178話 狂人様リトライ!
はい、というわけで再び戻ってきた炎の扉の前だ。
「あっ、変態お姉さん!
ようやく来たね~!」
炎の扉の前で待機していたのは蛇腹剣次元のプレイヤーたち三人だ。
というか、その変態お姉さんって呼び方止めない?
俺は変態お姉さんなんてものじゃないんだが?
「えー、それは絶対嘘だよ~!
そう思うよねみんな!」
「……動きが変態的だったこ」
「否定はしません」
「ボクも……まあ……どちらかといえばそう思うよ」
パジャマロリの後ろでマックスもうんうんと頷いている。
おいおいおい……ここに俺の味方はいないのか?
勘弁してくれよ……
「【包丁戦士】さんが変態的なのは周知のことですからもはや議論の余地すらないですね。
……それで、溶岩魚を使ったアクセサリーができたと聞いたのですが本当ですか?」
それを聞いたマックスが懐から首飾りのようなものを6つ取り出した。
その首飾りをマックスの手からひったくり、さっそく着けてみる。
胸元にかかる部分には、木札のようなものがつけられており、オリエンタルチックな模様が刻み込まれている。
時折模様が赤く光ったりしていることから、おそらくではあるが溶岩魚の鱗を粉砕して木札に刻み込んだのだろう。
ただでさえ材料が少ないものを六分割しないといけなかったのだ、それをこのような形で問題解決を狙ってくるとは……マックス……侮れないやつだ……
レイドバトル中でもアクセサリー作成を止めなかっただけあって、見るからにそれなりに完成度も高そうだ。
あっ、この木札の留め具に使われている金属の輪ってもしや……
「ふふふ、気づいちゃったよね~?
うちのアイディアだけど、【ケイトリー=ホウセ(糸人)】が使ってきたワイヤーを少し丸めてアクセサリーに使ってもらったよ~!
折角だからレイドボス素材も使えたらいいな~って……マックスに無理を聞いてもらっちゃったよ~!」
「レイドボス由来の素材を使ったアクセサリーですか……
検証班としても実に興味深いものですね、これいただいてもいいかな?」
「当然だよ~!
これから一緒にレイドボスに挑むために必要なアイテムなんだから、それは無いと困るよねっ?
それにこの溶岩魚は包丁次元の【釣竿剣士】さんが釣ってきたものだから、半分渡すのが道理だよね~」
マックスを差し置いてべらべら喋るパジャマロリ。
というかマックスが喋ったのを一回も見てないんだが……
「生産プレイヤーとして対価はきちんといただきます!
……なるほど、これはいいものですね」
マックスから直接ひったくった俺以外の、【検証班長】と【釣竿剣士】、その他蛇腹剣次元のプレイヤーたちも溶岩魚の成分が刻み込まれた木札の首飾りを装着したようだ。
それじゃ、さっそく炎の扉に突入してみるか。
俺は恐る恐る炎の扉に手を伸ばしていく。
そして、取っ手に手をかけた。
……ちょっと熱いが、触れないことはないな!
これはなら問題ない!
俺はそう確信すると、思いっきり扉を引き開けた。
【Raid Battle!】
【炎上屋敷の怪主人】
【ケイトリー=ホウセ】
【糸人】【鳳仙火料理人】【屋敷主人】
【実態は1つに有らず】
【ある時は自身とも言える線上を踊り】
【ある時は鳳凰から譲り受けたる炎に焦がれ】
【ある時は屋敷と命を共にする】
【全てが離れ】
【全てが交わる】
【レイドバトルを開始します】
扉を開けると同時に中から物凄い風圧の熱気が俺たちを歓迎するように湧き出てきた、前回はこの熱気に耐えることすら出来なかったが、今の俺たちにはマックスお手製の首飾りがある!
身体の端々に火傷を負うことになったが、それでもダメージは微々たるものだ。
なんとか、戦うための前提条件はクリアできたみたいでちょっとホッとするな。
そして、脳内に無機質な声が響き渡る。
アナウンス自体はさっき倒した【ケイトリー=ホウセ】のものと全く同じもののようだ。
やっぱり大元が同じレイドボスという推測は正しそうだな。
俺たちの目の前に現れたのは、全身から炎を滾らせている人型のレイドボスだ。
レイドボスの見た目は、さっき倒した【ケイトリー=ホウセ】とほぼ同じだが、ワイヤーを飛ばしてきていた指先からはワイヤーではなく炎が噴き出している。
これが【鳳仙火料理人】としての【ケイトリー=ホウセ】の姿なのだろう。
ミイラのように顔を覆っている毛糸玉もメラメラと燃えており、異形さも合わさって近寄りがたい見た目になってしまっている。
……こんな姿のレイドボスを運営はよく考え付いたな……
ここの運営とはそういうものです。
【Bottom Down-Online Now loading……】




