1905話 大黒柱と女房役
「ガハハ！！！
それにしてもこの場所には鍛冶をする場所が思ったより多くあるな！！！
これだけあればやろうと思えばどこでもやれるな！！！」
確かに武器がこれだけ備えられている場所なら自然と鍛冶場も相応に多くなるだろう。
じゃないと全部の建物に常備しておく……しかも常に手入れの行き届いた状態にし続けるのは不可能だからな。
当然の結果とも言える。
「流石にあてぃしの【底骸剣デュラ】を手入れできそうな場所は無さそうですけどねぇぇ！
そういうところがあればぜひやっておきたかったんですけどぉぉ！」
「ガハハ！！！
それは高望みというものだ！！！
それが出来るのは担い手の居住地か、レイドボスを打倒できる【失伝秘具】を加工した鍛冶道具がないといけないからな！！！
【底骸剣デュラ】だけでなく、【封地剣マヒク】でも同様だぞ！！！
世界剣種の強度を調整するとなれば調整する側にも相応の強度が求められるからな！！！」
なるほど、それは理屈が通っていると思うが……
ただ担い手の居住地でならもっと難易度が下がるような口振りをしていなかったか？
そんなのは初耳なんだが……
「ガハハ！！！
それはそうだろう！！！
そもそもお前が世界剣種の手入れをしていないのは知っているからな！！！
伝える必要もないと思っていたわけだ！！！
使わない情報を伝えても意味がないからな！！！」
【槌鍛冶士】の配慮で教えられていなかったということか。
これまで一切使ってない情報だったし、【キズマイナ】が聞かなかったら今後も不要な情報のままだったと考えたら【槌鍛冶士】の配慮は正しいものだったに違いない。
とはいえ、もう聞いてしまった以上はもう少し詳しく事情を知りたいところだな！
「それもいいですけど、探索もしつつにしましょうよぉぉ！
次の建物に移動してからでも遅くないですよねぇぇ？」
それもそうだ。
今は次元戦争の最中だしな！
というわけで、【槌鍛冶士】……探し物をしながら簡単にその辺の事情を教えてくれ！
「了解だ！！！
とはいっても、ワシも知り尽くしているというわけではないし、元々知っていたわけではないぞ！！！
ワシ自身の身体が【失伝秘具】であり、世界剣種になったからこそ隠居しながらも少しずつ身体を情報解析して分かったことだからな！！！」
「ふひひっ、【槌鍛冶士】さんは森人で情報操作に長けた能力を持っていますからねぇぇ！
あてぃしが【失伝秘具】かつ世界剣種になったとしても同じことは出来ませんでしたよぉぉ！
やっぱり【コラテラルダメージ】の女房役は頼りになりますねぇぇ！」
女房役？
それは女の俺のことじゃないのか？
「【包丁戦士】さんはどちらかというと大黒柱みたいな感じがしますよぉぉ！
これは多分あてぃしだけじゃなくて【コラテラルダメージ】のメンバー全員が同じことを思っているでしょうから覆しようがないと思いますねぇぇ！」
「ガハハ！！！
そうに違いない！！！
ワシも同じ意見だからな！！！」
【キズマイナ】だけじゃなくて【槌鍛冶士】もそう思ってるのかよ。
しかも他のメンバーたちもということとなればどうしようもないな……
「……と、探索してましたけど全く他の次元のプレイヤーと会わないですねぇぇ？
次元戦争っていつもこんなにゆっくりとした立ち上がりなんですかぁぁ？」
しばらく探索をしていると【キズマイナ】が不意にそんなことを言い出した。
【キズマイナ】は次元戦争への参加経験からして分からないのも仕方ない。
だが、探索する場所があるくらい広めのフィールドでの次元戦争はわりとこんな感じだ。
……だが、４つの次元のプレイヤーがいてここまで会わないのも不自然だよな？
一対一なら全然ありえるくらいの時間経過だが、そろそろ一人くらい出会ってもおかしくはない。
「ワシが参加したことのある時はすぐに見つけられたがな！！！
あの時は一対一だったぞ？？？」
それは俺たちと相手の最終的な目的地が明確に決められていたからだな。
だからこそ、その一直線上を動けば必然的にお互いにぶつかり合うというわけだ。
だが、今回は状況が違う。
４つ全ての次元に拠点が割り振られているわけでも、目的地が決められているわけでもないからな。
ここから何かしらのハプニングが起きない限りはしばらく硬直状態が続くだろうよ。
「……どうやらそれはフラグだったみたいですよぉぉ！」
【キズマイナ】が真っ先に反論してきたが、俺はそれを否定することが出来なかった。
何故なら……
【ワールドアナウンス】
【【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】に深淵種族の尖兵が出現しました】
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】
