186話 イベントフラゲと新しい風
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
久しぶりにログインしたような気もするけど、そんなことない。
「おや、ログインしましたか。
今日から第3陣プレイヤーたちが新規で包丁次元に入ってきますよ」
おっ、とうとう新規プレイヤーが来るのか!
前々から公式サイトで告知していたからそろそろだと思ってたけど、それが今日だったか。
「そうです。
第1陣で参入した劣化天子の【包丁戦士】、【風船飛行士】、【検証班長】、ボマード、【短弓射手】。
第2陣で参入した【釣竿剣士】、【トランポリン守兵】、【ペグ忍者】、【短剣探険者】、【ブーメラン冒険者】。
この辺りがプレイヤーたちに多く認知されていますが、第3陣プレイヤーたちはどうなることでしょうか……」
解説ありがとう。
俺は全く他人に興味がなかったから知らなかったが、トッププレイヤーって呼ばれてるやつとか、闘技場イベントで代表戦に出てたやつでも第1陣、第2陣ごちゃ混ぜだったみたいだ。
それだけ後からでも先行プレイヤーに追いつける仕様ってことだろう。
……良く言えばな。
実際には、第2陣が参入してきてもまだレイドボスが一体も倒せてなかった。グランドクエストも進行してなかった。
それにスキルも取得出来てなかった。
さらには、底辺種族はレベル上限が1という発展性のなさも合わさって、それぞれに差はほとんど無かったからな。
いわゆるクソゲーだ、流石はプレイヤーに人権のないゲーム……
だが、この第1.2陣プレイヤーと第3陣プレイヤーでは色々と差が生まれている。
スキルの慣れとか、個人でしか持っていないユニークスキルの登場、深度みたいなステータス、クランという集団の形成とか要素が増えてきてるからな。
この辺が問題か。
「その辺りを考慮して、次のイベントも告知します!
次回イベントは新規プレイヤー限定ダンジョンです。
クランにいる新規プレイヤーに武器、防具、アイテム、アクセサリーなどなどを作ってダンジョンに潜ってもらいましょう。
そして、そこで活躍した分クランに特典があります。
新規プレイヤーを甘やかしてこのゲームの沼にハメてください……という運営の意向です。
劣化天子や底辺種族の必死な接待プレイ、遠巻きに楽しませてもらいますよ」
うわっ、システム的な優遇じゃなくて俺たちに新規プレイヤーを囲い込ませる悪徳商法じゃないか……
既存プレイヤーをもっと大事にしてくれ……多少の飴はあるにしてもいくらなんでも投げやり過ぎないか?
そんなことを考えていたが、【菜刀天子】が異議を唱えた。
「いえ、実際にこの手法はそこまで的外れではないですよ。
どれだけシステム的な優遇をしても、疎外感や張り合いのなさを感じてしまえば辞めていくプレイヤーはいます。
ですが、頼れる先輩や仲間がいれば目標を持って続けられるようです。
だからこそ、今回はクラン対抗の新規プレイヤー囲い込みイベントですね」
へー、案外考えてるのな。
まあ、まともに戦えるプレイヤーが増えればレイドボス攻略のスピードも上がるだろうし、俺からしてもそんなに悪い話ではないか。
それに、初心者が一気に増えるということは定番のあれができる!!!
「あれ……ですか?
劣化天子の【包丁戦士】が意味深に言うと嫌な予感しかしないですが……」
失礼な!
俺がそんな嫌な予感に的中する行動をとるとでもいうのだろうか。
「いえ、とりますよね……
底辺種族の時からずっと悪い意味で期待を裏切られてきましたから」
酷い言われようだな。
まあ、俺がやろうとしているのは!!
初心者狩りだぁ!!
VRMMO、オンラインゲーム、では定番のやつだ。
プレイヤーキラーとしてこの初心者が一気に増えるタイミングでこれをやらない理由はない!
俺がプレイヤーキラーとして一躍有名(?)になったのは、第2陣プレイヤーが参入してきた時に同じように初心者狩りをしまくってたのもあるだろうなぁ……
歯応えのある相手もいいが、無双ゲームのように弱い相手をばっさばっさプレイヤーを切り捨てていく快感もこの上ない快楽に繋がるのだから。
俺の名前と姿を知らないプレイヤーからしたら、俺はただの可憐な乙女だからな、しれっと初心者集団に近づくことも容易い。
これが【槌鍛治士】みたいなガチムチおっさんだったら威圧感と違和感で物凄く警戒されたんだろうが、俺は見た目で得したな。
ともかく、新規クランメンバーを集めるのもいいが、それよりも初心者狩りを楽しむとしよう!
その中で面白そうなやつを見つけたら拉致していけばいいだろう。
歯応えのないやつをクランにいれても仕方ないし、初心者狩りは試験みたいなものとということにしておこう。
……そんな言い訳を考えながら俺はウキウキ気分で草原エリアへと向かうのだった……
えぇ……
物語だとかませポジションにされるキャラクターのやることですよ……
【Bottom Down-Online Now loading……】




