1900話 可処分的資源の美徳
「というわけでやって来ました【株式会社幽刻修験堂】のオフィス!
今日は【山伏権現】に呼び出しをくらったので突入していくぞ!」
「……オメー、誰に解説してんだっつー話だ。
今さら俺に言うような内容でもねーだろ!」
「それもそうか……」
ということで今回は昼飯を【東雲飛鳥】と一緒に外で食べてきた後に【株式会社幽刻修験堂】のオフィスに来たわけだ。
その時に【東雲飛鳥】のモデルの宣材写真を見せてもらったりしたが、写真映りが滅茶苦茶良かったぞ!?
そりゃ【山伏権現】もスカウトするわな……と思ってしまった。
素の状態でもかなりモデル感を出している振る舞いをしているが、写真だとなおのこと際立っていてファンがつくのも頷ける話だ。
「やあやあ、今日もご苦労様。
この【山伏権現】の召集に応じてくれて嬉しいよ」
俺たちの前に現れたのはゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】だ。
山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。
基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めている。
「それにしても【東雲飛鳥】君と【霧咲朱芽】君が二人で仲良く女子会ランチをするなんて『面白い』こともあったものだね。
君たちは仕事上の関係止まりだと思っていたよ」
「ゲッ、なんで知ってんだよっつー話だ。
オメーがどこまで知っててどこまで見てたのか知らねーけど、セクハラだぞ」
「胡散臭さ極まれり……だな!」
「……」
俺と【東雲飛鳥】で【山伏権現】を責め立ててみたが、まぁお互いに戯れだと思って話しているのでこれ以上は発展しなかった。
【山伏権現】の情報網の広さについては今さらのことだからな……
ちなみに無言剣士こと【源流一刀斎】はいつも通り無言を貫いていた。
ほぼ話を無言で聞きに来てるだけみたいなやつだと皆認識してるので特に本人に言及もしてないけどな!
「それで、あれからボトムダウンオンラインの影響は外へ広がってないみてーだな?
あれから幾つか動いたんだっつー話なんだが……」
「【綺羅星天奈】くらいしか特に変わったやつもニュースに出てきてないしな……」
「それはそうだろうね。
この段階で適応できている方が特異だよ。
臨界点を迎えたと言ってもそれはまだ一部。
ここから影響力を強めていかないと魂と身体への透徹は難しいはずさ」
ふーん、【山伏権現】の認識でもそうなってるなら計画通りってわけか。
それならそれでいいんだがな……
てっきり遅れが出ているものだと思っていたぞ。
「さて、ボトムダウンオンラインの中で次が四週目の次元戦争が終わる。
そこが一つのターニングポイントになるよ。
だからこそ、君たちには更なる調整をしてもらう必要がある」
「これまでの対戦相手的にも次がこの周回の最後っていうのは分かってたけど、次元戦争もターニングポイントになるのか?
流刑次元のあのレイドバトルだけかと思ってたんだが?」
「あれはあれ、これはこれ……さ。
次元戦争は魂と魂の研鑽をする場であり、それでもって評価する場でもある。
その段階に応じてこれまで計画を修正、進行してきたわけだけど底下箱庭の環境に馴染んできたプレイヤーも多くいるからね。
オドとイドの作用を活用するにはちょうどいいのさ」
どういうことなんだ……?
「どういうことなんだっつー話だよ!
オメーの話はいちいち回りくどくて分かりにくいんだっての!」
「……?」
みんな俺と同じ感想を持っていたようだ。
【山伏権現】はわりと俺たちに配慮した話し方をしてくれてるとは思うんだが、急にそのブレーキが外れたように自分に陶酔した発言を連発してくるからな……
なんか大事そうな話をしてるな……くらいにしか分からないぞ!
「可処分できるリソースの再分配のために必要な評価にも使えるのもあるかな。
これまで割いていたものをまた少し統合することで計画は次の段階へと進むのさ。
君たちにはより外への闘争へと目を向けてもらう必要があるからね。
それに備えてもらうことにしようかな」
より外への闘争……?
別に俺たちはいつも争ってるから今さらの話じゃないのか?
「無知なのは大罪でもあるけど、その一方で美徳でもある。
それを踏まえた上でどのような反応を見せるのかというのを観測するのも『面白い』かもしれないね。
それをするためにもリソースはすぐに大量に補填される必要があるんだけど、限度がある。
だからこそ、次の次元戦争の結末を待つことがいるのさ」
そうして【山伏権現】は俺たちへのそれぞれの仕事の内容を説明し始めた。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】
1900話到達しました!
ありがとうございます