1916話 攻落する合巣蜂
【キズマイナ】や望遠鏡次元の連中との合流案を【つくだ兄ぃ】と一緒に考えてみたがどれも現実的じゃないものや、デメリットの多そうなものばかりだった。
それだったらいっそうのこと方針を変えた方がいいかもしれない。
「方針……ですか?
具体的にどのように変えるおつもりでしょうか」
【つくだ兄ぃ】が不思議そうに、そして俺を試すような視線で見つめながらそう問いかけてきた。
ここは俺の発想力が試される場面ということだろう。
俺への期待が高まるのか、あるいは失望に繋がるかのな!
別に【つくだ兄ぃ】に期待されようが、失望されようが戦況には影響がないだろうし今後の活動にもさほど影響はない。
だが、これだけ向こう側の有能さを見せられた後だからこっちも見返してやりたいという気持ちも強くなってきている。
それに、ここで上手く対応できたら【キズマイナ】や【槌鍛冶士】も楽できるだろうしな。
今後の激戦に備えるという意味でも適切な対処をしたいが……
……そうだな、ここは真っ正面から堂々と【濛々たる合巣蜂】のいる方へ向かっていこうか。
「真っ正面から堂々と……ですか!?
それはまた大胆不敵過ぎませんか!?」
流石の【つくだ兄ぃ】も慌て驚いているようだ。
まさか俺がこんな対案を出してくるなんて夢にも思わなかったという声色と表情だからすぐに分かった。
「【牛乳パフェ】さんだったら出してくるであろう対応方法と真逆で驚きましたよ。
深淵種族に親和性のあるプレイヤーとのことだったので裏から手を回すやり方を実践すると想定していたのですが、単純明快な方法で解決しようとしてますね……」
俺も裏から手を回す方法を取ることはあるが、案外王道の方法を取ることも多いぞ。
それで驚かれるのは不本意だがな!
「……そのようですね。
【包丁戦士】さんの様子からしても私をからかっているわけでもありませんし、真剣にその案で行けると思っているのが伝わってきます」
まぁ、確実にいけるなんて思ってないけどな。
あくまでもイケル可能性があるくらいだ。
当然失敗してしまうこともあることを頭には置いておいてくれよ。
「承知しました。
それでは【包丁戦士】さんにお任せしましょう」
【つくだ兄ぃ】は俺にミチを譲ってくれたので、そのまま真っ直ぐ【濛々たる合巣蜂】のいる方向へと向かっていく。
【……ЧЧЧЧッ!!!!】
【濛々たる合巣蜂】側も俺がそのまま歩いてくるとは思ってなかったようで警戒の色を強めているようだ。
向こうの意識が俺に集中してきたならこれが使えるな。
スキル発動!【深淵纏縛PP】!
俺はスキルを発動させると身体を深淵の黒い霧で纏っていき身体を中から作り替えていく。
そして霧が晴れた頃には衣装もガラリと変わっており、黒色のフリルがついた緑色のゴスロリへ変化していた!
これがルル様のゴスロリフォームだ!
「これは【深淵纏縛】……【牛乳パフェ】さんも使っている深淵種族の変身スキルですね。
ここで変身スキルを使ったということはやはり攻撃に移るということなのでしょうが、単独で勝てる相手なのでしょうか……」
不安そうに俺を見守る【つくだ兄ぃ】だが、ここからは大人しくしていてもらおうか。
変な動きが【濛々たる合巣蜂】の目に写っても困るからな!
……さぁ、さっそく出番だ。
剣現せよ、【堕闇剣ダイン】っ!
スキル発動!【堕落闇剣】!
剣現した【堕闇剣ダイン】は刃の片面がギザギザになっている刀のような形状へと変化していった。
見た目はかなり大きめな漆黒のケーキナイフってところか。
そんな【堕闇剣ダイン】を伝わせて放ったスキル【堕落闇剣】によって刀身を巨大化させたかのような漆黒の剣がオーラブレードのように上乗せして手元にある。
それをそのまま【濛々たる合巣蜂】へと突き刺していった。
「無抵抗で受け入れましたね!?
向こう側に明確な敵意がなかったとはいえ、これはいったい……」
そして、【堕闇剣ダイン】のオーラが【濛々たる合巣蜂】の全身を包み込んだ頃には……
【ワールドアナウンス】
【レイドクエスト【濛々たる合巣蜂】が【包丁戦士】によってクリアされました】
【包丁次元のプレイヤーにスキル【衆合巣蜂】が開放されました】
【【包丁戦士】が称号【合巣蜂の調教手】を獲得しました】
【個人アナウンス】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が155になりました】
【調教ボーナスで【Ч細胞】を獲得しました】
【【包丁戦士】が称号【深淵の合巣】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が156になりました】
「これはいったい何が起きているんですかっ!?!?!?」
やはり上手く行ったな。
【山伏権現】め、どうしても【ランゼルート】を俺に倒させたいみたいだな?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




