190話 詐欺に、脅迫、恫喝、誇大広告、窃盗
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日はプレイヤーキラーとして初心者狩りを満喫したなぁ!
……あっ、新人プレイヤーのクラン勧誘完全に忘れてたぁぁ!?
「やはり、劣化天子の【包丁戦士】はダメみたいですね……
なにせプレイヤーのフレンドすらまともに居ないですから。
そんな状態で新規プレイヤーを自分のクランに引き入れることなんてできるわけなかったですね?」
【菜刀天子】が煽るような上から目線で俺に突っかかってきた。
……だが、事実なんだよなぁ。
痛いところを突かれた俺は、思わず黙りこんでしまった。
「イベントの準備期間もそんなに長くないのですから、おとなしくメンバーを探してください。
全く、これだから劣化天子は……」
ふひひ、サーセンw
まあ、初心者狩りは昨日ある程度やったし、昨日の今日で警戒されてそうだからおとなしく行くか……
はい、というわけで今日も来ました草原エリア!
めぼしそうなやつを見るとしよう。
今日の俺はのんびりモードだ、草原に市場で買った布シートを敷いて優雅にくつろいでいく。
出発前に礼拝室で作ってきたサンドイッチを片手に、見張るのだ。
サンドイッチは、定番のタマゴサンドにミックスサンド、カツサンドなど用意してきたが、今回の目玉はこれだ!
次元戦争の時にこっそり【釣竿剣士】にいっぱい釣ってもらった溶岩魚をふんだんに使ったシーフードサンドだ!
今回は調理に時間をかけることができたから、溶岩魚を油で揚げて、それにすり身状にした溶岩魚の身をとろとろっとかけたソースをかけてある。
燃えるような赤い身が俺に食べてくれと言っているようだ!
宝物庫機能を完全に悪用したアイテムの持ち帰り方だったから、そんなに推奨されたものではないが、イベント限定素材を使った料理を作る機会をみすみす見逃す手はない!
天子の特権で、宝物庫の入口、扉の前で検索をかけて中のものを持ち出せるので俺が入れたものに関しては中に入らなくてもすぐに取り出せたりする。
流石に他のやつが入れたものは得たいの知れないものがあったりするから迂闊に触れないようにはしてたりする。
知ってるものとかだとこっそり拝借してるけど。
さーて、いただきまぁ……
「美味しそうッスね!!
これもらうッス!」
ああっ!?
俺の特製サンドがぁ!?
俺が今にも口に入れようとしていた特製溶岩魚サンドは、唐突に現れた男子学生っぽい雰囲気のプレイヤーに取られた。
いや、置いてあったのならともかく百歩譲るとしても、俺が手に持ってたものを引ったくるのはおかしいだろ!?
「あっ、つい癖で……
すみませんッス!」
癖でってなんだ癖でって!?
普段から盗みでも働いているのかこいつは……
そう思った俺は、特製溶岩魚サンドをひったくったやつの姿をじっくり観察する。
前髪が隠れていて、目の辺りが陰になっていて見えないな……
いかにもモブっぽい見た目……というよりは露骨過ぎてむしろギャルゲーの主人公なんじゃないかと思える顔立ちだ。
服装は初心者プレイヤーの例にたがわずタンクトップだが、それなりに筋肉などあるようで、ちらちらのぞいている肌が隆起しているのをまじまじと見てしまった。
歳は……見た目と雰囲気からして高校生くらいか?
「正解ッス!
こう見えても筋トレも頑張ってるッスよ!」
いや、そんなこと聞いてないからな?
だが、年齢は当たっていたようだ。
「あっ、ご馳走さまッス!
このフライサンド、最高ッスね!
噛むたびに、中から溶岩が流れるみたいに旨味がどろどろと出てきて感動したッス!」
うわっ、俺が食べ損ねたサンドの感想をメシテロするかのように食レポしないでくれ……
いちいち癇に障るやつだな?
それで、どう落とし前つけてくれるんだ?
「えっ、お金とか持ってないッスよ!?
このゲームはじめてログインしたばかりッスから!?」
まあ、そうだろな?
それなら、1つチャンスをやろう。
俺はそんなことを口にしながら、懐からコインを取り出す。
このコインを俺から奪えたら、さっきのことは水に流してやろう。
このコインで特製溶岩魚サンドを買ったってことにしてやる。
だが、失敗したら……
「失敗したら何があるッスか!?」
まあ、失敗したら話してやろう。
「それは普通に怖い条件ッスよ!?
こっちが不利じゃないッスか」
それは当たり前だろう。
お前が俺の特製溶岩魚サンドを盗んだんだからな。
むしろ、許してやるチャンスをやるって言ってるんだ、感謝こそされても恨まれる筋合いはない。
「ううっ……
可愛い見た目して鬼畜ッスね」
うるさい!
ごたくはいいから、やるのかやらないのか、どっちだ。
「どっちにしても選択肢はないようなものッスからね……
やるッス!」
いい返事だ。
それならよーい、スタート!
俺はスタートの合図と同時にコインを胸元に隠す。
そして、まずは走って距離を取っていく。
初心者プレイヤーが俺の動きについてこれるかな?
「えっ、どこ行くッスか?」
そりゃ、コイン盗られないように逃げるだろ。
まさか逃げるのは無しとか言わないよな?
「そういうことじゃないッスよ?
コインならほら、もうここに」
そういうと、いかにもモブっぽい見た目の初心者プレイヤーは手元からコインを出して、少し離れた俺に見せてきた。
えぇ……?
コインならたしかに胸元にしまったはず……
そう思い断崖絶壁の胸元とガサゴソと漁るが、さっき胸元入れたはずのコインがない。
ということは、あいつが手に持っているコインは俺が持っていたやつなのか。
「これで許してくれるッスよね?
それじゃ、この辺でお暇するッスよ!」
そう言って去ろうとするモブっぽい見た目の初心者プレイヤーの手を掴んで、この場に引き留めた。
お前、何をしたのか知らないが中々やるじゃないか。
その盗みの腕を見て気が変わった、許してやる代わりに俺のクランに入れ!
なぁに、俺はトッププレイヤーと呼ばれてるくらいこのゲームに精通している。
それに、俺はPVPイベントでも優勝するくらいの腕前だ。
入って損はさせないさ。
何も悩む必要は無いくらいいい条件じゃないか!
さあ、ほら入るんだよぉ!
俺はモブっぽい見た目の初心者プレイヤーの手を勝手に操作して、俺が送ったクラン加入申請依頼を強制的に受諾させた。
「ええっ!?
俺っちクランに加入しちゃったッスか!?
まだゲーム始めたばかりなのに……」
時すでに遅しだ。
なんだかガックリしている男を見ながら俺はほくそ笑んでいた。
これでイベントで手足のように動かせる駒ゲットだぜ!
詐欺に、脅迫、恫喝、誇大広告、窃盗と犯罪のオンパレードですね……
これがおとなしくしていた結果ですか?
【Bottom Down-Online Now loading……】




