1744話 大波乱の万能メイド
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【カイ=フジン】を闘技場送りにするということで【菜刀天子】からアドバイスをもらったんだったな。
有効活用する方法をわざわざ考えないといけないのは不便だが、仕方ないだろう。
元気が有り余ってるのが問題だからな!
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルにある闘技場!
ここで、【ミューン】と【カイ=フジン】が対峙していた。
「……ひとがた、なれた?」
「なれましたよ!
ただ、それでも【ミューン】と戦うのは荷が重いですよ……!」
そう、これから二体は戦うつもりのようだ。
デモンストレーションってやつだな。
「おい、【ミューン】と誰かが戦うみたいだぞ!?」
「誰だアイツ、見たことないプレイヤーだな……」
「随分と可愛い娘ね、【ミューン】と戦えるのかしら?」
「中華服&メイド服みたいな掛け合わせか……萌える!」
モブプレイヤーたちも見慣れない人型の存在に沸き立っているようだ。
闘技場に通い詰めるようなプレイヤー層はどんどん煮詰まってくるからな……
そんなプレイヤーばかりになれば見慣れないプレイヤーがいれば興奮するのも無理はない。
……まぁ、実際にはプレイヤーじゃなくてレイドボスなんだが。
「ご主人様、【カイ】が戦うところ……見ていてくださいね!」
「すぐに、たおす……!」
【ミューン】のその言葉がきっかけとなり、お互いが武器を構えて前方に走り出した!
まずは近接攻撃同士のぶつかり合いをするようだ。
読者にお馴染み【ミューン】の武器は両手にはめられた鉤爪だ。
拳を突き出すような感覚で扱えるので肉体派な【ミューン】にピッタリだな。
一方でニューフェイスの【カイ=フジン】が人型で扱う武器は黄金の双剣だ。
腕くらいの大きさの剣を両手で構えて、【ミューン】の2つの鉤爪と打ち合っている形だな!
二体とも手数で戦うタイプみたいだからその剣戟は見応えがある。
「おいおいおい、あの娘【ミューン】と互角に打ち合ってるぞ!?」
「やべぇ、速すぎて攻撃がほとんど見えねぇ……」
「いったい何者なんだ!?」
「ついに最強メイド娘キタ━(゜∀゜)━!」
「いや、強いメイドなら【肉叉家政婦】さんが既にいただろ」
「いや、あの人はメイド娘っていうには流石に憚られる」
「見た感じ本職っぽそうな威厳を感じるもんな……」
「【ミューン】とまともに打ち合えるのってトッププレイヤーでも難しいって聞いたぞ?
本当にあのメイド娘、何者なんだ!?」
【カイ=フジン】の実力を見たモブプレイヤーたちが色めき立っていた。
茶々を入れようと見に来た野次馬たちも、高速で繰り広げられる剣戟に見とれているようだ。
あまりのレベルの高さにその正体を疑う連中もわりといるようだが、別に隠すつもりはないし問題はない。
「そこ……!
……あまい!」
「ヴぅ……負けちゃいましたぁ……
ご主人様慰めてください……」
スキル無しでの戦いだったが、最終的に防御が緩んだ隙に放たれた【ミューン】の一撃がクリーンヒットして【カイ=フジン】がのびてしまったようだ。
そんな【カイ=フジン】を慰めるように俺は頭を撫でてやった。
「えへへ、ありがとうございます!
……ではご主人様、この後は手筈通りにやらせていただきます。
皆様、聞いてください!」
「なんだなんだ!?」
「メイド娘が喋るみたいだぞ?」
「私は【菜刀天子】様にお仕えしてきて、今はこのご主人様……【包丁戦士】様にお仕えしている万能メイドの聖獣【カイ】です!
皆様とも仲良くさせていただきたいのでしばらく闘技場に【ミューン】と一緒に通わせていただきます!
今後ともよろしくお願いします!
そして、対戦よろしくお願いします!」
「聖獣だったのか!」
「通りで強いわけだ……」
「それなら【ミューン】と互角に戦えていたのも納得だ」
「メイド娘と戦いたいわ!
不可抗力であんなことやこんなことをしたいわね!!!」
「ぐふふ……」
なんかヤバいやつが数名いたが、無事【カイ=フジン】はモブプレイヤーたちにも受け入れられたようだ。
これでしばらくは安泰だな!
上手く行ったようでなによりです。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】