1760話 最高の相棒
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日はクラン【裏の人脈】のクランハウスに素材を集りに行ったんだったな。
なんか【バットシーフ】後輩からだけもらうはずが、四幹部全員から一つずつもらってしまった。
俺は何かあのクランメンバーたちに妙に好かれているんだよな……
特別優遇したとか、あいつらの目的のために協力したりとかした記憶もないし、正直理由は一切不明だ。
いや、【バットシーフ】後輩は【裏の人脈】というよりは本所属は俺のクラン【コラテラルダメージ】だからアイツだけは俺への恩という明確な理由はあるか。
【メリケンサックボクサー】は……クランのリーダー同士だからか?
あと人脈を大切にしているプレイヤーだから俺と良好な関係を築きたいという下心もあるかもしれない。
【モーニングスターシスター】は……【綺羅星天奈】関係か?
十字架次元のMVPプレイヤー【綺羅星天奈】の妹で、俺は一時的とはいえ【綺羅星天奈】と同盟を組んで【大罪魔】攻略の動きをしていたからな……
そこに【モーニングスターシスター】も絡んでいたし、姉に関わりのあるプレイヤーとして何か思うところがあったのだろう。
【バールソルジャー】は……分からん!
こいつは本当に何でだ!?
ノリか?
便乗か?
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルの拡張エリアにある【槌鍛冶士】の鍛冶場!
俺はさっそく集まった素材たちを【槌鍛冶士】に引き渡すことにしたのだ!
早めに渡せたらその分完成も早くなるからな!
こういうのは後回しにせず、揃ったタイミングで渡してしまうのが俺にとっても【槌鍛冶士】にとっても最高効率だろう。
「ガハハ!!!
それは助かるな!!!
ワシにアイテム作成の依頼をしてくる奴らの中にはその辺りを理解してないプレイヤーも多いぞ!!!
未だに生産プレイヤーを戦闘系プレイヤーの下に格付けして横柄な態度をとるのもいるぞ!!!」
それは……典型的なVRMMOプレイヤーだな……
そういうやつはよくいるんだよな。
確かに戦闘が出来た方が行動の幅が広がるのは間違いないんだが、その分他と替えがたい技術を身につけて多くのプレイヤーへ貢献するのが生産プレイヤーの本懐だ。
「ガハハ!!!
やはりお前はよく分かっているな!!!
だからこそお前はずっとワシの相棒足り得るのだ!!!
お前は他のプレイヤーから横柄な態度を取っていると思われることが多いみたいだが、ワシからしてみたらそういった輩の方がこの辺りの認識を履き違えていることが多いと思うぞ!!!」
【槌鍛冶士】はほぼ全面的に俺を信頼してくれているようだ。
まあ、俺の横柄な態度は特定の誰かとかどういう層のプレイヤー……って特定しているわけじゃなくて全体的にそういう対応をしているからある意味裏表はないかもな?
それでも悪質プレイヤーとして見られるのはやむを得ないと俺自身も思っているから、【槌鍛冶士】の評価は少し眩しすぎるというか照れくさいというか……
「ガハハ!!!
それを言うならお前からのワシの評価も似たようなものだ!!!
ワシだって人付き合いやモノ作りの中でも得意不得意がハッキリ分かれておるぞ!!!
お前はお前の視点でしか見ていないからワシの嫌なところが目に入りにくいのだろう!!!」
つまりお互い様というわけだ。
お互いが最高の相棒と思っているから良いところしか目に入らないし、認識しないという関係だ。
これはある意味で共依存と言うのかもしれない。
それくらいお互いがお互いを信頼してしまっているということだ。
そして、これは今さら変わることもないだろうよ。
「変える必要もないがな!!!」
それはそうだ。
そうして俺は【槌鍛冶士】を包丁で切り裂いて流れていく光の粒子をぼーっと眺めるのであった。
これは……狂気ですか?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】