1771話 過疎沼地
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は蛇腹剣次元のプレイヤー参入で大賑わいの闘技場を見に行ったな。
【キズマイナ】がげっそりしていて、喋り方が【骨笛ネクロマンサー】時代のものに戻っている時間が長かったが勇者バフが足りないくらい無理やりコミュニケーションを取り続けたのだろう。
そして【カイ=フジン】が思わぬ活躍をしてくれているようなので、何とか耐えられているという話を聞いて【山伏権現】が気を利かせて【カイ=フジン】を人型にしてくれて良かったと心底思ったぞ……
というわけでやってきました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア。
ここも蛇腹剣次元のプレイヤー参入で賑わって……
「ないです」
なかった。
ちなみに俺が話している相手は北のトッププレイヤー【釣竿剣士】だ。
どうやらここに来ている蛇腹剣次元のプレイヤーはまばらにしか見られないようだな!
「そもそも包丁次元のプレイヤーでもここにはあまり訪れないですからね……
特に変わった施設があるわけでもないですし、ほのぼの市場のような出店もありませんから見所もないエリアですよ。
私のクランの生産プレイヤーがゆっくり活動するにはちょうどいい立地ですけど」
確かに喧騒から離れてゆっくり集中するにはいい場所だよな。
謎のプレイヤーが乱入してくることもないだろうし!
ただ、素材の調達だけ面倒そうだな。
ほのぼの市場だったら素材が足りなくなった時に商人系プレイヤーから買い足せるが、ここだったら自力で調達するしかないはずだ。
「そこは抜かりないですよ、生産プレイヤーなら!
商人系プレイヤーと提携して素材を定期的にここまで運んできてもらっています。
変わりにこちらで生産したアイテムを卸しているわけです。
Win-Winな関係なので持続的に交流が出来ているのも大きいですね」
へー、そんなことをしていたのか。
ガッツリアイテム生産に特化したクランってここくらいしか知らないからどんな仕組みで運営しているのか知らなかったが、思ってたよりも考えてるんだな。
「この辺りも【師匠】から受け売りですけどね。
『補給はいつも切らさないように細心の注意をすること』と言っていましたから」
それは確かに重要なことだろうが、【師匠】の場合は生産プレイヤーとしてじゃなくて継続戦闘をする場合とか戦争みたいな場面を想定しての発言っぽそうだ。
【釣竿剣士】はその辺の発言を変な形で曲解することがあるようで、そのせいで『生産プレイヤー』という概念もとても高い理想を求めているものだと認識している節がある。
実際【釣竿剣士】本人としては役立っている教えだから師事している価値はあるんだろうが、この辺を【師匠】は指摘したんだろうか?
それとも分かった上であえて放置しているんだろうか?
この辺は気になりはするが、根が深そうな話題なので俺が深く立ち入るのは止めておこう。
なんかやぶ蛇になりそうだからな!
「蛇腹剣次元の生産プレイヤーがここに来てくれたら色々と技術交流が出来るようになりますし、合作とかもしてみたいんですけどそれが出来るのは少なくともしばらくあとになりそうですね。
やはり物珍しさから新緑都市アネイブルと地蒜生渓谷メドニキャニオンに偏って集まってしまっていますし、そこから人が流出するにはどうしても時間がかかるでしょう」
まあ、どっちもアクセスとか施設的な意味でも便利だからな。
わざわざその利便性を放棄するプレイヤーの方が少数だし、積極的に呼び込みでもしない限りは無限湖沼ルルラシアにプレイヤーが集まるのは時間がかかりそうだ。
「そこまでは……とりあえずはしないつもりです。
それよりも【ΩND】の改修作業を急ぎたいですから!
蛇腹剣次元のプレイヤーとの交流はあくまでも可能なら……くらいに考えてますよ」
その辺はわりとドライなんだな……
そういうスタンスも悪くないと思いますよ。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】