1836話 共鳴する先達
「待たせたよ~!
これでうちのさいきょ~スキルのお披露目だよ~!
スキル発動!【修練武器超位解放】ー【湖奼姤之蛇】!」
【マキ】はそのかけ声と共に身体をチュートリアル武器の蛇腹剣と融合させていき、安寧村ジャバラケンのダンジョンで戦ったレイドボスである【怠惰なる妖蛇女】に似た姿……つまり上半身が【マキ】のままで下半身が蛇のような姿になっていたのだ!
しかも、蛇部分はよく見ると全て蛇腹剣が数珠繋ぎのように連なっており、刃物で構成されているというわけだ。
その刃物の蛇足部分で【師匠】の胸を貫いており、【師匠】の身体の内側から急激に光の粒子が漏れ出はじめた。
「その姿は【顕現権限】スキルでもない……プレイヤーの新たな可能性であるか!!!
儂が不意を突かれるのは【包丁戦士】くらいしかいないと思っておったが、お前さん……【マキ】に背後から貫かれるとはな……
【憂鬱】ではいられぬほどの存外の体験をさせてもらったわい」
大ダメージを受けて命が尽きようとしているのにも関わらず【師匠】はこれまでに見たことがないくらい満足げな顔をしていた。
相手にならないと頭からも忘れていたかのような相手である【マキ】が必勝のタイミングまで奥の手を隠し持っており、その奥の手がこれまでどのプレイヤーも見せてこなかった新たな力の可能性ということで新時代の人間への希望を見出だしたのだろう。
まさか自分から【憂鬱】で居られなくなったと宣言するくらいだからな……
「だが、このまま儂がやられてしまうには惜しい。
せめて目の前の……据え膳食わぬは男の恥というわけだ。
ふふふ、久々に昂ってしまう。
【憂鬱】になってから使えなくなっておったはずの元素が集まってきおった!
これならば、共鳴釣竿一刀流が使える哉。
いざ往かん!
聞くがよい、海神の歌を……!
共鳴釣竿一刀流【海神之交響】!」
ここで【師匠】が死に体で使ってきたのは秘伝釣竿一刀流でも、天候釣竿一刀流でも、憂鬱釣竿一刀流でもない初耳の……共鳴釣竿一刀流だった。
【師匠】はそのまま波を表現するように手に持った釣竿を揺らめかせると、俺たち全員の頭上に水のバルーンを生成してきたのだ!
そして、次の瞬間……
破裂していき、水飛沫が飛び散っていった。
俺は【師匠】と共に至近距離で被弾してしまい、全身が吹き飛んでいってしまった。
道連れってやつだな。
そして【湖奼姤之蛇】と成った【マキ】は……
「変態お姉さんも【師匠】もうちの今の状態を分かってなかったみたいだね~!
このボトムダウンオンライン最大の特徴を忘れちゃってるのかな~?
チュートリアル武器は壊れないんだよ~」
「……天晴れ」
そ、そんなのアリなのかよ!?
そんな叫び声を上げながら俺は死に戻りしていった……
その後、俺が翌日ログインした時には下記のようなアナウンスが脳内に鳴り響きはじめた。
あの後俺が死に戻りして包丁次元に戻されてからすぐに流れなかったということは釣竿次元のプレイヤーの生き残りが実はまだ居たということだろうな。
それでそいつと戦って何とか【マキ】は勝利を納めることが出来たわけだ!
お手柄だな!
【ディメンションバトル】
【包丁の煌めき】
【蛇腹剣の丸呑み】
【釣竿の折れ】
【アンカーの漂流】
【【包丁次元】【蛇腹剣次元】WIN!】
【【包丁次元】が1位次元の勝利特権で【釣竿次元】と【アンカー次元】のリソースを吸収しました】
【【釣竿次元】と【アンカー次元】の一部エリアの規模が最低限まで縮小しました】
【【アンカー次元】が7位に降格しました】
【【蛇腹剣次元】が6位に昇格しました】
【【釣竿次元】が4位に降格しました】
【勝利報酬は王宮にて選択してください】
【【包丁戦士】に貸与された暴食の力が返還されます】
【【包丁戦士】に貸与された正義の力が返還されます】
今回は蛇腹剣次元のプレイヤーに助けられた形になりましたね……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】