187話 初心者狩り
はい、というわけでやってきました草原エリア!
うーん、どこを見てもキョロキョロしている初々しいプレイヤーがいるなぁ。
防具が初期配布のタンクトップだから視覚的にも分かりやすい。
ボマードちゃんは例外的に何故かタンクトップを愛用しているが、基本的に他のプレイヤーは別の防具に切り替えるから、消去法的にここにいるタンクトップを着たプレイヤーは初心者プレイヤーと見ても問題ないだろう。
そんな初心者プレイヤーたちを値踏みするように俺はジロジロと観察していたが、俺に向かって歩いてくる男集団が現れた。
いかにもチャラそうな見た目で大学生くらいのプレイヤーの集団だから、おそらくリアルのフレンドで一緒に始めた連中だろう。
このプレイヤーに人権のないゲームでは引退もそれなりに続出しているから、第2陣プレイヤー参入の時以来、久しぶりにこんな集団を見た気がする。
「君可愛いね!
俺たちこのゲームはじめたばっかりなんだ、もし良かったら手取り足取り教えてくれない?」
ナンパだったようだ、俺くらいの可憐な乙女ならあり得るとは思ってたが早速この手の輩が来るとは……
は?
嫌だが?
何を好き好んで初心者のチャラ男に絡みにいかないといけないんだ?
さあ、帰った帰った!
「……こいつっ!!」
「舐めやがってっ!!」
「やっちまおうぜ!
このチュートリアル武器ってやつでイチコロだっ!」
短気なやつらだな。
まあ、俺としては元々プレイヤーキラーとしてここに来てるわけだし、ちょうどいいか。
ここから初心者狩りの始まりだぁ!
連中の武器は剣、剣、剣、剣、剣、弓というなんともバランスの悪い組み合わせだ。
俺はまず厄介そうな弓使いの胸元に潜り込み、腰に提げていた包丁を手に取ると、刺突でクリティカルヒットさせて一人を光の粒子に変えて死に戻りさせた。
武器の扱いにも、死の感覚にも慣れてない甘ちゃんなんてこんなもんさ。
「!?」
「速いっ!?」
「よくもアッ……いや名前を言うと不味いんだったな……
よくも俺のフレンドをっ!」
おっ、【名称公開】のことをもう知ってるんだな。
前の時も検証班が新規プレイヤーが来た瞬間に一目散にそのことを伝える活動をしていたから、今回も総動員でそれをやってるんだろう。
使い物にならないプレイヤーが増えないようにという配慮だな。
だが、それを知ってるだけじゃこの局面では無意味だ。
俺はぎこちなく剣を構えるチャラ男の足元に潜り込み、アキレス腱を包丁で切り込む。
「痛ってぇぇ!?」
「痛覚までリアルなのか……」
「スゲェなボトムダウンオンライン……」
「そんなこと言ってる場合じゃないぞ、はやくそいつを止めろ!」
このゲームのリアルさに感心している連中だが、生憎それに付き合う義理はない。
俺は隣にいたやつのアキレス腱も流れ作業で切り裂いた。
このゲームに慣れているプレイヤーならアキレス腱が切れても何かしらの対応はできるんだろうが、こいつらはズブの初心者だ。
剣使いの二人はもう戦闘不能と考えていいだろう。
あと三人だ。
俺は、そのまま動揺している1人の首もとに狙いを定めて包丁を振り抜く。
慌てて剣で包丁の斬撃を防ごうとしているが、そんなんじゃ遅いぞ!
俺はさらに1人首から切断することに成功し、光の粒子へと変換した。
「このっ!?」
「んひっ……」
一人は怯えてるな、なら怯えてるやつから手っ取り早く始末するか。
俺は包丁のギミックを発動して鞭を出すと、怯えてる剣使いの手を巻き取りこっちへと力一杯引っ張った。
「うわっ、引っ張られるっ!」
抵抗こそあったものの、そのまま俺のそばまで連れてくることに成功した。
引っ張られてきたので、体勢も崩れている。
こんなチャンスがあれば余裕だ。
俺は逆風による切り上げで股から頭にかけて切り裂き、怯えてた剣使いを死に追いやった。
「切り裂きジャックかよ……
どんな身体の構造してるんだ……
だけど、仇くらいとってやるか!」
最後に残った戦える剣使いは上段からの切り込みをしてきた。
この動き……剣道でも齧ってるのか?
それなりには出来そうだが……
「面!」
動きが綺麗過ぎる!
俺は真っ直ぐな剣筋を読みきって回避すると、そのまま左横へ出て包丁を構える。
そして、包丁を振りかぶると十八番の袈裟斬りで左肩から右腰にかけて刃を肉にめり込ませた。
「ぐっ、プレイヤーキラーが……」
おいおいおい、先にそっちが手を出してきてそれは無いんじゃないか?
……まあ、手を出してこなくてもこっちからヤル気満々だったが!
俺は残っていたメンバー全員の息の根を止めるために首を落として死に戻りさせた。
「おいっあそこっ!?」
「喧嘩?」
「いや、ちげーよ。
あれはプレイヤーキラーだ!」
「初心者狩りってことね……
急いで逃げましょう!」
俺がチャラ男集団を倒しているのを見ていた他の初心者たちが、次々と逃げだしたり、俺に襲いかかってきたりし始めた。
そうそうそう!!!
こういうのを待ってたんだ!!!
お前ら全員俺の包丁の錆びにしてやるよぉぉ!!!!
これが悪質プレイヤー筆頭の包丁戦士……
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