1921話 野外や外野
「とりあえずこの辺りはあらかた探索が終わりましたね。
とはいってもほとんどは【牛乳パフェ】さんと一緒に済ませていたのでそこまで時間がかかりませんでしたけど」
そりゃまぁ、望遠鏡次元のプレイヤーの拠点付近だからな……
念のため何かないか調べてないところを聞きながらしらみ潰しに探してみたが、残念ながらこれといったものは見つけることが出来なかった。
望遠鏡次元としては安全圏から地道に行きたいということだったので、その方針を採用しつつも周囲へ範囲を広げていきたいという俺の方針も取り入れてもらった形だ。
同盟を組むとこの辺りの折衷が難しいのだが、最悪一旦俺がここから離脱すればいいだけなので今回はそこまで雁字搦めにならないのが救いだな!
望遠鏡次元側もここには二人しかいないし、集団で動いているときよりも規律や規則といったものを多少逸脱しようがそれに影響される人がほとんどいないのでトラブルになりにくい。
……逆に言ってしまえば、人が多かったら影響される人が多くなってしまうので規律や規則といったものを逸脱すると組織秩序が崩壊する要因になるので注意しないといけない。
トレジャーハンターをしている時にこれでチームが崩壊して俺も危機に陥ったことがあるので身に染みて分かっているつもりだ。
宝に目を眩まされて勝手に我先にと罠へ突撃していった連中を俺は許さないからな……っ!
そのせいで全員落とし穴へ落とされかけたしな。
……とそんな俺の怨み辛みのある過去の話は置いておいて、探索を進めていこう。
「そういえば今回の次元戦争で包丁次元の拠点は作らなかったのですか?
それとも作れなかったのですか?」
「ケケッ、【つくだ兄ぃ】それは聞くまでもないんだぞ!
敵に聖剣次元がいるから同じところにとどまっている方が危険だと判断したってことだと思うんだぞ……」
「敵に聖剣次元がいるから……ですか?
ちょっとよく分かりませんね」
包丁次元が拠点を設けていないことについて【つくだ兄ぃ】から疑問が飛んできたんだが、勝手に【牛乳パフェ】が考察して返答しようとしていた。
せっかくだしお手並み拝見といこうじゃないか。
「ククッ、聖剣次元のMVPプレイヤー【ランゼルート】は超高威力の遠隔斬撃を放てるんだぞ!
つまり、一緒に固まってとどまっているところを見つけられてしまって、そこを狙い撃ちされたら一網打尽なんだぞ……」
そこは正解だな!
実際に、前の五つの次元が参加した砦次元戦争で砦ごと攻撃されて戦線崩壊した陣営とかもあったしな……
今回は少人数なので見つけられる心配も少ないが、念のため動き回ることを優先したわけだ。
「【牛乳パフェ】さんもそれが分かっていてあえて拠点を作ったのですか?」
「ケケッ、それはおれのチュートリアル武器を活かしただけなんだぞ!
向こうより先にこっちが姿を見つけてしまえば問題ないって考えだったんだぞ」
あぁ、望遠鏡を活かしてひたすら遠くから観察を続ける作戦だったのか。
【牛乳パフェ】たちが拠点にしていた古民家、少し高めな設計になっていたし屋上から辺りを見渡して警戒していたんだろう。
味方が少ないなら動かずに外観だけでも探索できる【牛乳パフェ】は望遠鏡で辺りを見渡すのに徹した方が強いのもあるか。
なんなら姿さえ見つけたら魔眼でちょっかいも出せるようになるし。
「ウゲゲッ、逆にこっちの理由も解き明かされたんだぞ……
こういうところが【包丁戦士】はやりにくいんだぞ……!」
なんか急に批判されたんだが!?
【牛乳パフェ】と同じことをやっただけなのに……
それを言ったらお前も先んじて包丁次元の意図を読んできたからお互い様じゃないか!
「ウゲゲッ、それはそうなんだぞ……
でもおれに対抗して意図読みしてくるやつなんて少ないから、相対的にやりにくいのは変わらないんだぞ!」
相対的って言葉がつくと変に反論できないな。
この辺りは相手の意図を読めるかどうかが肝だから、ただ単に頭が回るやつでも答えは出せないだろうしな。
次元戦争とかで戦場慣れしてくるとこの辺りは洗練されてくるはずだ。
「だからこそ、【牛乳パフェ】さんも【包丁戦士】さんもお互いの意図が読めたということですね。
少し羨ましい関係ですね」
そうか……?
俺は別にそう思わないんだが、外野からどう見えているのやら……
どうでしょうね?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




