1833話 防戦一方
【師匠】は片腕を失ってしまい二刀流の継続が困難になったからか、釣竿一刀流【二本晴】を解除していた。
動作のことを考えると釣竿一刀流【雨乞】も弓矢を引く動作が必要になるから使えなくなっているはずだ。
この2つを封じられただけでもかなりデカイが……
もしかすると他にも使えなくなっている釣竿一刀流の技もあるかもしれないと期待しておこう。
「期待しているところ悪いが、使えない釣竿一刀流の技を除いてもお前さんには勝てるのだ。
生産的人間は手元に残された手段だけで最善の道筋を辿るというもの……
それをお前さんに見せておこう。
釣竿一刀流【憂鬱三ノ型ー憂イノ雷】」
【師匠】は釣竿を片手で上空へと掲げると、それに呼応して空から雷が降り注ぎはじめた!
それ、上からの攻撃を警戒しないといけなくなるからやめて欲しいんだがっ!?
「ふむ、そうは言いながらも落下点を見据えて見事に回避しておるな。
回避についてはお前さんの右に出るものはそうはおらんて」
それはどーも!
【師匠】は雷を避ける俺のことを称賛してくれたが、これはトレジャーハンターとして活動していく上で磨かれた身体の使い方と感覚だからな……
ある意味ではゲーム外で異能力を鍛えた【師匠】と同じ土俵にある技術だ。
培っていた期間が長いものを誉められるのは悪い気はしないぞ!
「だが、そう躱しているだけでは埒が明かない……というのは無用なアドバイスになってしまうか?」
まぁ、俺の戦闘スタイルが躱して攻撃の機会を窺うものだからな。
これに関しては【師匠】よりも得意の可能性がある。
【師匠】はそれが分かっていて無用なアドバイスになると言っているのだろう。
俺に攻撃の迫力はないが、こういったところでは向こう側からもある程度敬意を払ってくれているようだ。
実際、前の5次元合同の次元戦争では回避からの暗殺ムーヴで【師匠】を追い詰めたからな!
……まぁ、その時は【師匠】一人に対して俺たち側はMVPプレイヤー三人だったわけだけど。
だが、【師匠】の言うように躱しているだけでは事態が好転することはない。
幸いにも俺の今の姿はルル様のゴスロリフォームだ。
手札は色々と使えるのでそれを駆使して状況を打開していくことにしよう。
まずは……これだな!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺は誰の目にも分かりやすいような極太レーザーでの攻撃を選んだ。
これで【師匠】を吹き飛ばせたら話は早いんだが……
「目の前でそのような真っ直ぐな軌道の攻撃をされても儂には当たらぬぞ?」
余裕綽々といった様子であっさりと躱されてしまった。
まぁ、これで当たってくれるようなら苦戦はしないので当然の結末だ。
だがこれは俺の狙いじゃない。
「ぬっ、レーザーを推進力にして回避スピードを上げておるのか。
これでは雷が追いきれぬな……」
そう、俺の進行方向とは逆に【魚尾砲撃】の極太レーザーを放つことでジェット噴射のようなことが出来るのだ!
これで回避に余力が生まれるので被弾確率と、反撃準備のための思考をする時間が生まれていくというわけだな。
流石に回避で精一杯の状況でゆっくり思考するなんて俺も辛いし、その時間を作るのが先決だったわけだ。
「なるほど。
いい判断だが、それだけではまだ時間稼ぎの範囲内だ。
ここで儂の攻め手が変わったらどうするのか、その対応力を見せてもらうとするか……
釣竿一刀流【憂鬱壱ノ型ー憂イノ吹雪】!」
【師匠】は自分が持っていた釣竿を瞬時に凍結させて俺が牽制で放っていた一撃の【魚尾砲撃】の極太レーザーと相殺させてきた。
そして、その釣竿から全てを凍りつかせるような猛吹雪を発生させてきたのだ。
くっ、どれもこれも一々大袈裟な技ばかりだなっ!?
地震、雷と来て次は吹雪か!
広範囲への一斉攻撃だから正面で戦っているなら回避は難しいぞっ!?
仕方ない、機動力は落ちてしまうがここは一旦守りに専念しよう。
スキル発動!【塞百足壁】!
スキルを発動させることで俺と【師匠】の間に黒色の壁を生み出していった。
これによって釣竿一刀流【憂鬱壱ノ型ー憂イノ吹雪】の風向きをシャットアウトすることが出来るというわけだ。
……深度をここまで深めていなかったら【師匠】の攻撃でこの壁は即割れていただろうな。
守れるだけの力をつけられたという実感を出来た防戦となったとも言えるな!
聖獣側としての成長ももっとして欲しいものなのですが……
全く、これだから劣化天子は……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】