1859話 甦る想い出
「【包丁戦士】さんの【魚尾砲撃】を一瞬横に凪払うようにして使ってもらえませんかぁぁ?
あてぃしのスキルのクールタイムが明けるまでに横範囲で近寄ってくるゾンビをこのままだと捌ききれないですぅぅ!」
【キズマイナ】の底辺スキルは強力な割にはクールタイムは短めなようだが、それでも繋げて連続出来るほどではないようだ。
本当は同じ勇者の【ランゼルート】のように複数スキルを駆使できるといいんだが……
???
いや、待てよ?
ゾンビが消えた瞬間にあれを【キズマイナ】が使えばいいじゃないか!
これまではスペースが全く無くて俺も【キズマイナ】も使う選択肢から自然に外してしまっていたのだが、今は多少捌けてきてるしアレの使い時だろ!
「アレ……?
ああっっっ!
【包丁戦士】さんが事前に言ってたアレですねぇぇ!
それだったらこのタイミングで使えますよぉぉ!
ゾンビが湧く前にさっさと使っちゃいますねぇぇ!
スキル発動!【想起現像】!
さらにability発動!【粉骨再身】んん!」
【キズマイナ】は【骨笛ネクロマンサー】時代(?)によく使っていた骸骨兵を生み出すコンボを始動させていった。
それによって10体ほどの骸骨兵が生まれて、俺と【キズマイナ】だけではカバーしきれなかった方向から攻めてくるゾンビたちと対峙していく。
「さらにこれで強化しますよぉぉ!
スキル発動!【堕音深笛】!」
【キズマイナ】は【底骸剣デュラ】を一部を口で咥えながら演奏を開始していく。
するとガシャドクロの形をした深淵の黒い霧が骸骨兵たちを覆っていく。
一見するとただの目眩ましのように思えるかもしれないが、それは大きな間違いだ!
深淵の黒い霧が晴れると、骸骨兵たちは強化外骨格を身に纏い近接戦闘にもしばらく耐えられるくらいには強度を上げていた。
「それだけじゃないですよぉぉ!
昔は偶発的にしか出来ませんでしたが、今は意図的にこのトリガーを引けますぅぅ!
包丁骸骨兵とフランベルジェ骸骨兵よ、今こそ真の力を発揮してくださいぃぃ!
【上位権限】ー【Remember memory】!」
【キズマイナ】が発動した【上位権限】によって、包丁骸骨兵とフランベルジェ骸骨兵は外骨格からさらに数段上の強化形態へと変貌していく。
包丁骸骨兵は俺が黒色の麦わら帽子とワンピースを着たような姿へ。
フランベルジェ骸骨兵は金属鎧を着た騎士風の姿へ。
そう、こいつらは【フェイ】と【フランベルジェナイト】と瓜二つの骸骨兵へと成ったのだ!
「我がこの場に呼び出されたということは、フェイの危機だということか。
矮小十把が相手のようだが、この我が塵芥と化してやろうではないか!」
「ふ、【フランベルジェナイト】さん……
い、いつもよりワイルドでこの様子も素敵です……っ!
わ、私も【フランベルジェナイト】さんの力になれるように頑張ります!」
おー、しかも姿だけじゃなくてきちんと喋るのか。
これは以前にも深淵奈落にある深淵機構でレイドボスと戦っている時に【キズマイナ】がやったことのある現象で、この二人も過去に骸骨兵から成ったことがあるラインナップだ。
【フランベルジェナイト】は本来の【ガルザヴォーク】としての人格が表層に出て来てしまっているようだが、自我を失っているわけじゃなくてきちんと俺や【フェイ】を認識しているのできちんと【フランベルジェナイト】だろう。
「「スキル発動!【深淵纏縛Л】!」」
【フェイ】と【フランベルジェナイト】は同時に【深淵纏縛】を使って漆黒の甲冑に身を委ねていった。
いや、【フランベルジェナイト】は分かるが【フェイ】も【深淵纏縛Л】かよ!?
「ふ、【フランベルジェナイト】さんと私は一心同体のようなものですからね……
お、同じように動けるのも、当然です……」
「さあ、フェイよ!
我と共にこの覇道を往こうぞ!」
「「スキル発動!【覇道竜陣】!」」
二人は周囲を黒炎で焼却していき、ゾンビたちが湧いてきては都度焼かれるというループに陥るようになったぞ!
……まぁ、ここまでの火力だからそんなに長くは持たないだろうが、少しでも時間を確実に稼げるのはデカイな。
【キズマイナ】、この間に底辺スキルのクールタイムを両方とも明けさせられるようにしておけよ?
しばらくは【フェイ】と【フランベルジェナイト】の後ろを着いていって進ませてもらえば俺たちはしばらくリソースを温存できるわけだから無駄遣いはするなよ!
「分かってますよぉぉ!
そのために骸骨兵たちを呼び出したんですからねぇぇ!
せっかく溜め込んでいたリソースを放出したのは辛いですけど、使わなかったら宝の持ち腐れですからとっておきを使わせてもらいましたよぉぉ!」
それは助かる。
勇者になってからそこまで日が経っていない【キズマイナ】のリソースはわりとカツカツだろうが、それでも協力してくれたことには感謝しておこう!
私にも感謝しなさい。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】