1766話 帝王切開
「この待ってる間うちはどうすればいいの~?
やることないんだけど~」
【マキ】は暇をもて余したのか俺に指示を仰いできた。
そうだな……
スキル【水流万花】でも使っておくといいんじゃないか?
あれは時間の経過で花弁の数を増やすんだろ?
それなら今使っておけば最大数を維持して戦えるかもしれないぞ!
「スキルの効果時間内に【怠惰なる妖蛇女】が起きてくれたら出番があるんだけど、【水流万花】が終わった時にまだ寝てたら無意味になっちゃうのが怖いけど……
変態お姉さんに従っておこうかな~!
スキル発動!【水流万花】~」
【マキ】はスキルを発動させて水の花弁を生み出した。
それが【マキ】の周りをグルグルと回りはじめたが、それは時間が経つにつれて花弁の数を増やしていっていた。
普段戦闘中は割られる数と増える数がマイナスになっていくので、最終的にはスキル効果時間が終わる前に全て消滅することが多いんだが今回は敵対している相手が寝てるからな。
存分に増やしておけるというわけだ。
無意味に終わるかもしれない作戦だが、唐突な逆襲が来たときの備えになるしやっておくのが吉だろう。
さて、これで防御と弱体化が時間の経過で継続的に強まっていく状況を作れたんだが、肝心なのは大ダメージを与える方法だ。
それなんだが、俺にいい考えがある。
【マキ】、お前があの【怠惰なる妖蛇女】の中に入っていくんだ!
「えぇっ!?
それってうちが食べられちゃうってコト!?
危険すぎるよ~!」
明確な拒絶をしてきた【マキ】だったがこの反応は予想通りだ。
だからこそさっき指示を出しておいたものが役立つというわけだ。
【水流万花】の水の花弁が【マキ】をしばらくは守ってくれるはずだ!
あとその蛇腹剣のサイズのままだと入れないだろうし、【怠惰なる妖蛇女】の口からは入れないだろうから俺が胴体の一部を切り裂いてそこから侵入していくことになる。
口からじゃなかったら食べられている感じじゃなくて抵抗は少ないだろ?
「変態お姉さん、相変わらず発想が変態なのに気の回し方だけは謎だね~」
まあ、いいだろ?
さっさとやってやるから、準備しておけよ?
スキル発動!【夢幻顕現権限】!
俺はリソースの消費を抑えた夢幻の力を身に纏うフォームを追加させ、背後に2つの紫色の浮遊する羽を生み出した。
簡易版【夢幻深淵】……ってところだな。
よしっ、これであとは【怠惰なる妖蛇女】を起こすだけだ!
【マキ】っ、何とかしてこの眠り蛇を起こしてやってくれ!
「了解だよ~
……とりあえず目のところにいっぱい攻撃しちゃお!」
【マキ】はそう言いながら【怠惰なる妖蛇女】の顔面に蛇腹剣で切りつけ始めたようだ。
そして無敵とはいえ、衝撃までは無効化していなかったのか煩わしそうに目覚めてきた。
よしっ、これで攻撃も通るようになったな!
ここで俺がやるべきことは……
スキル発動!【フィレオ】!
スキル発動!【フィレオ】!
スキル発動!【フィレオ】!
スキル発動!【フィレオ】!
スキル発動!【フィレオ】!
スキル発動!【フィレオ】!
クールタイムが無に等しいこのカタカナスキル【フィレオ】を連発することだ!
代償として四肢のうちの一つを失うことになる斬撃スキルだが、四肢に加えて夢幻の羽も代償の対象となる。
だからこそ、合計6連続攻撃が可能になるというわけだな!
これを腹部の柔らかそうなところに一点集中させ、それを切り裂いていく。
本来ならもっと【怠惰なる妖蛇女】の身体の耐久度を下げてからの攻撃じゃないと深いところまで切り裂くなんて芸当は出来ないんだが、俺の【フィレオ】は特別だ。
その辺を無視して純粋な切れ味だけで勝負出来るからな!
これによって切り進めた部分には頭一つ分くらいの斬傷が刻み込まれ、そこがパックリと空いていたのだ!
逆側まで貫通していたら倒せていたかもしれないが、それをやるにはもっと耐久戦をしてあらかじめ削っておかないとダメだったし、この【怠惰なる妖蛇女】相手には持久戦が不利だというのは戦いはじめてすぐに分かったことだ。
多少無理をしたとしても短期決戦に持ち込める戦い方をしなければならなかったのだ!
じゃなかったら俺はここで四肢を失って転がっているなんてことしてないぞ……
あとは、【マキ】っ!
任せたぞっ!!!
劣化天子は本当に転がってますね……
手足が無い状態なのだから仕方ないですが、本当になりふり構ってないですね……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】