1924話 断固拒否の絶対封印
「【牛乳パフェ】による遠隔魔眼のことを考えるとこのままでは私の方が不利なようですね……
仕方ないですがこちらが攻め方を変えることにしましょうか。
スキル発動!【緑王絶対封印】!」
【アイシア】による緑と黄金の入り交じった蔓の鎖が俺に向かって新たに放たれてきた。
先程の大質量のものとは別に、前に見た時と同じ規模の量の蔓の鎖だ。
だが、その分一本一本の質が上がっているようで、俺の無限に再生する黒色の茨を貫通して一気に攻め込んできた。
再生が間に合わないくらいの威力とスピードってことかよ!?
【アイシア】も強敵なのは重々承知しているが、それはそれとして【ランゼルート】と戦う前に負傷は最低限に抑えたい……っ!
ここは……スキル発動!【儡蜘蛛糸】!
俺は蜘蛛糸を射出して【アイシア】の蔓の鎖へ絡ませていく。
茨による妨害よりも強度が低いので完全に止めるのは不可能だが……
「ケケッ、これはおれの動きを期待しているスキルの使い方なんだぞ……
【包丁戦士】、アシストするんだぞ!
スキル発動!【阻鴉邪眼】!」
遠方で深淵の魔眼スキルである【阻鴉邪眼】を使用して蔓の鎖周辺にデバフサークルを生み出して、蔓の鎖だけの勢いを緩めてくれたな。
【牛乳パフェ】は遠くから見ているだけなのに、俺がその場で欲しいと思ったほぼ最適解に近い援護が飛んでくるのは気持ちいいなぁ~
こんな高等テクニックみたいなことが出来るプレイヤーなんてどれだけいるんだろうか。
そしてその甲斐もあってか……
「一瞬、蔓の鎖の進行方向が逆転しましたね!?
途中で絡まってしまって動かなくなってしまいましたか……
弱体化の魔法陣とスキル操作権利の剥奪を組み合わせた最小限の力での妨害方法とは考えましたね。
陰湿な深淵種族の力を組み合わせただけはあります、随分と姑息な手ですよ」
俺たちを誉めているのか貶しているのかよく分からない講評をしてくれた【アイシア】だったが、【上位権限】レイドボスレベルの攻撃を通常のプレイヤー二人だけで止めてきたのには素直に驚いているようだった。
実際、俺と組んでいるプレイヤーが包丁次元の2つ名持ちだったとしてもかなり無理難題だっただろう。
だが、ここには頭が異様にキレてサポートに特化したMVPプレイヤーという異質な存在である【牛乳パフェ】がいるからな。
深淵スキルの使い手同士ということもあり、相乗的に相性も良くなっているわけだ!
MVPプレイヤーで【深淵纏縛】を含めた深淵スキルの使い手は俺以外に【牛乳パフェ】しかいないからこその限定的なコンビネーションが可能なのはありがたい話だ。
【アイシア】と会う前に味方につけておけて本当に良かったと思うな。
「ケケッ、そう言ってもらえると助力している意味が生まれるんだぞ!
聖剣次元と違って、おれの力が必要とされているのが伝わってくるから力を貸す甲斐があるんだぞ!」
「いちいち棘のある言い方ですね。
必要とされたいのであれば【ランゼルート】に釣り合うような相応の力を身につけてください。
清廉潔白な力を!」
まぁ、俺や【牛乳パフェ】のようなプレイヤーにそれを求められても困るんだがな……
それに、清廉潔白な力でなくとも暗黒面の力で【上位権限】レイドボスであるお前に対抗出来ているんだから、ある程度は認めてもいいんじゃないかと思うんだが?
「いえ、そのような力が広まってしまえば世界が混沌に侵されてしまいます。
それが強力な力であればあるほど……です!
だからこそ、この世界に生きる存在への悪影響を避けるために断固とした態度で拒否する必要があるのですよ。
悪しきモノを封印し続けてきた私の宿業も影響しています」
【アイシア】は【ランゼルート】と一緒に【ガルザヴォーク】を筆頭に深淵種族と戦い続けてきたわけだからな。
そりゃ、その立場からすれば深淵種族の力を扱う俺や【牛乳パフェ】の存在は認められないのだろう。
「ククッ、それならおれたちで組んで【アイシア】を倒せたら面白いことになりそうなんだぞ!
これまで虐げられてきた分、しっかり仕返しするんだぞ!」
【牛乳パフェ】は【アイシア】の主張を聞いてより一層反骨精神を剥き出しにし始めたな。
俺にとっては好都合だか、この次元戦争が終わったあとの望遠鏡次元と聖剣次元の関係性がとんでもないことになりそうで、地獄見たさと興味本位で楽しみになってきたな……っ!
そこは申し訳なさそうにするのが普通ですが……
全く、これだから劣化天子は……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




