっち側に変化は起きていなかった。
だがその一方で、【アイシア】自身には変化が起きているようだった。
「ゲゲッ、おれがかけた【呪眼狐離】が解除されているんだぞ!?
そんな芸当はじめて見たんだぞ!」
【牛乳パフェ】が驚いているように、さっきかけて実際効果が現れていたはずの【呪眼狐離】の影響が一切無くなっていたのだ!
まさか回復系スキルだったのか!?
「回復系スキル……と似て非なるものです。
私のナカを這いずり回る状態異常に対して封印を施した形になります」
それって回復より弱くない?
だって受けたダメージとかはそのままだろうし、ふとした拍子に状態異常の封印が解けてしまったらまたその状態異常の影響を受け始めることになるんだからな!
「それはどうでしょうか……?
【牛乳パフェ】が私に同じスキルを使えば答えが分かるかもしれませんね?
試すかどうかはあなた方に任せますが、きっと絶望が深まるだけですよ」
何だか意味深な言葉だな!?
向こうの誘いに乗るのは危険だが、一方でスキルの詳細が分かるかもしれないチャンスを逃すのももったいない気がする……
【牛乳パフェ】ならどんな対応をするのか気になるところだが……
「ウゲゲッ、厄介な二択を迫ってきたんだぞ……
でも解析のためには情報がもっと欲しいんだぞ!
だからこそ、スキル発動!【呪眼狐離】!」
【牛乳パフェ】は再び呪力の籠った魔眼を発動させて【アイシア】を呪おうとしていた。
どうやら【アイシア】の誘いに乗ったようだな!
虎穴に入らずんば虎子を得ず……ってところか。
だが、結果は予想以上に芳しくなく……
「ウゲゲッ、全く効かなくなってるんだぞ!?
さっきまで普通に効いていたのに」
攻撃を弾かれたかのようにピクリともデバフの気配を感じさせないようになっていたのだ!
まさか抗体でもできたのか!?
「抗体とは言い得て妙な例えですが、近い形ですね。
私の体内で封印した状態異常は一定時間が過ぎるまで次回以降も同じ状態異常を受け付けなくなります。
あなたの言った抗体と同じような役割になるということです。
ただ、やっていることは回路の封印のようなものですが……
そしてこの隙に仕込んでおいた種を芽吹かせ、命の終わりを再現しましょうか!
これだけ仕込めば遠くとも届きます。
スキル発動!【緑王枯草】!」
【アイシア】が使ってきたスキルによって生み出された枯草が【牛乳パフェ】たちに向かってきている。
今度は俺のほうを無視して遠方にいる【牛乳パフェ】を仕留めることにしたらしい。
節操無い感じだが、戦っているうちにあっちの方が厄介に思えてきたんだろうなぁ……
「ウゲゲッ、攻撃される準備なんてしてなかったから避けられる気がしないんだぞ!」
「ここで私が守る番でしょうか」
【ワールドアナウンス】
【タモ網が貧困を保つ】
【【つくだ兄ぃ】の称号【『sin』貧困の目覚め】が強制セットされました】
【罪は己の中でタモたれ続ける……】
【【つくだ兄ぃ】に貧困の力が貸与されました】
新七つの大罪のうちの一つの【貧困】だと!?
しかも、他の大罪烙印者に影響を与えないバージョンも出来るのかよ!?
「スキル発動!【貧困採集】です」
【つくだ兄ぃ】はチュートリアル武器のタモ網で迫り来る枯草たちを捕獲していった。
……ような気配を出している。
流石に遠すぎて見えないが、気配の動きだけで察した。
「私の【緑王枯草】がタモ網に取り込まれていっていますね……
枯草のような見た目ですが高密度な情報量が込められた攻撃です、取り込むには限度があるはずなのですが延々と取り込まれ続けていますね……!?」
また変わり種を見せられましたね……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】