1814話 障害物と開けた場所
「とりあえず少し回復したので移動を再開しましょうか。
活動不可能エリアに隣接している場所で長居するのは身体が休まったとしても流石に心は休まらないですからね……
出来ればもう少し進んだところで休憩を取り直したいと思います」
おっ、移動を再開できるくらいには回復したか!
では先を急ごう。
俺もここをおさらば出来るなら早くしたいと思っていたからな!
「では出発進行ですよ!
いや~、ここからは見晴らしが良くなるので動きやすそうですね~」
再びボマードちゃんと俺で【釣竿剣士】を中央にしながら肩を組んで歩き始めたが、ボマードちゃんの言うように森は既に抜けていてここからは草原のような場所が広がっていた。
木を避けながら移動していた先ほどまでと比べると障害物が格段に減るので移動スピードが一気に上がっていった。
【釣竿剣士】のスタミナ消耗スピードも【『妖血残骸』ー血舐】の効果が弱まったのでどんどん緩やかになってきており、どんどん移動が苦にならなくなっている。
だが、その一方で気をつけないといけないこともあるんだぞ?
「えっ、なんですか!?
いや~、進みやすくなっていいじゃないですか!」
ボマードちゃんは元気良く反論してきたがそんな単純な話でもない。
早く進めるということはその分周りの景色を見落とし易くなるということであるので、ギミックを見逃してしまったり注意力が散漫になりやすくなる。
それに見通しがいいということは、敵からも見られやすくなるということなので狙われる可能性も増えるのだ。
今の【釣竿剣士】の状態だと狙われたら大変だし、森の中の方が安全性は高かったと言えるだろうよ。
「はえー、そうなんですね。
いや~、楽になるとしか考えてなかったですよ~!」
まぁ、普通はその認識だろうな。
強ち間違っているとも断言できないし。
もし敵がいなければ実際に楽になるだけだからな!
それに【釣竿剣士】が健在だったら守りの面も心配なかっただろうし、釣竿という得物の大きさから考えても森の中よりも草原のような開けた場所の方が戦いやすいはずだ。
逆に俺は森の中みたいな狭いところの方が戦いやすいから、どっちがメインで戦うのかによって判断は変わるけど。
「ちなみにですけど私ならどうなるんですか?
いや~、気になりますね~」
ボマードちゃんの場合か……
お前本人が動くなら正直どっちでも変わらないんだろうが、【ジェーライト】が動くなら草原か?
【魚尾砲撃】が直進するからな!
……いや、待てよ?
【ジェーライト】が使う【魚尾砲撃】は何回か曲げられるんだったっけ?
そうなると森の中でも使えるのか……
「そうだナァ!
イャ~、特製の【魚尾砲撃】なら障害物があっても関係ないゾォ」
うわっ、急に【ジェーライト】の意識が表面に出てきたな!?
その移り変わりが急すぎて驚いたぞ……
「【ジェーライト】さんはもう自由に私の身体を使えますからね!
いや~、戦いの時以外はほとんど出てこないのですが今回はしゃべりたかったみたいですね~!」
ボマードちゃんは気楽そうにそう言うが、今の状態がどれだけヤバい状態か分かってて言っているのか気になるところだ。
だって自分の身体が他者の意思でいつ何時であっても勝手に使われる可能性があるってことだからな!
「そんなに気にならないですね……
いや~、【ジェーライト】さんが私の身体を変なことを使うことなんて想像も出来ないですよ~!」
まぁ、【ジェーライト】ならそうだろうな。
これがルル様辺りだと身体も最大限に利用しようとするだろうが、【ジェーライト】はあくまでもただの器という認識で自分が動けたらそれで満足している節があるからだ。
これまで問題が起きてなかったことから安全性という点では問題ない……のだろうが、それでも俺は身体を勝手に使われるのは嫌だなぁ……
「そこは共生したことがあるかどうかで変わってくるのかもしれませんね。
ボマードさんは【ジェーライト】との絆を育んでいるからこそ、問題には思わないのでしょう。
それが気の合わない相手だったら【包丁戦士】さんの言うように嫌悪感を持ったかもしれませんよ?」
「それはありそうですね!」
逆にボマードちゃんの身体を使うルル様とか見てみたかった気もするけどな。
身体は弱いままだが、頭脳戦や裏工作で無双する系のプレイヤーになっていたかもしれないぞ!
「そうなったらいくらボマードさんでもかなりのヘイトを買いそうですけどね……
真っ当に活動しているからこそアイドル活動をしていても順当にファンがつくんだと思いますし」
確かにな……
そこにも影響してきていた可能性があると、本当に根本から変わってきそうだ……
カッカッカッ!
それも一興ではあるな。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】