1893話 AI別視と遊び
【Raid Battle！】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン！
昨日は蛇腹剣次元の【マキ】や【ファインド】と一緒に話し込んでいたな。
交流を深めるために何か一緒にしようという話になったのだが【ファインド】には何か案があるようで……
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルにある闘技場！
ここで俺たち三人はバトルフィールドに立っていた。
つまりなんだ、俺たち三人でバトルロワイヤルでもするってことか？
上等じゃないか！
「うーん、それもいいけどせっかくなら共闘して強敵に挑んでみたくない？
せっかく【マキ】っちも【包丁戦士】っちもMVPプレイヤーなんだから、次元戦争に備えて格上相手にタッグで戦う練習もいいよね」
はーん、なるほどな。
これまで巨大蛇みたいなレイドボス相手に【マキ】と共闘したことはあったが、プレイヤー相手みたいな練習はしたこと無かったな。
それで、【ファインド】が格上という相手は誰になるんだ？
トッププレイヤーたちでも連れてきたか？
「あいにく包丁次元のトッププレイヤーたちにはほとんど人脈がないから声かけも出来ないよ～
というより、人脈があっても私みたいな陰キャが声をかけに行けるわけないよね……」
【ファインド】は自称してるほど陰キャではないと思うが、その思い込みで行動力に制限がかかっているようだ。
過去のトラウマを振り切れない……みたいな感じか。
まぁ、そこは俺がどうこうする話じゃないからこれ以上は突っ込まないが……
それで、トッププレイヤーたちじゃないなら誰が相手になるんだ？
俺たちから見て格上のプレイヤーなんているか？
「【包丁戦士】っちは頭が固いね～！
私が選んだ対戦相手は……この人！」
【ファインド】がそう言いながら舞台袖から連れてきたのは骸骨のような意匠が所々散りばめられた鎧を着た女プレイヤー……そう、【キズマイナ】だった！
そういうことかっ！
確かに人型で、プレイヤーで、俺たち三人合わせても格上扱いできる相手だな。
「しかも次の次元戦争の対戦相手は多分順番的に聖剣次元になるんでしょ？
それなら【勇者】が練習相手ならちょうどいいんじゃないかなって」
それは名案だ。
だが、陰キャを自称してる【ファインド】が包丁次元でも特に目立つ存在である【キズマイナ】によく声をかけられたな？
「えっ、だってAIでしょ？
私にとっては特別な存在じゃないし、【マキ】っちや【包丁戦士】っちみたいなプレイヤーとは違うよ。
人じゃないなら人見知りもしないからね」
あー、なるほど。
そう言う認識になるのか。
ボトムダウンオンラインのAIは高度だからプレイヤーの中にはAIと人を同一視するやつもいれば、俺のようにAIと人を明確に区別した上で人に接するようにかかわり合うやつもいれば、【ファインド】のようにAIはAIとしてほぼ道具とか機関のような扱いをして別視しているやつもいる。
同一視するプレイヤーはごく僅かだが、【ファインド】のように完全に割り切った視点をするやつも中々珍しい。
人のように受け答えをしてきて、人のような姿をしている相手にそこまで言えるのは難しいからな……
だが、【ファインド】は陰キャを自称してることもありそこの認識の境界線をくっきり分けて、少しでも関わりやすい相手を増やしたかったんだろうな……
「えー！
勇者と戦えるんだ～！
しかも変態お姉さんや【ファインド】と組んで……！
戦う前から楽しくなってきちゃったよ～！」
【マキ】は意外にも戦闘狂みたいな好戦的な様子を見せていた。
面倒くさい～とか、勝てないよ～とか言うと思ってたんだがな。
「普通ならそうなんだけど、今回は仲良しな二人が仲間だからね～！
戦うだけでも充分に遊べるよ～！」
なるほど、遊びか。
そういう認識なら手強い相手に挑む方がやりがいがあるもんな。
なんとなくお前らのことが分かってきたするぞ！
ふひひっ、あてぃしは出てきたはずなのに何も喋れてないですねぇぇ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】
