182話 頂点(底辺)集結!
レイドボスを倒して安堵しているパジャマロリたちだったが、【釣竿剣士】は油断してない。
レイドボスを倒したということは、奴がやってくる可能性があるからな!
「おっ!?
もしかしてバレてた!?
実力派プレイヤーのオレのオーラが溢れてたかぁ~!」
部屋の隅から現れたのは、そろそろお前何度目だよっ!?って思ってしまう自称実力派プレイヤーのギアフリィだ。
また弱った俺たちを狙いに来たって感じか?
生憎だが、今回は前よりも被害も少ないぞ。
人数も多いし、退いた方が身のためじゃないか?
そんな俺の挑発に指を降って否定するギアフリィ。
「チッチッチッ。
確かに弱ってたらプレイヤーキルを狙うってのもありだったけど、今回の狙いはそっちじゃないぜ!」
なら何だ?
「まあ見てろよチビ女!
スキル発動!【イグニッション】!」
ギアフリィは俺の目の前でスキルを発動した。
大火力スキルをこんなところで発動させてどうするつもりなんだ……
「こうするんだぜっ!」
ギアフリィは右腕に装着していたパイルバンカーを部屋の中央部へ突き刺した。
そして、次の瞬間パイルバンカーが赤く光り、床を地割れを起こすかのように破壊した。
すると床下に赤色の球体のようなものが埋蔵されていた。
なんだこれ……
「実力派プレイヤーのオレがこれを破壊すれば……」
なんかぶつぶつ言い始めたギアフリィだったが、無視無視。
こいつの言い振りからすると、破壊すればいい代物のようだし俺が破壊しちゃおっと!
俺は包丁を振りかぶり赤色の球体を壊そうと近づいていく。
「あっ、ちょっ、チビ女ぁ!
抜け駆けするな!!」
やべっ、もう気づかれたか。
気配は消していたつもりだったが、実力派プレイヤーを自称しているだけあってこういうときの勘のようなものも優れていやがるのな。
だけど、時すでに遅し!
俺のスキルで破壊してやる!
スキル発動!【フィ「その功績はコッチがもらうよ、鉱石だけにね?」
なんだっ?
俺のスキルの発動を遮る声がどこからともなく響いてきた。
つまらないだじゃれを言った声の主は、さらに言葉を紡ぐ。
「スキル発動!【スマッシュ】!」
スキルを発動する声がすると、包丁を振りかぶっていた俺の真横から回転しながら何かが飛翔してきた。
危ない予感がしたので、俺は攻撃を中止して後ろへ飛び退く。
すると、飛翔してきたものが赤色の球体に一気に突っ込んで突き刺さった。
……これは、ピッケルか?
とうとう今まで姿を見せなかったピッケルの使い手が現れたわけね。
今まで一切遭遇しなかったのには疑問が残るが、この次元戦争のエリアで一番順位が高い次元のMVPプレイヤーなら相当のやり手に違いない。
それを裏付けるかのように、スキルの効果なのか、突き刺さった内側から破裂する形で赤色の球体が爆散した。
いかにも固そうな球体だったので、ピッケルの投擲だけで壊せるとは思えない。
よほどあのスキルが強烈なものだったということだ。
「あっオレの獲物がっ!?
またあいつに先を越されたのかよっ!?
いちいち鬱陶しいやつだぜ!」
ギアフリィが何やら大袈裟に嘆いている。
そんなに重要なものだったのか、これ……?
いや、どうやら相当重要なものだったらしい……
赤色の球体の破壊をトリガーに脳内に無機質なアナウンスが響いてきた。
ということは……
【ワールドアナウンス】
【レイドクエスト【炎上屋敷の怪主人(屋敷主人)】がレイドチーム【ピッケル鉱石発掘隊】によってクリアされました】
あの球体がレイドボスだったのか!?
それにしてはあっさり壊れたような気もするが……
「宝探し系のギミックなんだよね……
包丁次元と蛇腹剣次元にもの探しが得意そうなプレイヤーが居なかったので、後回しにしていたのが仇になりましたか……」
今回のイベントの内容をほとんど把握していた【検証班長】がわざわざ残り一枠のレイドボスについて触れなかったのには何か理由があるのかと考えていたが、まさか他の次元に先を越されるとは……
「コッチは宝、鉱石、採掘が自慢だからね。
得意分野なら負けないよ」
赤色の球体を粉砕したピッケルを拾いながら現れたのは、ヘッドライトつきのヘルメットを被ったポニーテールの女性だ。
採掘とか言ってるし、服装は砕いた石の跳ね返りを防ぐためか、頑丈そうな灰色の鎧を身につけている。
そして、利便性を担うためなのか茶色のマントもついているな。
手に持っているピッケルとヘッドライトつきのヘルメットの2つが無かったら凛とした女騎士以外には見えない、そんな感じだ。
誰だお前は!
なんとなく正体は分かるが、一応聞いておく。
お約束ってやつだ。
「コッチの名前は【石動 故智】、本名だよ。
気軽にコッチって呼んでね」
いや、オンラインゲームで本名晒すなよ!!??
これはまたある意味手強そうですね……
【Bottom Down-Online Now loading……】
 




