1848話 悪意の常套手段
「その大口に私が……この【エッジ】が付き合うとしよう。
……はぁぁぁっ!」
【エッジ】が槍を突きだし、【フランベルジェナイト】がそれを剣で受け止める。
これまでのように躱せば良かったはずだが、あえてそれを受け止めた理由は……
「フェイちゃんの軌道上に俺を誘導していたんだね。
本来なら避けられたし、受け止める必要がないと分かっていたのに本能的に動いてしまったよ。
俺とフェイちゃんの関係を見抜いた上で利用してきたね?」
いや、俺と【フランベルジェナイト】にそんな深い関係は無いからな!?
【フェイ】とは関係があるかもしれないが……
とはいえ、俺がここに立っていることを利用するとは流石だな。
俺が見込んだ人材なだけある。
「躊躇なくこれをやってきたということはこの手段を使うことに慣れているわけだ。
ということは少なくともただの戦闘集団というわけじゃなさそうだね」
「ご明察。
……クラン【マリシャス】は大手を振って歩けるような集まりではないのだ」
そういうわけだな。
これは俺も知っている、申し込みに来たときに前提条件として教えてくれたからな。
「クラン【マリシャス】は集団でのプレイヤーキルを狙うための悪意の傭兵団のようなものだ。
……安全圏からターゲットを狙うためのチュートリアル武器槍統一パーティーでもある」
「そういうわけだったのか。
個人個人の戦闘能力はそこまでだったけど、君の指示に対しての行動へ対応がスムーズだったからいびつだと思っていたのだけど、納得出来たよ」
「プレイヤーキラー集団ッスか。
先輩が連れてくるのが納得できる内容ッスね」
【バットシーフ】後輩や【フランベルジェナイト】が納得してくれたようだが、やはり今の【コラテラルダメージ】には纏まった戦力が足りてないと感じていたからな。
俺や【フランベルジェナイト】みたいな謂わば『突出した戦力』は二人いれば現状は何とかなるからな。
他のクランも似たような数だろうし、大将首を押さえるなら確保に急ぐ必要はない。
だが、集団戦闘になると話が変わってくる。
現状、数は【ハリネズミ】たちで補ってきていたわけだが、他のクランが一気にクランメンバーを増やしてきているから【ハリネズミ】だけでは対処は難しい。
……というより今も【ハリネズミ】たちで捌ききれていないな。
だからこそより不足に感じてしまっているんだろう。
「フェイちゃんは俺たちのことを考えて連れてきてくれたんだね。
今の戦闘を通して何となくクラン【マリシャス】のスタイルも分かったし、決着はついてないけど俺は賛成するよ。
ここまで考えてくれたフェイちゃんの顔に泥を塗るわけにもいかないしね」
おお……!
あそこまで敵意を剥き出しにしていた【フランベルジェナイト】が賛成してくれたか!
やっぱり肉体言語は全てを解決してくれるってわけだな!
「ガハハ!!!
ワシはお前の決めた意見は全て尊重すると決めているからな!!!
同じく賛成しておこう!!!」
【槌鍛冶士】も流れで賛成してくれたか。
この流れだと……
「私も賛成ですよ!
いや~、今のままだと【包丁戦士】さんの負担が大きすぎますからね!
私で補えないところをカバーしてくれるメンバーは大歓迎ですよ~!」
ボマードちゃんも賛成。
ボマードちゃんが反対するのはあんまり考えられなかったから既定路線だな。
「俺っちも賛成ッスね。
元々悪評の強いクランッスから他のプレイヤーキラー集団が入ってきたとしてもそこに気にするのは今さら感があるッスから!」
【バットシーフ】後輩も賛成してくれた。
まぁ、コイツと俺は指名手配犯同士だし、悪寄りのプレイヤーへの忌避感は少ないのは知っていた。
その部分を気にするようなやつじゃないので問題なしだ!
「「「……まぁ、いいですよ」」」
問題はコイツらだな。
とりあえず賛成してくれたので一応加入は決定したが、不服そうな顔のメンバーもちらほらいる。
【ハリネズミ】たちと被る立場ということもあってか、自分達の立場が脅かされることを懸念しているんだろうか?
それは元々懸念していたからこの場で反対されることを考慮していたので、むしろ弱めな反応で驚いたくらいだがそれでも案の定いい顔はしてないようだ。
この辺はまた別の機会で何とかしておかないとな。
今はまだ大丈夫だったとしても後々クラン内で亀裂を生む要因になりかねないからな!
包丁次元内でも似たような理由で崩壊したクランは幾つもありますからね……
劣化天子も気をつけることですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】