1920話 めんでるす
「ケケッ、それで【包丁戦士】の仲間はどこにいるんだ?
ここにはお前しか包丁次元のプレイヤーはいないみたいなんだぞ?」
それなんだが、【つくだ兄ぃ】と会った場所付近に多分いるんじゃないだろうか?
完全に俺の独断専行で【つくだ兄ぃ】と二人で行動していたからな。
包丁次元のメンバーは俺が今何処にいるか知らないはずだ。
「ウゲゲッ、それは不味いんだぞ?
ここはかなり広いからむやみやたらに探し回っても見つけ出せないんだぞ……」
想定外のことに冷や汗を流している【牛乳パフェ】だったが、そこは安心してもらいたい。
包丁次元にはフレンドへメッセージを飛ばせるスキル【渡月伝心】があるからな!
今回の次元戦争には幸運にも俺がメッセージを飛ばせる数少ないうちの一人がいるので合流しようと思えばいつでも出来るぞ。
「ケケッ、それなら安心なんだぞ……
焦らせないで欲しいんだぞ!」
いやいや、勝手に焦ったのはお前だからな?
とはいえ俺はまだ合流するつもりがない。
「それは何故ですか?
纏まって動いた方が安全性が高まると思いますが……」
生物学者らしい生存戦略だな。
だが、今回は探索範囲を広めるためにもこのまましばらくは別行動をさせるつもりだ。
さっきの【濛々たる合巣蜂】のようにイレギュラーなイベントが発生したら即座に対応できた方が聖剣次元へ有利に立ち回れるし。
「ケケッ、それが包丁次元の方針ならおれたちが口を出すところじゃないんだぞ。
おれたち望遠鏡次元も勇者が勝手に行動してるし似たようなものなんだぞ……」
MVPプレイヤーが別行動をしているか、勇者が別行動をしているかの差だな!
「包丁次元のメンバーを別行動させるということですが、それなら私たちはどのように動きましょうか?」
そうだな……
イレギュラーなイベントが発生したらそっちを優先させつつ、残る蛇腹剣次元のメンバーに接触したいな。
【マキ】がいれば【ランゼルート】相手にしてもフロントを張れるし、味方に出来るならそのまま取り込んでおきたい戦力だ。
「ウゲゲッ、あの【マキ】が?
おれ相手なら強いだろうけど、とても【ランゼルート】相手に立ち回れるプレイヤーじゃないと思うんだぞ……
相性を抜きにしたらMVPプレイヤーの中でも一番弱いはずなんだぞ?」
ククク……いずれ分かる、いずれな!
「ググッ、思わせ振りな様子で勿体ぶらないで欲しいんだぞ……」
そりゃ、包丁次元の連中の情報ならある程度自由に話すつもりだが【マキ】の場合は一応別次元だし、ここで勝手に話して関係が悪くなっても困る。
「ケケッ、【マキ】相手にそんな心配する必要はあるか?
そこまで気を回す必要が……いや、【包丁戦士】はきっと【マキ】の取り巻きのことを心配してるわけなんだぞ!」
流石【牛乳パフェ】、頭の回転が早くて助かるな。
蛇腹剣次元は【マキ】に対して過保護だし、そいつらを敵に回したら【マキ】も一緒に敵対せざるを得ないからな。
「ククッ、あそこは【マキ】が守る側であり守られる側という不思議な立ち位置だから分かるんだぞ!
難儀なものなんだぞ……」
【牛乳パフェ】と【マキ】は最下位争いをしていた関係で戦闘回数が多いっぽいからな。
その辺りの事情は他の次元と比べても把握しやすいのだろう。
「ですが、その蛇腹剣次元のプレイヤーを探すにしてもあてはあるのでしょうか?
先ほどのように連絡が取れるのであれば問題ないのですが……」
【つくだ兄ぃ】がここで懸念点を指摘してきた。
まぁ、その通りだ。
俺には蛇腹剣次元のプレイヤーとの連絡手段がない。
つまり当てずっぽうで探すしかないというわけだ。
「ウゲゲッ、それは嫌すぎるんだぞ……
その最中に聖剣次元のプレイヤー……特に【ランゼルート】と遭遇したらそのまま無駄死にするだけなんだぞ!」
それは諦めてくれ。
どうせ他のことをやっていてもその可能性は常に孕んでいるんだからな!
まあ、分かった上でその感想を言ってるんだろうけど。
だが、代案が思いつかないのだろうな。
それならとりあえずは俺の方針に近い形で動いてもらいたいところだ。
「ウゲゲッ、立場的には従わざるを得ないんだぞ……
でも危険になったら安全策を取らせてもらうんだぞ!
流石にこんな序盤に脱落はしたくない……」
それはご自由にだな。
全てを投げ捨てて逃げ出すとかしなければとりあえずはヨシとしておこう。
そこまで強制力のある同盟関係でもないしな。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




