1770話 コミュ障闘技場
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は地蒜生渓谷メドニキャニオンで【プシーナク】が転移ゲートを管理しているという話を本人(?)から聞き取りしていたな!
若干荷が重そうな発言をしていたが、現状は問題なさそうだし今が一番ピークだろうからしばらく耐えてもらいたいところだ。
というわけでやってきました新緑都市アネイブルにある闘技場!
ここも蛇腹剣次元が参入してきた影響が出ていた。
「ふひひっ……
あてぃしと【ミューン】と【カイ】の三体でローテーションを組んで回しても行列が終わらないですねぇぇ……
これは思ったよりも大変ですよぉぉ……」
俺が観客席で戦いを見ようとしたらげっそりとした顔の【キズマイナ】が近寄ってきた。
そんなに大変なのか……?
お前の【勇者】としての力を使えばプレイヤー相手の戦闘はそこまで時間がかからないと思うんだが……
俺の疑問に対して「やはりそうきたか……」みたいななんとも言いがたい表情のまま【キズマイナ】は口を開いた。
「戦闘自体は【包丁戦士】さんの言うようにすぐ終わりますねぇぇ……
ですが、戦闘と戦闘の間の準備時間や移動時間の方が手間取っていて、結果的にずっと戦闘をしているみたいな感じになっちゃってるんですよぉぉ……」
あ~、直接的な戦闘よりも次に来るプレイヤーへと対応とかその辺で時間を使ってしまっているわけか。
だから拘束時間が永遠に続いていくということだな?
そうなると、もはや接客業みたいなところあるな……
「ふひひっ、そうなんですよぉぉ……
あてぃしは戦闘だけならともかく、人と会話したり関わることはあんまり得意じゃないですからねぇぇ……」
それは知っている。
ずっと引きこもり生活をしていたくらいなわけだから苦手なのは周知のことだろう。
「包丁次元の人たちはそうなんですけど、蛇腹剣次元の人たちはそういうことも知らないですからねぇぇ……
【勇者】という肩書きを見て色々と聞いてきたりするんですよぉぉ……」
それもそうか。
【キズマイナ】が【骨笛ネクロマンサー】として活動していた時から包丁次元のプレイヤーたちはコイツの人となりを知っているから相応の対応をしているが、蛇腹剣次元のプレイヤーはそもそも初見のジョブ【勇者】に興味津々で質問責めにしてくるのだろう。
当然、【キズマイナ】の人となりなんて事前知識もないから距離感も近く、より話そうとするはずだ。
それは【キズマイナ】にとっては苦行のようなものだな……
「あてぃしだけじゃなくて【ミューン】も似たようなものですからねぇぇ……
基本無口ですからぁぁ……」
なんなら【キズマイナ】よりも【ミューン】の方が対人コミュニケーション能力は低いからな……
ここにいるのは戦闘狂だからっていう理由以外ないし。
「その点、【カイ】には助けられていますよぉぉ!
コミュニケーション能力も高くて、あてぃしや【ミューン】が戦う時でも戦闘準備の手伝いをしてくれますからねぇぇ!」
ここで活躍していたのはまさかの【カイ=フジン】だったか!
あのドジっ子メイドが一番活躍出来ているのは……まぁ、納得出来るが腑に落ちないな……
まさかのメイドらしく裏方業務もきっちりこなせるとはな。
「ふひひっ。
あてぃしや【ミューン】が壊滅的だっただけかもしれないですけどねぇぇ……」
どっちもどっちだな。
とはいえ対人コミュニケーションでは間違いなく【カイ=フジン】が役立っていることには変わりないだろう。
人懐っこいメイドに接待されるならプレイヤーたちはそれだけで喜ぶだろうし、役割分担としてはちょうどいいはずだ。
【カイ=フジン】もきっと張り切っていることだろうしな!
活躍の場を有効活用出来ているようで何よりです。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】