1915話 合流案
さて、結構歩いてきたが……
「羽音がよく聞こえるようになってきましたね。
そろそろ目的地に到着する予感がしますよ。
帰巣してきた蜂たちが密集する場所ということは、本体周辺ということですからね」
【つくだ兄ぃ】の言うように俺も蜂の羽音はうるさいほど聞こえるようになってきた。
これは嫌でも近くにいるというのが実感できるなぁ……
そうして建物の角を曲がると……
「これは想像以上のものが見れましたよ!!
【包丁戦士】さん見てください、【濛々たる合巣蜂】の姿を!!」
【つくだ兄ぃ】に促されて見てみるとそこには5メートルほどの大きさの巨大な女王蜂が、群体の蜂に護られている光景が繰り広げられていた。
まぁ、これ自体は予想していたものとほぼ同じなのだが、予想外だったのは巨大な女王蜂の姿そのものについてだ。
他の蜂たちだと針がついているはずのお尻の部分に女王蜂本体と同じ大きさくらいの蜂の巣がついていたのだ!
まさかの本体プラス巣の合わせ技だったとはなぁ……
「これは中々面白い生態ですよ。
女王蜂自らが動いて巣を守りつつ、群体の蜂を生成し続けているわけですからね。
巣が別にあれば隙を見て破壊することも可能ですが、レイドボスである【濛々たる合巣蜂】と一体化しているのであれば隙を作るのも難しいですし、そもそも巣自体の強度もレイドボスのスペックに合わせて上がっていることでしょうから、そう易々と破壊することも出来ないでしょう。
……あわよくば蜂蜜なども確保してみたかったところですが、私が不用意に近づけばそのまま死に戻りさせられてしまうでしょう」
レイドボス産の蜂蜜は正直俺も欲しいな!
手に入ったら極上の食材として活躍してくれることだろう。
デザート系料理を作る時に最高峰素材として名を連ねるんじゃないかと俺は睨んでるくらいだ。
「【濛々たる合巣蜂】の蜂蜜を使った【包丁戦士】さんが作るデザートもいつかご相伴に預かりたいところです。
【牛乳パフェ】さんからその辺りの情報も聞いていますよ。
流刑次元でも【牛乳パフェ】さんは何度かサンドイッチをいただいていたようですからね」
あー、流刑次元攻略の時は確かに誰かしらいるだろうって思った時は料理を作って持っていっていたからな……
いつレイドバトルが始まるかは微妙な誤差があったから、流石に凝ったものじゃなくてすぐに食べられるお手軽なものを持参していた。
その最たる例がサンドイッチなのだ。
「さて、それはさておきここからどうしますか?
私としてはこのままの距離を保って観察しているだけでも満足できそうなのですが……」
お前はそれでもいいかもしれないが、俺はそれだけでは目的を達成できないからな。
やはりもう少し踏み込む必要がある。
「ただ、あそこまで警戒している状態で踏み出しては迎撃態勢に入られるだけでしょう。
群体の蜂たちが私たちの姿を視認して帰巣している以上、今ここに私たちがいることも知られているでしょうし、ここから危害を加える行動をしたらその時点で本格的な戦闘になってしまいます。
【包丁戦士】さんはこの状況でレイドボスの【濛々たる合巣蜂】に勝つための手札を揃えていたりしますか?
それでしたら止めることはしませんが……」
いや、今この場には勝つための手札はないな。
ここに俺の仲間が合流してくれたら勝てるかもしれないが……
割と遠くに来てしまったので合流するまでに時間がかかるし、そもそもこの場所を伝える手段がない。
「おや、勝てる見込み自体はあるのですね!
恐れ入りました。
【牛乳パフェ】さんでしたら真っ先に一度退却を提案するような場面だったので、【包丁戦士】さんも同じ様にお考えになると思っていました。
それでしたら何かしらの合流手段でも考えてみますか?」
一旦そうしてみるか。
保険がかけられるならそれに越したことはないからな……
ちなみにお前は信号弾みたいなものは持っていたりするか?
俺の仲間じゃなくても望遠鏡次元の連中を呼び出せるようなものだ。
「……一応近いことは出来ますね、ただしオススメはしませんが」
というと?
「まず、群体の蜂たちを刺激してしまうからです。
下手をすると攻撃だと思われてしまいます。
それですと私の次元の仲間たちが合流する前に戦闘が始まってしまうでしょうね」
それは不味いな……
「それに、私の仲間たちが【包丁戦士】さんを攻撃しない保証もありません。
私はどちらでもいいのですが、【包丁戦士】さんとしては不利益の方が大きそうですよね」
うーん、それは悩むなぁ……
四面楚歌ですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】