1743話 万能メイド戦役
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【カイ=フジン】が一般生物のクジラを捕ってきて、それを捌いてパーティーを開いていたな。
まさか25メートルほどのサイズの食材を捌くことになるとは思わなかったが、良い経験にはなったな。
だが、その一方で……
「えっ、【カイ】はしばらくまた屋根上で待機ですか!?
ご主人様、そんな殺生な……」
俺は【カイ=フジン】に屋根上での待機を命じていた。
ずっとこのボトムダウンオンラインの世界の中に居られる【菜刀天子】ならともかく、俺はただのプレイヤーだからな。
普段から監視し続けるのは正直言って無理だ!
「でもでも、それだと【カイ】がご主人様の役に立てません!」
そうは言うがな……
見て分かるだろうが俺は完全に【カイ=フジン】をもて余していた。
リソースを融通してくれた【山伏権現】には悪いが、今の時点だと完全にありがた迷惑だったと言わざるを得ないぞ!
「それでしたら私に提案がありますよ」
うわっ、またワープしてきたな!?
天子王宮の中だと自由自在にワープ出来るので【菜刀天子】が何食わぬ顔で会話に混じってきていた。
だが、良い提案があるなら聞いておこうか!
今は猫の手も借りたい状況だからな!
「力をもて余しているならば、【ミューン】と一緒に闘技場に通わせればいいでしょう。
聖獣同士戦えば力の発散も出来るでしょうし、それ以外にも好戦的なプレイヤーも居ますからね。
……底辺種族たちでは相手にならないでしょうが」
あー、なるほどな。
確かに闘技場ならどれだけ暴れても好戦的なやつしかいない場所なのでトラブルも起きにくいか。
それに戦闘ばかりしていれば他に気を回す余裕もないだろう。
「ご主人様、【カイ】が戦えるのは嬉しいですけどあの戦闘狂の【ミューン】と戦うのは荷が重いです!
【菜刀天子】様が深淵種族と戦っていた昔の陣営対戦……の前にも何度かお手合わせしたことがあるのですが、朝から晩まで付き合わされてヘトヘトでした……」
まぁ、【ミューン】ならそうだろうな。
今でこそ俺が胃袋をつかんだので腹ペコキャラ化しているが、一番の特徴は聖獣、深淵種族問わず戦闘狂と自然と呼んでしまうほどの戦闘そのものへの熱量の強さだ!
現時点でも【ミューン】はプレイヤーたちを相手に基本戦い続けているみたいで、半分道場チックになっているようだ。
熱量はそうだが、【カイ=フジン】と【ミューン】の実力はどれくらいの違いがあるんだ?
人型の【カイ=フジン】が戦っている様子をこれまで見たことがないので、予想すら出来ない。
「【カイ】が3割くらい勝てます!
……いい感じに戦えたらですけど!」
ほう、【ミューン】に3割勝利か。
大したものだな。
戦闘特化の相手にそれだけの勝率を叩き出せる実力があるならなおのこと闘技場向きだろう。
道理で【菜刀天子】が【カイ=フジン】の闘技場送りを提案してくるわけだ。
「そういうことです。
劣化天子にも私の崇高な考えがようやく理解できたようですね。
余計なことさえさせなければ、能力自体は高いのであながち万能メイドという言葉も偽りではないのですよ。
余計なことをするので真の意味で万能ではありませんが……」
それはそれでどうなんだと思わなくはないが、【菜刀天子】がいいと言うのならそう思っておこう。
「とにかく、やらせようと思えば基本的に何でもやれるのが【カイ】の特徴でもあります。
それを活かすも殺すも劣化天子次第といったところでしょう。
ただ、具体的な運用が決まるまでは闘技場で戦わせつつ、プレイヤーたちに顔を売るのがベターです。
聖獣である以上、プレイヤーたちからの知名度は高くて損はありませんから」
なるほどな。
売名しておけば、後々の用途にも活きてくるというわけか。
その表舞台として用意したのが闘技場……というわけか。
随分といい筋書きだな!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】