1829話 死神サメ
というわけで多少は本を読めたがこのタイミングで……
【WARNING!】
【活動可能エリアが縮小されます】
【活動不可能エリアが5分間点滅します】
【活動不可能エリアは5分後赤く染まります】
【赤く染まった活動不可能エリアにいるプレイヤーはHPを失います】
というわけで今俺がいる【師匠】の屋敷付近一帯が赤く点滅し始めた。
やはり長時間書類を漁らせてはくれなかったか……
まぁ、俺が欲していた情報はそれなりに手に入れられたのでここはヨシとしておこうかな。
屋内に幽閉されたら目も当てられないのでさっさと脱出してしまおう……
そうして【師匠】の屋敷を後にした俺は残っている活動可能エリア……この島【Battle field 特異次元 黄牙釣魚台 リョコウボウ】の最北部の高台に向かうことにした!
そこ以外は点滅したままになっているからな……
幸いにも時間内に移動が可能なところにあるので間に合わなくて脱落することはないが、生き残れる場所の取り合いは間違いなく発生するだろうな……
「……残念ながら儂へはまだその攻撃は届かないようだ。
釣竿一刀流【雨乞】!」
【師匠】が放ったのは、自分のイメージした物の形の水を釣竿を弓のようにして放つ大技……釣竿一刀流【雨乞】だ。
【師匠】はそれを巨大なサメのような形にして放ち、水サメが【ヲ神死弖煌邪】の身体を食らい尽くしている。
……ちっ、来たタイミングが少し遅かったか!
「ここまで儂相手に粘るとはやはり力の使い方が上手いな。
だが、粘るばかりで儂へ攻撃を届かせることはついぞ叶わなかったようだ。
そこを克服せぬ限りは勝ちを拾うことも難しいであろうて」
【師匠】はそう言いながら、悔しそうな顔をしながら光の粒子になりつつある【ヲ神死弖煌邪】を見送っていた。
どうやら【師匠】を足止めしてくれていたのは蛇腹剣次元で【不公】の大罪を烙印された【ヲ神死弖煌邪】だったようだ。
一定条件下で無敵になれるabilityの【冠絶無血】を宿していることもあって耐久戦に向いていたのだろう。
そしてこの場にはもう一人……【ヲ神死弖煌邪】と同じく蛇腹剣次元所属の……MVPプレイヤー【マキ】だ!
既に【修練武器上位解放】をしているようで、チュートリアル武器の蛇腹剣が巨大蛇へと変貌している。
どうやら二人がかりだったようだ。
だが、他の釣竿次元のプレイヤーがいないということは【師匠】に合流させる前に誰かが倒したのか?
……いや、あの二人の負傷具合から見たところ活動不可能エリアへの場外負けで少なくとも一人死に戻りしているだろう。
じゃなかったらあのダメージ量で【師匠】の前に立っているのはおかしな話だからな!
というわけで間に合ったわけだが……まだ【師匠】に気づかれていないのかこっちに目を向けてきていない。
【マキ】も俺に反応していないし、一旦は潜伏して【師匠】の隙を窺う形が良さそうだな。
まぁ、【マキ】がピンチになったら流石に出ていくが……
「【ヲ神死弖煌邪】ちゃんがやられちゃったよ~!?
ここからはうち一人で【師匠】と戦わないといけないんだ……
変態お姉さん早く来てくれないかな~?」
「他力本願か。
幼いお前さんであれば無理もない話だが、その弱気な姿勢では儂に勝つどころかすぐに負けてしまうであろうな。
MVPプレイヤーとはいえ、興ざめしてしまう」
【マキ】は俺の到着を待っていて、【師匠】はそんな【マキ】の様子に落胆して憂鬱になっているようだ。
せっかくのMVPプレイヤーとのタイマンだというのに、【師匠】としては盛り上がりに欠けるシチュエーションだと言うのだろう。
強敵を求める【師匠】にとってはそうなってしまうのは無理もない。
はなから自分を倒せると思って挑んできていない相手なんて手応えがないだろうしな!
「うちが【師匠】を倒すなんて無理だよ~
実力も経験も違いすぎるもん!」
【マキ】はその辺自覚している状態だからな。
だからこそ無理をして相手を倒しにいくよりも俺を待ってから倒しに行った方が勝算があると幼いながら戦況を弁えていると言ったほうがいい。
【師匠】にしてみれば不服だろうが、【マキ】も経験を積んだからこそそういった判断が出来るようになったのだ。
そこは成長している証として喜んでもいいだろうな!
「では、続きと参ろうか。
儂と死合う覚悟はいいか?」
「覚悟は出来てるよ~!
これでも蛇腹剣次元のMVPプレイヤーなんだから、出来るだけ頑張っちゃうよ~!」
何だか能天気な感じではあるが、気合いの入った声の掛け合いで戦いが再開されたのであった……
オデ、【マキ】をオウエン、シテル!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】