1907話 対策と対応力
というわけでこの【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】に潜入してきたという深淵種族を探すために俺たちは探索を続けることになった。
とりあえずは、深淵種族の尖兵とやらを見つけてみないと対応については決めかねるからだ。
「でも、どうやって見つけますかぁぁ?
あてぃしはひたすら歩いて探す以外に方法が思いつかないんですけどぉぉ!」
【キズマイナ】はそうなのか。
一応俺は思いついているんだが、その方法がこの局面でやるにはリスキー過ぎるんだよなぁ……
「ガハハ!!!
どんな方法なのか言ってみろ!!!
ワシが何とかしてやれるものだったら対応してやろう!!!」
……【槌鍛冶士】がそういうなら一応説明してやるか。
俺が考えたのはスキル【堕音深笛】で呼び出すものだ。
音も深淵種族好みだろうし、そこから発生する深淵の黒い霧は深淵種族が糧とするエネルギーそのものみたいなものだからな!
この深淵種族が生活するには厳しすぎる【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】でそんなものがあることを察知すれば意思の有無に関わらず寄ってくる可能性が高いだろうよ。
【堕音深笛】は【キズマイナ】も使えるから思いついていると思っていたんだが……
「ふひひっ、全く思いついてませんでしたぁぁ!
すみませんねぇぇ!」
いや、まぁ思いついていたとしても俺もリスキーだと感じている方法だ。
無用の作戦になっただろうし、仕方あるまい。
「ちなみにだが、どの点がリスキーだと感じているんだ!!!
今聞いただけだとメリットしかないように思えるぞ!!!」
そりゃそうだ、まだメリットしか説明してないわけだからな。
デメリットとしては……まずこの【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】に演奏の音が鳴り響くことになる点だ。
これが一番致命的で、俺たちがいる場所を蛇腹剣次元、望遠鏡次元、聖剣次元のやつらに無条件で教えることになってしまうことだ。
そうなれば【キズマイナ】が懸念していたように俺たちが集中砲火にあう可能性が高い。
次に、敵対するかもしれない深淵種族を強化することになる点だ。
これはメリットでもあるからなんとも言えないが、俺たちが倒そうとするならデメリットであろう。
最悪、放置して逃げるという手もあるからこっちはあまり考えなくてもいいかもしれないがな!
「他の次元のプレイヤーに押しつけるというわけですねぇぇ?
【包丁戦士】さんらしい外道な作戦ですよぉぉ!」
外道とはなんだ、外道とは!
賢く立ち回ろうとしていると言ってもらいたいものだ。
「ガハハ!!!
つまりは音が他の次元のプレイヤーに聞こえないようにすればいいのだな!!!
それならワシが解決出来そうだ!!!
これまでに巡ってきた建物の中にあった……あれとこれと、あの辺りを集めて来てくれ!!!」
そういって【槌鍛冶士】は俺と【キズマイナ】に火事場泥棒を命じてきた。
まぁ、やるけどな!
頼まれた品もそんなに難しいものじゃないし、そもそもここまでで発見したことのあるものだけだからある前提で探せるのがデカイ。
無いかもしれないものを探すのとでは気のもちようが変わってくるからだ!
「ふひひっ、【包丁戦士】さんは平然と受け入れてるみたいですけど、【槌鍛冶士】さんのあの対応力の高さは凄まじいですよぉぉ!
問題点を聞いてから、その対策と何が必要なのかをすぐに導き出してましたからねぇぇ!」
その凄さは俺も良く分かっている。
だが、【槌鍛冶士】が相棒な以上は一々驚いていたら身が持たないし、それこそ【槌鍛冶士】にも失礼だろうからな。
「失礼……ですかぁぁ?
どういうことですぅぅ?」
それは、俺が【槌鍛冶士】の実力を低く見積もっているっていう反応にもなるから……ということだ。
俺が当然のように対応していれば【槌鍛冶士】も所謂手加減をしなくても良くなるからな。
アイツにはありのままの姿でいてもらいたいというのが俺の優しさというものだ。
……まぁ、それでも驚く時は驚くんだが。
「【包丁戦士】さんの謎の優しさですねぇぇ!
その優しさを全体的に広げてもらえたら平穏な生活を送れるプレイヤーが増えそうなんですけどぉぉ……」
それは無理だな。
【槌鍛冶士】相手だからこそ……みたいな感じだからな。
唯一無二の相棒というポジションはそれほど強固なものというわけだ。
ふひひっ、妬けますねぇぇ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】