1911話 読めない存在感
「それで群体タイプのレイドボスにはどんな特徴があるんですかぁぁ?
あてぃしはレイドボス歴が短いのでその辺りには詳しくないんですよぉぉ!」
【キズマイナ】は【槌鍛冶士】に尋ねていたが、そこは俺も気になるところだな。
群体タイプのレイドボスが目の前にいるからこそこのすぐ後に起きる可能性……戦闘が発生した場合に備える意味でも少し知識を持っておきたいところだ。
……【槌鍛冶士】も詳しいってわけじゃなさそうな雰囲気だけどな!
「ガハハ!!!
お前の言う通り大して語れることもないぞ!!!
だが、全く知らないというわけでもないから知っていることだけ教えてやろう!!!」
タスカルタスカル……!!!
「まずは群体タイプのレイドボスには本体が別にいるということだ!!!
さっきお前が捕まえた蜂もレイドボスという扱いではあるが、どれだけ倒したとしてもレイドクエストクリアにはならないだろう!!!
あくまでも本体を倒さなければならないぞ!!!」
それはまぁ……想定していたな。
あの蜂を倒すだけでクリア出来ていたら本当に楽だったんだが……
これだけ弱いと逆に味方に引き入れたとしても大して役立ってくれないだろうし、本体が別にいるならちゃんとレイドボスならレイドボス相応の強さを持っているということか。
「その本体が強いとは限らないがな!!!
本体が生きていれば基本的には群体はある程度自由に数を増やせるみたいだが、数を増やせる能力がある分他のレイドボスよりは本体自体の戦闘力が低め……らしいからな!!!」
なるほどな。
そこでバランス調整してきているわけだ。
個の力で制圧するか、数の力で翻弄するか……だ。
「ガハハ!!!
そういうことだな!!!
申し訳ないがワシが知っているのはここまでだ!!!
後は実際に会ってみて体感してくれ!!!」
結局はそういうことになるよな……
まぁ、やるだけやってみるしかないのは分かっていたことではあるので今さらではあるが。
「見たところ本体っぽいのはいなさそうですよねぇぇ!
群体の蜂みたいなのはよく見たら数匹いるので、あてぃしの深淵の黒い霧と音色に引き寄せられているのは間違いないんですけどぉぉ!」
そうだな。
少なくとも近くにはいるだろう。
だが、この周辺の探索は改めて必要そうだ。
「ガハハ!!!
ワシの発明品で軽減したとはいえ、この辺りは目立ちやすくなっているのには変わらない!!!
ここは分散して探すといいと思ったがどうする!!!」
それには俺も賛成だな。
手っ取り早く【濛々たる合巣蜂】の本体を見つけて、ここから離脱しておきたいからな。
いくら【キズマイナ】という特級戦力を有しているからといっても、こんな序盤に【ランゼルート】とぶつかってしまったら勝てる見込みすらなくなるからな!
それに、頼りにしている【濛々たる合巣蜂】という存在も一緒に討伐されてしまう可能性もある。
そうなったら【槌鍛冶士】の生産アイテムまで作ってもらい、ここまで時間をかけた意味が無くなってしまう。
徒労感でその後の戦闘にも影響が出てきてしまうだろうから極力避けたいところだな!
というわけで、一旦解散!
……解散して単独行動となった俺は群体である蜂の動きをまず観察してみることにした。
動き回って探そうとも思ったんだが、その前にこの群体の蜂の行動パターンを読めたら便利だと思ったわけだ。
これをやりたかったからこそ他の連中の別行動を許可したという側面もあるな。
こんな観察は一人がやっていればいいし、何人も一緒にやるには時間が持ったいなさすぎるからだ。
そんなわけで蜂を凝視しているが、何匹かいるのに別々で行動しているわけじゃなくてある程度固まった数で動いているみたいだ。
まるでチームを編成しているようにも見える。
それが何グループかある印象だ。
チームで固まって移動しているのには何か理由があるのだろうか?
この辺りは生物学者なら分かるかもしれないが、俺には分からない。
「それは残念ですね。
この行動は中々興味深いのですが……」
うわっ、誰だっ!?
俺が全く気配が読めなかったんだが……
【釣竿剣士】以来の驚きだぞ。
「これは失礼しました。
私は望遠鏡次元所属の【つくだ兄ぃ】と申します」
【【つくだ兄ぃ】の【名物怪々】】
【【つくだ兄ぃ】の解析状況に応じて状態異常付与確率が上昇】
【【つくだ兄ぃ】の【名称公開】】
【【つくだ兄ぃ】に知名度に応じたステータス低下効果付与】
これまた変なやつが現れたな!?!?
劣化天子が気配を読めないプレイヤーなんてかなり希少ですね。
流石の私も驚きました。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】