1827話 師匠御殿
さて、ボマードちゃんを失ったことでとうとう俺一人はぼっちになってしまったわけだが、立ち止まるわけにはいかない。
【釣竿剣士】やボマードちゃんが繋いでくれた命がけのバトンを止めるわけにいかないからな!
……というわけで歩き始めたわけなんだが、正直あてもなく歩いている状態だ。
【釣竿剣士】がいればどこに向かえばいいのかのヒントを得られたんだろうが、いないものは仕方ない。
活動不可能エリアに指定されていない方角に向かっているというざっくりした方針だな。
まだ人の気配を感じないので警戒の必要もないだろうが、逆に言ってしまえば今まさに交戦しているであろう【師匠】の対戦相手のことが気がかりだ。
【ヲ神死弖煌邪】か【マキ】だろうが、どれだけ【師匠】相手に粘れるのか分からない。
というより既にやられてしまっている可能性の方が高いくらいだろう。
それほど【師匠】が強力なプレイヤーということだ。
そして、釣竿次元のプレイヤーにまだ遭遇していないのも気がかりだ。
【師匠】と一緒にいるのか、別行動しているのかでも攻略難易度が大きく変わってくる。
せめて別行動してくれているといいが……
そうしてしばらく歩いていると何やら屋敷のようなものがあるのに気がついた。
途中で拾った謎のカードはここに入るためのカードキーだったらしく、すんなり入れたぞ!
せっかくなのでと思い立ち寄ってみると、そこには様々な種類の釣竿や釣果と思われる魚拓が入口に飾られていた。
ここは……【師匠】が住んでいる家を再現した場所なのか?
そうとしか思えない道具などばかり並んでいるからな……
まぁ、ワンチャン【師匠】じゃなくて【釣竿剣士】が住んでいた場所って可能性もあり得るんだが、今のところ二人のうちどちらが住んでいる場所なのか断定する材料はない。
どっちも釣りをするし、釣竿や釣果の魚拓を飾っていてもおかしくはないからな!
……と、玄関を越えてリビングに入ると大きな長机が置かれていた。
ここで弟子たちと一緒に食事でもしていたのだろうか?
【師匠】の気質には合わなさそうな家具とスペースだが、もしかするとここの島を【師匠】に提供した人が用意したものかもしれないな。
あわよくば取り込みたい……みたいな感じで好感度稼ぎをしていた可能性はある。
異世界だと【師匠】は偉人相当の活躍をして隠居するためにこの島に移り住んだって【釣竿剣士】が話していたからな。
【師匠】もそんな提供者の好意を無碍には出来なかったのだろう。
そんなに悪意を挟んでいないちょっとしたお節介ってパターンもあり得るからな。
まぁ、俺の【師匠】への勝手なイメージからの予想だから、実際には自分で選んで自分で購入したというベタな可能性も当然ありえる。
【師匠】がどんな真意で弟子をとって育成しているのか……それを理解しないと延々と思考の堂々巡りをすることになるのは分かっているが、こればかりは本人に話してもらわないと誰にも分からないだろう。
だからこそ、こうやって外堀を埋めるための材料集めをするのはそんなに悪い話しでもない。
相手を理解すればそれに伴う行動予測がしやすくなるからな。
【師匠】と戦っている最中であろう相手には悪いが、あわよくば【師匠】の弱点でも見つかりそうな貴重な機会をみすみす逃すわけにはいかない。
ここで見つけられなかったら永遠と見つからないままになってしまう恐れを孕んでいるからな。
最悪この次元戦争で負けたとしても【師匠】の弱点が見つかるのなら釣り合うくらいには貴重な情報になるであろうと確信できる。
それくらい【師匠】は厄介なプレイヤーというわけだ!
そして二階へと上がっていくと書斎のようなものがあった。
ここが一番色々とありそうだと思い踏み込んでみると案の定、色々な資料が置かれていた。
【師匠】の手記やら弟子たちのデータなど置かれているが、見たところで俺の知らない異世界の人間たちの資料なので見たところで分からないんだが一応俺にも分かる言語に翻訳されているので読むこと自体はできる、なので【釣竿剣士】のものだけはなんとなく分かるぞ。
使える釣竿一刀流の種類や身体能力についての記載、そして所有する異能力と釣竿一刀流の親和性について記載されていた……のだと思う。
やはりと言ったところか、他の異世界人の資料と軽く見比べても数値が高く【釣竿剣士】は弟子として優秀な存在だったということが分かった。
……いや、【師匠】のことが知りたかったのに何で【釣竿剣士】の資料を漁っているんだよ!?
ノリツッコミですか……?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】