1896話 封殺ブーメラン
「【マキ】っち、【キズマイナ】を出来る限り引き付けておいてね!」
「了解だよ~
【ファインド】のところへは通さないからね~!」
【マキ】と【ファインド】の掛け合いは流石だな。
蛇腹剣次元の中でもこうやって息を合わせながらイベントやレイドバトルをクリアしてきたのだろうと想像しやすいぞ!
「ではブーメランでの援護をお願いしますねぇぇ!」
そして敵対する【キズマイナ】の号令によって骸骨兵がブーメランの投擲を行ってきた。
それが弧を描いて【ファインド】へと飛んでいったが、【マキ】が守ろうとした。
……が、【キズマイナ】も同時に攻めてきていたので【マキ】はそちらへの対処へ向かわざるを得ないのでブーメランは野放しになってしまった。
「え~、【マキ】っち!?
私ピンチなんだけどっ!?」
「無理なものは無理だよ~
【キズマイナ】を放置した方が被害が大きくなっちゃうのはうちでも分かるよ~!」
そりゃそうだな。
ただのブーメランとチート勇者、どちらが優先的に対処しないといけないのかは一目瞭然だろう。
【ファインド】は自分が襲われているのと、焦りもあって冷静に対処できていないが包丁次元でもモブプレイヤーだけでなく2つ名持ちプレイヤーでもこの辺りの判断を誤ることはあるので仕方ないだろう。
その一方で【マキ】は幼いながら流石MVPプレイヤーだ、2つの脅威に対して的確に対処できている。
こういうところでも才覚の差が明確に現れるのだろうが、こう見るとMVPプレイヤーは頭のネジが別方向に締まっている気もしてきたな……
……っと、そろそろ【ファインド】を助けてやるか。
スキル発動!【塞百足壁】!
俺はメイド服をはためかせながら手を【ファインド】の方へと伸ばして方向を合わせて黒壁を生み出していった。
ブーメランの威力自体は予想通り壁で防げたみたいだな。
「【包丁戦士】っち、助かったよ!
今度はこっちから反撃しないとね。
お返しだよっ!
スキル発動!【蛇眼閃光】!」
【ファインド】は再び双眼鏡を覗き込み、そこから経由して目から太いビームを放っていった。
狙いは……骸骨兵か!
「そのビームは切れるってさっき見せましたよねぇぇ!
骸骨兵をむやみやたらに倒されるわけにもいきませんので守らせてもらいますよぉぉ!」
【キズマイナ】が【マキ】や【ファインド】への攻撃を中断して骸骨兵とビームの間に割って入ろうとしていたが……
「逃がさないよ~!
うちの巻きつけで止めちゃうよ~!」
【マキ】は蛇腹剣と化した下半身を【キズマイナ】の足に巻きつけてそのまま動きを妨害していった。
当然【キズマイナ】の身体スペックならそれを引き摺ってでも前進するだけの力はあるんだが……
そこは俺の出番ってわけだ!
スキル発動!【塞百足壁】!
ワンパターンと言われてしまうかもしれないが、今のデカブツムカデメイド服フォームだとこれが最善策だからな!
このスキルにとことん頼らせてもらうぞ。
そんなわけで【キズマイナ】の前に黒壁を何枚か生み出して移動の勢いを殺していった。
【マキ】に巻きつかれていたこともあり微妙に間に合わず、骸骨兵はそのまま【ファインド】のビームで撃ち滅ぼされていった。
連携の勝利だな!
「ふひひっ、貴重なリソースを使ったのにすぐやられてしまいましたねぇぇ……
やっぱりMVPプレイヤーが二人もいる戦場ですと無強化の骸骨兵一体では荷が重いですねぇぇ……
あてぃしもスキルをほとんど縛って戦っているのですけど、それでも苦戦させられてますよぉぉ!」
そう言われてみるとそうだな。
まだこっちは一人もやられてないし。
「ふひひっ、【勇者】として一対一での対人戦は慣れてきましたけど、相手が連携を取ってくる場合の練習はほとんどしてきませんでしたからねぇぇ……
してきても戦闘に自信がないプレイヤーたちが集団で挑んできた時くらいなので練習相手としては微妙でしたしねぇぇ……」
単純に練習不足か。
それなら仕方ないな。
メインで戦闘練習をする場である闘技場の仕様上、自然とそうなってしまったのだろう。
強くはなったが、偏りがあるのはいただけないな……
「それでも負ける気はしませんけどねぇぇ!
少しずつこの三人を相手にするのも慣れてきましたからぁぁ!
ここからあてぃしの本領を発揮させてもらいますぅぅ!
さっきまでとは同じ様に行くとは思わないでくださいねぇぇ!」
おっ、急に気迫が増してきたな!?
ここまで勝ち気があるやつだったのか!
負けませんよぉぉ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】