1745話 異形の左腕
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は新緑都市アネイブルにある闘技場で【ミューン】と【カイ=フジン】がデモンストレーションとして戦っていたのを観戦していたな。
モブプレイヤーたちも結構集まってきていて大盛況だったし、【カイ=フジン】が聖獣だということも一気に知らしめることが出来たので一石二鳥というわけだ!
流石は【菜刀天子】による献策だ。
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルにある闘技場!
昨日は聖獣であることを公言してから人が集まってきてしまい近寄れなかったが、今日は多少落ち着いているようだ。
というわけで、今日は俺が【カイ=フジン】に挑んでみようと思う。
試したいこともあるからな!
「えっ、ご主人様が私と対戦ですか!?
恐れ多いですよ!」
まあまあ、そう言うな。
ぶっちゃけスペックの違いからして普通にリソースを適度に使って戦うなら俺が負けるだろうし、俺は倒されても復活するからな!
別に変に畏まる必要もないだろう。
「そういうことであれば【カイ】は戦わせていただきます!」
そう言って【カイ=フジン】は両手に黄金の双剣を構えて臨戦態勢をとった。
まあ待て待て。
戦いを始める前に俺はこれを使わせてもらうとしよう。
俺は【カイ=フジン】を手で制止させながら角の首飾りを取り出した。
読者のみんなは見覚えがないだろうが、これは【失伝秘具(童話礼装)】の【恋慕戦場の怪物ー蛇馬魚鬼】……この前の次元戦争で【ロイス=キャメル】が厄介払いするかのように俺に押しつけてきたものだ!
これを俺の首にかけると……
「ご主人様の左腕が異形の姿になりました!?
深淵の力……ではないですよね?」
あぁ、これはあくまでも【失伝秘具】の力だ。
左腕が次元戦争のレイドバトルで見た【ジャバ=ウォック】の腕の見た目のまま俺の腕のサイズへ変えた感じだな。
「レイドボスの力を閉じ込めた【失伝秘具】というわけですね!
ご主人様が手に入れた新たな力がどんな力なのか楽しみです!」
というわけで……バトル開始だ!
まずは通常通り右手で包丁を握り、【カイ=フジン】へと切りかかっていく。
そんな俺の動きを見た【カイ=フジン】は片方の剣で俺の包丁を受け止めて、カウンターとして残った側の剣でトドメを刺しに来た!
遠慮無しとは言ったが本当に容赦ない玄人の戦いかただな!
【ミューン】と渡り合えていたのが頷ける技量の高さだ、万能メイドを自称するだけはあるのが実感できるぞ。
そんなカウンター攻撃を身体を捻って回避した俺はしゃがみこんでから間合いへと入り込み、そのまま【ジャバ=ウォック】の腕で【カイ=フジン】を切り裂いていった!
この腕は鋭利な爪がついているからな!
【ミューン】が使う鉤爪のような感覚で爪撃を繰り出せるというわけだ!
「この攻撃……【ミューン】を思い出しますね……
ですがご主人様、これならどうでしょうか!」
【カイ=フジン】は爪撃を放って体勢が戻りきっていない俺の異形の左腕を、自身の身体を無理やり回転させながら剣を動かして切り裂いてきたのだ!
うわっ、スパッと切られたな!?
何なら普段の腕よりもダメージ食らった気がするんだが……
おそらく、【ジャバ=ウォック】が持っていた『剣による斬撃』が弱点という特性を受け継いでいるのだろう。
ここまで再現しなくても良かったものを……
その次に【カイ=フジン】によって放たれた追撃の斬撃は包丁の腹を使って受け流していくことで何とか凌げたので、死に戻りは何とか避けられた。
「驚きました!
今の攻撃は絶対通ったと思ってました……
流石ご主人様です!」
だがまぁ、今の攻防で勝敗は決したようなものだろう。
俺は片腕を失って戦闘力が激減したからな!
ここは俺の負けということで引き下がることにしておこう。
劣化天子にしては潔い引き下がり方ですね……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】