1895話 陰湿なアシスト
俺もそろそろ前線に乱入してくるか!
スキル発動!【深淵纏縛ЩЩ】!
俺はデカブツムカデの深淵細胞を励起していき、そのまま身体と衣装を深淵で作り替えていった。
すると身長が伸び、服装もメイド服へと変化していったぞ!
俺が持つ変身スキルの中で唯一身長が変わるという特殊なものだ。
そしてこの姿で放つスキルといえばこれしかないよなぁ!
スキル発動!【塞百足壁】!
俺は深淵の黒い壁を生み出し、【キズマイナ】が移動しようとした先へとあらかじめ設置することで視界を封じつつ、機動力も削いでいくことにした。
どうせ火力勝負なんてしても勝ち目がないからこういった搦め手で行動を制限してチャンスを窺うわけだな!
「【包丁戦士】さんらしい嫌らしい立ち回りの仕方を選んできましたねぇぇ!」
【キズマイナ】側からもやはり地味にこの妨害が効いていることの言質が取れたな。
だが……
「ですけど、あてぃしならこの壁を一刀両断出来るんですよぉぉ!
だから進路の妨害はともかく、防御には適してないですねぇぇ!」
【キズマイナ】はそう言いながら俺が出した深淵の黒壁を切り捨てて、そのまま真っ直ぐ走ってきた。
確かに壁を避けてくるか、剣で切るかだとどちらにしても動作が追加で必要になるから動きを増やせるので時間稼ぎには適してるが、ああやって切られてしまうなら差し込みで防御するには向いてないな……
「【包丁戦士】っち、私の魔眼の射線が塞がると何も出来なくなっちゃうから壁を作る時は注意してね!」
おっと、そうだったそうだった。
俺の仲間で魔眼専門の使い手は居なかったからあんまり意識してなかったぞ……
「ついでにスキル発動!【彩鳥炎眼】!」
【ファインド】が次に放った魔眼は望遠鏡次元のMVPプレイヤーである【牛乳パフェ】も使ってきていたやつだ。
相手に火傷、延焼状態を付与するものだな。
だが、勇者相手に効くのか……?
「……それが、一応効くんですよねぇぇ!
ダメージ量はかなり低めですけどぉぉ!」
へー、そうなのか。
これは地味に助かる情報かもしれない。
もしかしたら【ランゼルート】にも効くかもしれないってことだからな。
とはいえ【キズマイナ】は【底骸剣デュラ】で防いでいたけどな……
「うちも負けてられないよ~!
スキル発動!【潜蛇影手】!」
【マキ】は右手を動かしながら影蛇を地面に這わせて操作していき、そのまま背後へ回らせようとしていた。
だが、そのままだと躱されるだろう。
だからこそ、ここで俺の出番だよな?
スキル発動!【塞百足壁】!
俺は影蛇がギリギリ【キズマイナ】の視界から消えるように黒壁を生み出していった。
その結果……
「これであてぃしが一発攻撃を受けてしまいましたねぇぇ……
まさか【包丁戦士】さんの壁で死角を作ってくるなんて、予想外でしたよぉぉ!」
ダメージ量としては微妙過ぎるが、それでも一撃は一撃だ。
【キズマイナ】に勝つために必要なら三回の被弾のうち一発をこの時点で与えられたというわけだな!
「変態お姉さん、ナイスアシストだよ~!
こんなことも出来たなんて多芸だね~!」
「【包丁戦士】っち、得意なのは近接攻撃とかだと思ったんだけど意外だね」
まぁ、遠隔設置自体はそんなに得意じゃないんだけどな。
今回の場合も【ランゼルート】相手だったら多分通用してないだろうし。
あくまでも【キズマイナ】の近接戦闘適性とか、戦闘経験の差で苦手そうなポジションを読んで事前設置しただけだぞ。
これが【トランポリン守兵】お嬢様辺りだったらリアルタイムで動かしまくってクリーンヒットまで持ち込めただろう。
「流石にそこまでは誰も求めてないと思いますけどねぇぇ!
【包丁戦士】さんレベルでもかなり高レベルなところにいると思いますよぉぉ!」
「本人の自覚してるレベルと実際のレベルが違うことってあるもんね~」
なんか自虐したと思われて擁護されてしまった。
別にそんなつもりは無かったんだがなぁ……
まぁ、優しくされたなら大人しく受け取っておこう。
ここで否定するのも馬鹿らしいし。
「それならそろそろあてぃしも一つくらいはスキルを披露しましょうかぁぁ!
手の内をあまり晒したくないと思っていましたけど、この辺りなら問題ないですよねぇぇ!
スキル発動!【想起現像】!
ability発動!【粉骨再身】!」
ここで【キズマイナ】は戦闘のギアを上げてきたようで、頭数を揃えるために一体の骸骨兵を自身の横に呼び出していった。
手に持っているのは……ブーメランか!
ということは【ブーメラン冒険者】辺りから持ってきた骨粒を利用したのだろう。
「遠隔アシストが入るようになるのは厄介だね?
【包丁戦士】っちはあれを防げるかな」
あぁ、任せろ!
【キズマイナ】本人の攻撃ならともかく、骸骨兵の攻撃なら俺でも対処できるはずだからな!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】