1894話 ビーム断ち
「ふひひっ、ようやく喋れましたぁぁ!
ルールは体力が0になるか、攻撃を三回被撃したらリタイアということにしておきましょうかぁぁ!
そうしないとあてぃしの体力が多すぎて三人で挑むだけでは勝ち目がありませんからねぇぇ!」
随分と上から目線だが、実際底辺種族の長である【勇者】に就任していることもあって【キズマイナ】のスペックは通常のプレイヤーから並外れた状態になっているので妥当な配慮と言えるだろう。
闘技場だからギリギリの勝利条件を設定することで観客を湧かせる必要もあるからな。
その辺りを弁えての提案だろう。
本格的に【キズマイナ】を討伐するならともかく、今は練習なのでそれくらいの勝利条件がハードル低めで助かるぞ!
「低めと言ってもノルマが低くなっただけで攻撃力や防御力、素早さみたいなものは軒並み据え置きですよぉぉ!
ここを変えると仮想敵である【ランゼルート】対策になりませんからねぇぇ!」
あぁ、それは俺も含めた三人承知の上だ。
加減はいらないぞ?
「【キズマイナ】との対戦、【マキ】っちも【包丁戦士】っちも気合い入れていくよ~!」
「変態お姉さん、頑張ろうね!」
よっしゃ、試合開始だっっっ!
【Duel start】
「うち……【マキ】の友達と一緒に頑張るよ!
スキル発動!【真名解放】ー【修練武器超位解放】ー【湖奼姤之蛇】!」
【マキ】はそのかけ声と共に身体をチュートリアル武器の蛇腹剣と融合させていき、安寧村ジャバラケンのダンジョンで戦ったレイドボスである【怠惰なる妖蛇女】に似た姿……つまり上半身が【マキ】のままで下半身が蛇のような姿になっていたのだ!
しかも、蛇部分はよく見ると全て蛇腹剣が数珠繋ぎのように連なっており、刃物で構成されているというわけだ。
「これが外部プレイヤーによる【修練武器超位解放】ですかぁぁ!
中々興味深いものがさっそく見れましたねぇぇ!
ですが、それであてぃしの攻撃を防げますかぁぁ?」
「うわっ、【マキ】っち助けてっ!
このままだと私は何もせず死に戻りしちゃうよ」
「うちは蛇腹剣次元の守り手だからね~!
防御は任せてよ~」
【キズマイナ】は【マキ】の変身を察知した瞬間動き始め、後方へと密かに立ち位置を動かしていた【ファインド】を真っ先に始末しようとしていた。
だが、その間に【マキ】は蛇腹剣と化した下半身を割り込ませて剣を受け止めていく。
「なるほど、下半身が丸々チュートリアル武器扱いになっているんですねぇぇ!
そうじゃないとあてぃしの……【勇者】の一撃は受け止められませんからぁぁ!」
「うぐぐっ、一撃が重すぎるよ~!
足(?)がビリビリ痺れるよ~!」
【マキ】は攻撃を受け止めることには成功したみたいだが、【キズマイナ】の力を全て受け流せたわけじゃないみたいで攻撃の衝撃が身体に伝わってしまったようだ。
それでも部位的にはチュートリアル武器扱いだからなのか、ダメージを受けている様子は無かったな。
地味にチートじみてる仕様だ……
「【マキ】っちが稼いでくれたこの隙に私が……
スキル発動!【蛇眼閃光】!」
このタイミングで後方まで退避が完了した【ファインド】が放ったのは【マキ】もよく使っている目からビームを放つスキルだ。
ただ【マキ】と違うのはチュートリアル武器の双眼鏡を使っているということだ。
そのお陰か、ビームの太さや速度が倍以上になっている気がするぞ!
「【マキ】っちの【蛇眼閃光】も種族転生補正で素より強化されてるんだけどね~
それよりもやっぱりチュートリアル武器の補正の方が強いみたいだよ。
まぁ、これ以外だと中々戦闘に使えないからそれくらい強くなってもらわないと困っちゃうけど」
それもそうだな。
チュートリアル武器といいつつ、武器じゃないし。
そんな【ファインド】の目からビームが【キズマイナ】へと向かっていったが……
「そういうのは真っ正面から使うものじゃないですよぉぉ!
そいっ!」
【キズマイナ】はスキルも使わず【底骸剣デュラ】を上段に構えた後、そのままビームを真っ二つに切り捨てていった!
素のスペックで強化されたスキルを越えてくるなよっ!
「ふひひっ、サーセンですぅぅ!
チート勇者らしく皆さんの前にドーンと立ちふさがってみたりしたかったんですよねぇぇ!」
いや、【キズマイナ】は別にチート使ってるわけじゃないけどな。
いわゆるなろう系無双勇者……みたいなことを表現したかったのだろう。
「【包丁戦士】っち!
あの勇者、私のビーム切ってきたんだけど!?
やばすぎない?」
「すごいね~!
本当に【ランゼルート】みたいだよ~」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】