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1808話 カゲロウエブリデイ

 二連続で背後からの攻撃を【東雲あすか】に食らわせた俺だったが、そのどちらとも致命傷にはならずあくまでも軽傷止まりに終わってしまった。


 二回決められたということは【東雲あすか】はどちらかといえば直情的で頭に血が登りやすいのは間違いない。

 その上で二度も軽傷に済ませてきたということは、その場しのぎの技術が高いということにもなる。


 俺の、気配を消して背後に回り込む攻撃は基本的には一撃必殺……モブプレイヤーだけではなく2つ名持ちプレイヤーですら葬ってきた技術だからな!

 【東雲あすか】が群を抜いて生存能力に長けている証拠となるわけだ。


 それは前に包丁次元の助っ人として【東雲あすか】を次元戦争で呼んだ時にも明らかだ。

 あの時も致命傷を負っていたのにも関わらず最後まで生き残って戦果をあげていたらしいし。



 「お褒めに預かり光栄だっつー話なんだが、このまま同じ攻め方を俺から仕掛けても突破は難しそうだな。

 そうなりゃ、攻め方を変えるしかねーよな!

 スキル発動!【群雨曇花】!」



 【東雲あすか】も血の妖刀を振り抜きながら新たなスキルを発動させていた。

 これは【水流万花】の派生スキルだろうか?

 そんな【群雨曇花】は【東雲あすか】の血の斬撃から派生して、俺たちの頭上に花の形をした雨雲を生み出していた。

 ただ綺麗なものというよりは、血の斬撃を介していた影響か真っ赤な雨雲になっていておどろおどろしい。


 そして、そこから血の花弁の雨が降り注ごうとしていた。



 おい、【釣竿剣士】っ!

 これはヤバいぞ、血の雨に触れるなよっ!?

 身体が剥げていくぞ!



 「そんなこと急に言われても困りますよ。

 ……ですが不可能を可能にするのが生産プレイヤーというものです。

 釣竿一刀流【波載】!

 さらに釣竿一刀流【滝登】!」



 【釣竿剣士】はチュートリアル武器の釣竿に水流を纏わせてそこから水の通り道を作ると、そのまま【東雲あすか】が生み出した真っ赤な雨雲に向かって上昇していった。

 


 「こりゃ、スゲェな……っ!?

 攻撃と移動を同時にしてんのかっつー話だな!

 自分で出した水流に乗って、そのまま突っ切りやがった!」



 まるでアクアジェットかのように突撃し血の雨雲を霧散させた様子を見て【東雲あすか】は驚愕していた。



 「【師匠】がこれをやってんのは見たことねーから、オメーの十八番ってことか。

 迫力は【師匠】の方が上だが、別のところで上回っているところもあるっつー話だな。

 見直したぞ」

 「……それはどうも」



 素直に【釣竿剣士】を誉めた【東雲あすか】と、それを受けてどう反応していいのか困っている【釣竿剣士】の様子が絶妙になんとも言い難い構図だな。

 俺も触れにくい……



 「必殺のコンボを防がれた以上本当ならここで退散してー気持ちもあるんだが、今回は最悪ここで俺が死に戻りするとしても退けねーんだよな……

 不利なのは分かってんだが、もうちょっと付き合ってもらうぞ」

 


 随分と往生際が悪いじゃないか。

 お前はそこまで物わかりの悪いやつじゃないから、ここまでやって俺たちの布陣を崩せてないのがどこまで不味いことなのは分かっているのだろう。

 だが、それほど今回のアンカー次元のメンツとか状況が悪いのだろう。


 最悪、疲弊した俺たちを【師匠】に押しつけて倒させるくらいのことは考えていそうだ。

 アンカー次元だけで処理し切る必要はないしな。


 2つの次元がペアになったからこそ取れる手段というわけだ。

 発想が柔軟なことでなによりだな。



 「そういうことならこのまま今度はこちらから攻めさせてもらいますね。

 釣竿一刀流【抜刀斬】!」



 【釣竿剣士】は居合いの構えをして距離をじわじわと詰めていくと、【東雲あすか】との距離をある程度縮め向こう側に隙が出来たと思った瞬間に目にも止まらぬスピードで釣竿を一気に振り抜いていった。

 

 神速の攻撃は相手の対応を許さないほどのもののはずだったが……



 「その手は悪手だ!

 これなら俺でも対応できるっつー話だな。

 特権スキル発動!【ブラッドバーニア】!

 血脈よ、沸き上がれ!」



 【東雲あすか】が特権スキルを発動させると、一瞬でセーラー服全体を燃え上がる炎のような揺らぎを見せる血で覆っていった。

 それにより、【釣竿剣士】が放った釣竿一刀流【抜刀斬】による居合いの一撃は【東雲あすか】の身体をすり抜けていき、【釣竿剣士】の身体は【東雲あすか】の後ろへと通り抜けてしまったようだ。



 炎の揺らぎ……実体をすり抜けさせる……虚像……

 あっ、陽炎か!

 焚き火の上などを通して遠くを見たとき,遠方の物体が細かくゆれたり形がゆがんで見える現象のことだ。


 つまり、【東雲あすか】の身体は別のところに移動していたのにも関わらず俺たちの目にはさっきまでと同じところにいるように見えているのだ。

 こんなテクニカルなスキルも引っ提げて来ていたのか!?






 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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