1923話 黒色の茨と蔓の鎖
「【ランゼルート】の害になりそうな貴方たちはここで私が排除します!
スキル発動!【緑王飾彩】!」
【アイシア】は緑色のオーラを杖にはめ込まれた宝石に宿らせると、そこから緑色の蔓を編み込んで出来たような鎖を俺の方へと飛ばしてきた。
……ちっ、前に戦ったときよりも規模がデカくなってないか!?
「それは【森人の隠遁が全面的に解除されました】【森人の上位権限制限が解除されました】という2つのアナウンスの影響ですね。
今の私は逃げも隠れもしない分、様々な方面で出力が上がっています!」
ご丁寧に説明をドーモ!
向こうは負ける気がさらさら無いからなのか、強化の種について説明してくれた。
まぁ、これに関しては【槌鍛冶士】からある程度聞いていたから予想はしてたけどな!
それにしても制限の無い【上位権限】レイドボスということもあって、めちゃくちゃな規模になっている。
もはや鎖の樹海って言っても過言ではないぞ。
……まぁ、俺はルル様のゴスロリフォームなので翼を使って上空に逃げたので無事で済んだしヨシとしよう。
【牛乳パフェ】と【つくだ兄ぃ】はとりあえず優先的な対象じゃなかったからなのか、少し遠くへ退避することが出来たようだ。
一瞬逃げ出したのかと思ったぞ……
「初撃で仕留め損ないましたか……
この質量攻撃ならばいけると思っていましたが、やはり運とはいえ【ランゼルート】を倒しているだけはありますね」
運だけとはなんだ!
ちゃんと実力とか人脈とかも使って倒してるからな?
そこを勘違いしてもらっては困るぞ!
お返しにこれをお見舞いしてやろう!
くらえ、スキル発動!【堕枝深淵】!
さらに重ねてスキル発動!【堕枝深淵】!
俺は黒色の茨を伸ばしていき、【アイシア】へと差し向けていった。
「その茨の強度や質は中々のもののようですが、今の私の大質量蔓を退けられるようなものとは思えませんね」
まぁ、お前のご立派なモノと比べたらそうだろうよ。
保有リソース量からして違うんだから、そりゃ出力されるモノも相応の差が生まれてしまうのだ。
こればっかりはゲームシステム上仕方がない。
だが、性質の特異性でその差を幾分か埋めることは可能だぞ?
俺がそう言いながら茨と蔓と衝突点へと視線を向けると、そこでは無限に再生を繰り返す黒色の茨が蔓の鎖たちを押し止めている様子が繰り広げられていた!
「これはいったい!?
あの量で受け止められるとは思ってもみなかったですよ。
まさか、無限に再生させるという方法で質量の差を補ってくるとは侮れませんね……」
まぁ、受け止め切れているかと言われると微妙だけどな。
「じわりじわりと私の蔓の鎖の方が押していますからね。
いくら無限に再生していても対抗できるには限度があるようですね?
ですが一気に押せないのはもどかしいです」
今の均衡はお互いに不服な状態であるのと同時に、お互いに好機であると思っているからか別の手段に切り替えようという動きを見せていない。
俺としてはこの一つの手札だけで時間稼ぎが出来るのならいくらでも粘り倒したいという魂胆がある。
【上位権限】レイドボスと戦っていて迂闊な行動をしたら死に戻りしてしまうのは一瞬の出来事になってしまうからな!
一方で【アイシア】側の意図も何となく読める。
このまま時間はかかるにしても自分が優勢ならば、あえて手札を切り替えて攻撃するよりもこのまま確実に相手を押し倒していくことを選ぶのが堅実的な行動だと判断したのだろう。
上位者というのはわりとそういう思考ルーチンになりがちだ。
だからこそ生まれた硬直……
これが俺に味方をした!
「ケケッ、狙いがつけやすくて助かったんだぞ!
スキル発動!【彩鳥炎眼】だぞ!」
遠方にいる【牛乳パフェ】の態勢が整ったようで、望遠鏡による視覚範囲の強化で【アイシア】に直接延焼をもたらす魔眼スキルをぶち当ててきたのだ!
ナイスフォローだ、【牛乳パフェ】!
「【牛乳パフェ】……歯牙にもかけていませんでしたが、このタイミングで障害になるとは!
やはり先に排除すべきでしたか……?」
それは知らん!!!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




