1904話 突撃!お宅の武器事情!
「それではまずは都市散策ですかねぇぇ!
地形を把握しますよぉぉ!」
とりあえず頑丈そうな【キズマイナ】を先頭に置いて俺たちは【Battle field 特異次元 円卓丘都キャンラン】の都市部分の探索をしていた。
中世風の建物が並ぶこの丘には周囲を埋め尽くすほどの建物があるからな。
探し物をするという点では無限に時間を費やせることだろう。
まぁ、流石にそこだけに時間を使いすぎていつの間にか負けていた……なんてことになったら本末転倒だからほどほどにしないといけないけどな!
……そうして探索してみたのだが、思っていたよりもここの都市は物騒だな?
どの建物にも剣や盾などの武器が備え付けられており、外敵が頻繁に出現する環境だということが見てとれた。
これが一軒や二軒くらいなら俺の勘違いで済むんだが、流石にほぼ全ての建物の中にあるとなれば話は変わってくるからな。
逆に分かりやすすぎてビビるくらいだ。
「ふひひっ、ここは【屍山血河城塞アンデッド】のように底辺種族たちが纏まって生活していた場所のようですねぇぇ!
そして、ところどころ機戒種族や次元天子の加護を感じられるので、罪魔種族や深淵種族の進行を止めたいという意志が都市全体から伝わってきますよぉぉ!」
「ガハハ!!!
残念ながらワシの同胞の力は感じられないがな!!!
それがあればもう少しワシが動きやすかったのだがな!!!」
俺は内装を見て都市の傾向を把握しようとしたが、【キズマイナ】や【槌鍛冶士】のような生粋のボトムダウンオンライン内で育ったプレイヤーは力の流れとか加護の種類で判断しているようだ。
そっちは俺には分かりにくいところだから別視点で確認してもらえるのは助かるな!
「他の種族の加護があったとはいえ、底辺種族たちでここまで大規模な都市を作って生活していたのは凄いですよねぇぇ!
あてぃしたち包丁次元だと地下にいったメンバー以外は基本的に少数で散らばって生活していましたからねぇぇ!」
まぁ、ただ【ランゼルート】に聞いた話だと結局他の次元同様に蹂躙される運命になったらしいけどな。
深淵種族の竜帝王……【エルラシア=ガルザヴォーク】が何らかの方法でこの加護が満ちている都市を破壊した……のかな?
【ガルザヴォーク】が暴れまわったのは聞いているが、この都市を破壊した存在は別の可能性もあるから何とも言えないが。
「ガハハ!!!
これだけ他の種族に守られていても陥落してしまうとは難儀なものだな!!!
それでは手の打ちようがないではないか!!!」
「ふひひっ、実際手の打ちようがないと思いますよぉぉ!
底辺種族という種族名ということもあって、基本的には外部プレイヤーの参入までにほとんど種族集団として機能しないくらいに滅ぶことが定められているみたいでしたからねぇぇ!
βプレイヤーが数多く残っていると【山伏権現】に不都合なことがあったのでしょうぅぅ!」
それは悲しい定めだよな。
だが、簡単には抗えるものではないのを分かっているので諦念も感じられる。
「あてぃしや【ランゼルート】みたいな存在が先んじて生まれていれば話は変わってきて、さらなる繁栄も見れたんでしょうけど叶わない夢ですよぉぉ!」
「ガハハ!!!
それこそこの都市を継続して運用出来ていたら技術力で戦闘力を補えるようにもなっていたかもしれないな!!!
これまでお前が見てきた各家にある武器にも色々と細工がされていたからな!!!
ワシには及ばぬとしても集団で持つことで大きな力となっただろう!!!」
まぁ、技術力だけでどこまで対抗できるのかと言われると微妙なラインだけどな……
流石にさっき言った【ガルザヴォーク】のような【上位権限】レイドボス相手では荷が重すぎるだろう。
基礎スペックが違いすぎるからな!
……だが、その一方で通常のレイドボス相手ならギリギリ何とかなるかもしれないとは思う。
俺たちだって似たような条件でレイドボス討伐を成し遂げてるわけだからだ。
「性能の細部は違いますけどねぇぇ!
それに全体的なモチベーションが極端に低かったので包丁次元ではレイドボスを討伐しようなんて考える底辺種族はいませんでしたよぉぉ!
長年虐げられ続けていましたからねぇぇ!」
勝てないと思わされている相手に勝ちにいくのは精神力も使うからな……
モチベーションが低いままだと挑んでもなおのこと勝率が落ちるだけだし、包丁次元でジャイアントキリングが起きなかったのはその辺が原因っぽいな?
悲しい運命ですが、これも摂理というものです。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】