1790話 二枚目の盾
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【マキ】とボマードちゃんを引き合わせていたな。
わりと温厚な会話がされていてホッとしたぞ……
というわけでやって来ました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア!
ここでぼーっとしていたら死神装束のような、ゴスロリのような衣装のプレイヤーの姿が目に入ってきた。
あいつは……【ヲ神死弖煌邪】か!
チュートリアル武器である大鎌を携えて、中二病口調で喋るという色々と痛いやつだな。
そして新七つの大罪である【不公】の大罪を烙印されているプレイヤーでもある。
「毒蛇の朋友!
泥水溢れるこの地で出会えたのは運命ね!
万物不当の運命が私をこの地に召喚せしめたのよ!」
相変わらず意味が分からないことばかり言っているが、多分だけど俺と会えたことを喜んでいるのだろう。
【マキ】がこの場にいないから意訳もしてくれないし、半分聞き流しながら会話するしかないな。
それでお前は何でこんなところにいるんだ?
蛇腹剣次元のプレイヤーはほとんど地蒜生渓谷メドニキャニオンか新緑都市アネイブルにいるのに、わざわざ人気の無いこの沼地にいるもいうことは何かしらの意図があるんじゃないか?
「冥界の不可侵領域が私を呼んでいるのよ!
その兆しこそが死神たる私の帳を導くものになるはずよ!」
冥界の不可侵域……?
そんなのこの辺りにあったか?
沼地に溺れたいとかの意味なのか???
「毒蛇の朋友よ、死神の手を取るならば閃光の閃きを与えるわ!」
そう言うと【ヲ神死弖煌邪】は俺の手を取ってこの先に進み始めていった。
これは一緒についてこれば分かるって言ってたということだろうな。
そうしてたどり着いたのは覗いても底まで見通すことが出来ないほどの大穴……そう深淵奈落だ。
あぁ、冥界の不可侵域ってそういう……
深淵奈落を冥界って表現したくなる気持ちは分からなくもない、外から見るとかなり不気味な場所だからな。
なお、中は俺のログイン地点の模様。
そんな深淵奈落を見つけると【ヲ神死弖煌邪】は大穴へと飛び込んでいった。
おいおい、飛び込んでもループするだけだぞ!?
そんな俺の呼び掛けも虚しく【ヲ神死弖煌邪】はそのまま深淵奈落へ落ちたっきりで戻って来なかった。
……ん?
戻ってきてない!?
ということは俺のログイン地点の横穴に入り込めたのか!
それなら俺も向かわないとな。
「冥界の伊吹を感じる堕落だったわね……
凶刃の冥界はこれほど冷徹なものだったなんて思わなかったわ!」
とりあえず何か大変な様子だな。
疲労感を感じているようだったので、とりあえず備え付けてあったチョコクッキーと水を出してやった。
「芳醇な協奏が舌禍の上で繰り広げられてるわね!
安息の地に足を踏み入れたかのようだわ」
……とりあえず美味しいってことでいいんだよな?
それで何でお前が深淵奈落に入れたのか教えてもらおうじゃないか。
ここに入るには幾つか条件があったはずだが、どれを満たして入ってきたのか気になるところだ。
深淵細胞でも持っているのか?
「死神たる私が内包する神秘は……これよ!」
そうして懐に手を入れて取り出してきたのは片手サイズの盾のようなものだった。
これは見覚えがある……ボマードちゃんがデカブツムカデの居住地からパクってきて持っていたやつと瓜二つだ。
たしか名前は……【天地照堕盾】だったか?
俺がその名前を口にすると【ヲ神死弖煌邪】は目を丸くして驚いていた。
まるで鳩が豆鉄砲を食ったような感じだな。
「あっ、あれ……っ!?
ここで私が名前とか性能を自慢する流れだったはず……
何で知ってるの!?」
【ヲ神死弖煌邪】は驚いた様子から立ち直れていないようで完全に素の状態で俺へ質問をしてきた。
何、包丁次元でそれを手に入れたやつを知っていただけだ。
俺のクランメンバーが結構前に手に入れてたんだが、蛇腹剣次元にもあったんだな?
「そんな……意味深な感じで見せびらかした私が馬鹿みたいじゃん……」
こいつ、完全に落ち込んでるな……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】