1818話 イヤイヤタコルフ
逆転なんかさせるかよ!
俺が先に仕留めてやる!
そう言いながら俺は天子の翼を使い【夢魔たこす】へと特攻していく。
本当は聖獣スキルも使っていきたいが、ほとんどがクールタイムに入ってしまっているのでここは一度温存しておくことにした。
使いどころで手札が無かったらどうしようもなくなってしまうからな……
「それならたこすちゃんはこの戦場を有効活用するのだ!
とーう!」
そう言うと俺から逃げながら【夢魔たこす】は湖の中へと入っていってしまった。
これだと水面の外からの攻撃が通しにくいが、この誘いに乗って水中に入っていくべきか退却すべきか……
どうする!?
「追わないっていうのもありですよね?
いや~、さっき【包丁戦士】さんが言ってたみたいに私たちが有利な状態になったんですし無理に追わなくてもいいんじゃないですか?」
ボマードちゃんがわりと的確な意見を出してきたな。
確かにここで【夢魔たこす】を放置して先に進むというのは堅実な作戦だ。
水中は十中八九向こう側に有利な戦場だ、俺たちには不利な戦いを強いられるだろう。
「だったら退きますか?」
……いや、苦戦することを承知で湖に突入するぞ!
【夢魔たこす】と【師匠】が合流した後だと確実に俺たちの手に負えなくなる未来が見えるからな!
単独でいるタイミングで倒しておきたいのだ!
「それでは、湖の中へ突入しますよ!
いや~、水着を持って来ればよかったです……」
そうして俺とボマードちゃんが湖の中に入ると……
「あれっ、普通に泳げますし呼吸出来ますね!?
いや~、何ででしょうか?」
ボマードちゃんは地上と同じように水中を歩けたり、呼吸が出来たりしている自分の状況に驚いているようだ。
……多分だがボマードちゃんの【修練防具上位解放】ー【魚尾包装】が影響しているんじゃないか?
フィッシュテールドレスが潜水服のような役割を果たしているとか……
【魚尾包装】って名前に魚って文字も入っているし、水への適応力もそれなりにあると考えたらあり得ない話でもない。
「なるほどです、
いや~、【包丁戦士】さんの考察も頼りになりますね~!
私だけだったらビックリしている間にやられていたかもしれません!」
そんなことない……と断言してやりたいところだが、ボマードちゃんなら普通にあり得そうなのがなんとも言えないな。
「……って、私の理由はわかりましたけど何で【包丁戦士】さんも同じように話したり出来てるんですか!?
いや~、私みたいに【修練防具上位解放】ー【魚尾包装】があるわけでもないですよね!?」
確かに俺は【修練防具上位解放】ー【魚尾包装】があるわけじゃないが、代わりに【邂逅次元 海光カイコウ海溝】で【アキカゼ・ハヤテ】と遭遇した時に集めた素材とかで【槌鍛冶士】に作ってもらった水着を着込んできたからな!
ボマードちゃんの【修練防具上位解放】ー【魚尾包装】と同じようにある程度水中で地上にいる時のように活動できるというわけだ。
【夢魔たこす】や【師匠】に対するメタアイテムとして作ってもらったのだが、きちんと出番を用意してあげられて良かった。
「あー、その水着の効果なんですね!?
いや~、湖に入る前に急に上着とかを全部脱ぎ出した時には【包丁戦士】さんが露出癖を目覚めたのかと思っちゃいましたよ~!
ちゃんと意味があったんですね!」
ボマードちゃんはいったい俺を何だと思っているんだ……?
それじゃまるで俺がただの変態みたいじゃないか……
「えへへ、私とお揃いですね……」
いや、確かにお前は変態チックだが勝手にお揃いにされては困る!
俺の沽券に関わるからな!
悪名はいくら轟いてもらっても構わないんだが、流石に変態という風評被害は広まってほしくない。
完全にデマ情報だしな……!
そこだけは断固として否定させてもらうぞ!
「……二人で水の中でイチャイチャしているのだ?
次元戦争中に中々楽しそうなことをしているのだ!」
【夢魔たこす】にガン見されていたな……
【夢魔たこす】にしては珍しく空気を読んで攻撃せずに待ってくれていたらしい。
というより、【夢魔たこす】もコメディ的な『面白い』ことが好きらしいので、ラブコメ的なエンターテイメントとして楽しんでいたのかもしれないな。
「嫌よ嫌よも好きのうちって聞いたことがあるのだ!
二人は本当に仲がいいのだ!」
否定したことについては撤回するつもりがサラサラないが、一方で【夢魔たこす】が言ったようにボマードちゃんと仲がいいということも否定するつもりはない。
じゃなかったら今回の次元戦争の親密度枠としてボマードちゃんが呼ばれるなんてこと起きなかっただろうしな!
ラブコメを次元戦争中に繰り広げないでください。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】