1817話 たこす混戦模様
「まずはたこすちゃんから行くのだ!
スキル発動!【スマッシュ】!」
【夢魔たこす】は様子見と言わんがばかりにアンカーを振り回しながらカタカナスキルの【スマッシュ】を発動させてきた。
それに当たるわけにはいかない……!
「……と思っているのだ?
スキル発動!【海地穴誤】!」
【夢魔たこす】はさらにスキルを発動させて落とし穴を作ってきた……が、作った場所は俺の背後だと!?
これでは俺を落とす気がない……
いや、待て……!?
この配置は!?
「狙いは【包丁戦士】じゃなくて後ろにいるボマードなのだ!」
「ええっ、私が早速狙われているんですか!?
いや~、これはピンチなのでは!?」
そう、【海地穴誤】は俺とボマードちゃんを直線で結んだ間に落とし穴を作っていたのだ。
【夢魔たこす】め、足止めにしてきたな!?
「【修練武器上位解放】と【修練防具上位解放】を同時に使ってるプレイヤーなんて放置したら大変なことになるのだ!」
それは俺を目の前にして言えることか?
……いや、ボマードちゃんが【ランゼルート】級のスキルの使い手かもしれないという可能性が【夢魔たこす】視点ではあり得るのか。
それなら俺を無視して多少のリスクを犯してもさっさと始末したいよな。
「わわわっ、何とかしないと……っ!?
いや~、相手の動きを止めるにはこれですか?
スキル発動!【嫉妬歌眼】!」
ボマードちゃんはスキルの発動を宣言しながらウインクすると、瞳から音符が飛び出してきた。
本来なら遅いスピードで進む音符なのだが、ボマードちゃんの【修練武器上位解放】によって強化されたチュートリアル武器のマイク……【聖淵音声】の効果で声に関するスキルの性能が上がっているようで、猛スピードで飛んでいった。
しかも、ボマードちゃんの背後に浮いている四つのスピーカーからも音符が飛び出してきている。
あれは躱せないだろ!
「ふっふっふっ、躱す必要はないのだ!
まずは一発目、なのだ!」
【夢魔たこす】は一つの音符を効果継続中の【スマッシュ】で弾き飛ばしていった。
これはウマイな……
【石動故智】も得意としていたパリィじみた芸当だが、【夢魔たこす】も出来るってことか。
そして2つ目もそのままの勢いで地面に撃ち落とし、3つ目と4つ目は……
「スキル発動!【海底撈月】なのだ!」
銀光を輝かせ、それをビームとして放っていき残っていた音符を一掃していった!
【海底撈月】は威力が使用する度に変動し、しかもチャージ時間も変動するという運が必要なスキルなのだが【夢魔たこす】の豪運ならご覧の通り……その場で一番最適な威力・チャージ時間で放てるというわけだ。
くそっ、まさに運ゲーの申し子だな!
「誉められても攻撃しか出ないのだよ!」
それは全く嬉しくない返礼品だなぁ……
もう少し俺にメリットのあるものを返してもらいたいものだ。
……だが、止まって【スマッシュ】や【海底撈月】を使ってくれたので多少は俺へのメリットはあったか。
お陰でお前に追いつけたんだからなぁ!
スキル発動!【鳳仙火花】!
俺は羽のように広がった炎の花弁をボマードちゃんと【夢魔たこす】の間に差し込ませ、二人の距離を離させていく。
それと、攻撃直後ということもあって【夢魔たこす】が無防備になっておりそこにつけ込むことで攻撃の一部を当てることにも成功していた。
混戦の結果、俺が先手を取れたというわけだ。
図らずしてボマードちゃんが囮になってくれた形になったが、一旦ヨシとしておこう。
「むむっ、してやられたのだ!
服が焦げちゃったのだよ……」
気にするのそこなのか?
まぁ、逆にいってしまえばそこまで大したダメージにはならなかったということだろう。
貴重な聖獣スキルを使ってこれなのは少しリターンとしては弱めだが、【夢魔たこす】は元々疲弊していたこともあり追い討ちをかけられたのはデカイな。
最悪これで逃げられたとしてもダメージレース的には勝利扱いでもよくなるし。
まあ、ここから俺たちのどちらかがキルされたらそんなダメージレースの指標なんて一瞬で引っくり返ってしまうんだけどな!
でもさらに有利になってきているというのは間違いない。
このまま押していくぞ!
「たこすちゃんもそう簡単に負けてあげないのだよ!
使ってない手札がいっぱいあるから、それを使って一発逆転を狙うのだ!」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】